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立川談笑、らくご「虎の穴」

落語家と収入 その驚くべき仕組みとは 立川吉笑

2018/9/16

落語の定席(東京・池袋)

 今回は下世話な話を。

 下世話な話の代表格といえば、当然お金の話だろう。落語家という特殊な仕事柄、落語会の打ち上げなどで「どれくらいもうかっているんですか?」と真っ向から聞かれることがたまにある。

 当然ながら「月にいくらです」と具体的に答えられるはずもなく、「いやいや~」とやり過ごすばかりだけど、実際、僕も落語家になる前はネットを駆使して落語家の収入について調べ倒したことがある。

 「落語家になりたい」と強く思ったのが25歳のとき。実際に弟子入り志願したのは26歳のとき。もともと心配性な性格だということもあり、1年間はひたすら落語や落語界について詳しく調べた。僕がこれから足を踏み入れようとしているのはどんな世界なのか。

 落語にはどんな噺(はなし)があるのか、とにかくたくさん聴いて覚えたり、師匠方の名前を覚えたり、下積み期間である前座修業ではどんなことをするのか調べたり、今のうちに準備できることはあるのか考えたり。

アルバイトの経験なし

 中でもずっと気になっていたのはお金のことだ。当時フリーターだった僕は、当然まとまった貯金などなかった。実家は京都だから、一人暮らしをするための家賃は毎月かかる。食費だって、光熱費だって。

 修行中の期間だからお金がないのは当然として、実際にどれくらいないものなのか。アルバイトはできるのか?できないとしたら生活費はどうすればいいのか。

 「面白い落語家になりたい」という夢を実現するためには、まずはちゃんと生活を維持できるかどうか、ということが最初の関門だと思った。

 しかしながら、どれだけ調べてもお金についての詳しいデータと出会うことはなかった。ざっくりと「落語家はもうからなくて本当に大変なんですよー」という、『逆マウンティング』というか芸人特有の下に下に入り込もうとする言い回しはいくつか目にしたけど、実際にどれくらい稼いでいる、なんていうことをわざわざ口外するメリットなんかないし、そもそも自分のことを外向けに発信することすら「やぼったい」と考えるくらい粋な人間が多い落語界だから当たり前だ。

 「前座生活のありのままのことをブログで発信しなさい」と師匠に指示された僕は、弟子入り志願する前の自分と同じような境遇のまだ見ぬ後輩のために、実際に入門してからの収入について一度詳しく書いたことがある。そのブログはまだ消さずに残っているはずだから、本気で落語家になろうか悩んでいる人がいれば、探してみると何かしらの参考になるはずだ。

 さて、落語界のお金の回り方について書いていく。あくまでも「落語界の中の」「江戸落語の」「落語立川流の」「立川吉笑」についてだから、これが全員の落語家に当てはまるわけじゃない、というのは大前提として。

 落語の道に入門して最初に驚いたのはその経済の仕組みについてだった。

 僕は落語家になってから8年経つけど、これまで一度もアルバイトをしたことがない。ありがたいことに、落語家としての収入だけで何とか生活ができている。これって実は奇跡的なことだと僕は思っている。

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