「悪いやつになりきれない、バブリーな時代を駆け抜けた小悪党」と事前に聞いていたとおり、津曲はちょっといいヤツです。むしろ、かっこいい一面もありますね。あてがき（役者の個性を念頭に置いた脚本執筆）をしてくださったそうですが、「普段の俺はこんなかっこいいこと言えないな」と思えるシーンもままあります。
まぁ、自分の企画会社「ヒットエンドラン」を潰して、事務スタッフの鈴愛ちゃん（永野芽郁）を振り回しちゃった男ですけどね（笑）。北川（悦吏子）さんは、津曲のことを「終盤のキーパーソン」とおっしゃっているそうですが、どうでしょう……。良くも悪くも鈴愛ちゃんに絡んでいくのは確かです。
「小悪党」だけど、ちょっといいヤツ
津曲雅彦は、どんな人物ですか？ また、演技で心がけていることなどを教えてください。
津曲の立ち居振る舞いは、うさんくさいですね。雰囲気でセリフをしゃべってしまっていますが、くせのある感じを出せていればいいなぁ。とはいえ、あまり芸人っぽくやると邪魔しちゃう気がするので、折り合いをつけながらやっています。テンションが上がった流れでアドリブをすることもありますが、基本的に脚本が素晴らしい作品なので、全く関係ない遊びは入れていないですね。
こんなに必死になって覚えたのは受験勉強以来です
撮影を全て終えましたが、初めての朝ドラ出演はいかがでしたか？
まず、リハーサルだけの日が設けられていることにビビりましたね！ それに、津曲の長セリフを含む９ページのシーンがあったんですが、リハーサル時点ではセリフを覚えていなくていいと勘違いしていて、手に台本を持っていたのは僕だけだった（笑）。おまけに、（佐藤）健くんに「少しずつ区切って撮るんでしょ？」と聞いたら、「何言ってるんですか。NHKは一気に行きますよ」と言われて、本格的に焦りましたね。リハーサルが終わってすぐに事務所へ行き、会議室で繰り返し練習してセリフを覚えました。何かをこんなに必死になって覚えたのは、受験勉強以来です。
ちなみに、僕が現場に入ったのは【東京・胸騒ぎ編】がオンエアされているタイミング。「漫画がんばれー！」って応援しながら見ていたんですが、現場に行ったらもう辞めていて、岐阜に戻っているからビックリしました。しかも子どもまで生まれてる！ 「律との子ども!?」と聞いたら違うと言われて、もう訳が分からなかった（笑）。
毎日楽しみに見ているドラマと、自分の演じたシーンとがつながらないので、本当に僕が出てくるのか半信半疑でしたよ。そして見るのが怖い！ エゴサーチ（ネット上で自分の評価を確認）するのは放送が終わるまでやめようと思います（笑）。
全身緑になってみたら、スッと腑（ふ）に落ちました
加藤恵子は、どんな人物ですか？
ひとりメーカー「グリーングリーングリーン」として、大好きな緑色と手触りのよさにこだわった商品を開発しているんですが、自分自身も全身緑のコーディネートで、髪まで緑！ ものすごいインパクトのある人です。
台本の初登場シーンに「高くよく通る声で早口」「アニメのキャラのよう」と書いてあったのが、役作りのヒントになりました。恵子は、肩からいつもポシェットを下げていて、バタバタ歩いて、ダーッと走り、ドアも勢いよく開けちゃう人。とにかくエネルギッシュです。その一方で、すごく心に刺さる言葉や、人を突き動かす言葉も持っています。
初めて台本を読んだときは、どの程度アニメっぽい早口でやればいいのか、見た目といい、セリフのギャップをどう解釈すればいいのか、ちょっと消化する時間が必要でしたね。でも、衣装合わせで初めて全身緑になり、緑のウィッグを着けてみたら、スッと腑に落ちました。ここまで何かを突き詰める人なら、説得力のある言葉も自然と出るはずだ！ と納得したんです。
生きていく上ですごく大事だと思えるセリフを言えた
恵子は今後、鈴愛とどのように関わっていくのでしょうか？
鈴愛ちゃんには初登場シーンで「かっこいい」と言われましたが、恵子も、周りのことを気にせずド直球で行動する彼女をすてきだと思っているところがあって。アグレッシブな者どうし、シンパシーを感じて、いろいろと気にかけます。鈴愛ちゃんはこれまでも怒涛（どとう）の人生だったけど、ものづくりに目覚めて、若いころの猪突（ちょとつ）猛進な感じとは違ったエネルギーを発するようになってきました。そんな彼女と、パワーを与え合うような関係になれたらいいですね。
最終週に向け、人間として考えさせられるような展開を迎える中で、恵子のいつもと少し違った一面も見られると思いますよ。彼女の内面から湧き出たような、生きていく上ですごく大事だと思えるセリフを言えたので、ぜひ楽しみにしていてください。
