今日は敬老の日。ニュースでは、100歳を迎える高齢者への表彰ばかり。男女共に平均寿命が80歳を超える現代では、100歳はそう珍しくないのではないか。
とある医療現場で働いている私は、長生きすることだけが幸せだとは思えない。
勿論、世の中にはお元気に過ごされている高齢者も多いだろう。
しかし、私が日々直面しているのは、そうではない高齢者の姿だ。
医療技術の進んだ現代では、昔だったら生きられなかった状態の方が、生きられるようにはなっている。言わば、簡単には死ねない社会になっている。
認知症が進んで異食行為(食べ物では無いものを食べること)をしようとする方、反対に食事を提供しても食べたがらない方、食事をして10分も経てば「何も食べさせてもらえない」と騒ぎ出す方、歩行困難で転倒する恐れが高いが、それが理解できないため車椅子に抑制ベルトを着けている方、昼夜問わず「おーい、おーい」と大声を出している寝たきりの方、意思の疎通も困難な寝たきりの方…そんな世界だ。
※身体抑制について簡単に説明すると、原則認められていないが、抑制をしない場合に本人への不利益が起こる可能性(例えば、抑制をしなければ怪我をする恐れがある、など)が上回った場合など、様々な条件が合う場合に限定的になされる
そのような方々は、言い方は悪いが、家族にも見捨てられられたような方も多い。
中でも私が一番考えてしまうのは、自力で食事が摂取できず、寝たきり状態で経管栄養を行なっている方だ。
鼻から胃に管を入れ、そこから栄養剤を注入したり(経鼻経管栄養)、胃に直接穴を開けて管を通す 「胃ろう」などがある。
例えば経鼻経管栄養の管は、栄養剤注入中に抜けたりすると、誤嚥や窒息の恐れがあり、大変危険である。
本人にとっては鼻から異物が入れられているわけで、邪魔なものだろう。鼻や頬にテープで固定しているが、いくら危険性を伝えたところで、その理解を得ることが出来なければ、そのテープを剥ぎ取り、管を抜いてしまう恐れがある…
そうされないために、我々医療者は、ミトン(着けられている人には外せない仕様の、特殊な手袋)を着け、手をベッド柵に縛るなどの対応を取らざるを得ない。我々も身体抑制をしたくは無いが、抑制をしないためには、その方の元に24時間付ききりでいなくてはいけないだろう…そんなことは、限られた医療スタッフの中で不可能である。
また、経管栄養をされている方の多くが、痰の吸引を行なっている。自分では痰を出せないため、機械で痰を吸い出すのだが、これがかなり苦しいらしい…
寝たきり状態であれば、褥瘡(床ずれ)も出来やすくなる。勿論、出来ないように対策は立てるが…
このような方と関わる度に、この方の尊厳とはなんだろうかと考えてしまう。
大切な家族に長生きして欲しい、という気持ちはよく分かる。でも、その先にこんな未来があるかもしれないとしたら…?
長生きした先にこのような形もある、ということを、メディアは殆ど取り上げてくれない。
だから私は、ひとりでも多くの人に、この問題について知って欲しいと思い、ここに記した。誰かの目に留まってくれることを祈る