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「妊婦加算」が炎上した理由 「事実上の妊婦税」か「周産期医療の充実」か?

「妊婦加算」が炎上した理由 「事実上の妊婦税」か「周産期医療の充実」か?

妊婦が医療機関の外来を受診した際に負担が増える「妊婦加算」が今年4月から、導入されている。しかし、周知が徹底していなかったため、病院で初めて知った人が続出。Twitterで広まると、「事実上の妊婦増税では」「少子化を加速させる」などと批判が集中し、炎上した。「妊婦加算」とは本来、何のためのもので、なぜ批判を集めてしまったのだろうか?

●自己負担3割の場合は、初診で「225円」、再診で「114円」負担増

きっかけは、Twitterだった。妊娠中の女性だというアカウントが9月上旬、皮膚科を診察した際、「妊娠中ですか?ならお会計変わります」と高くなったことを投稿。女性は「妊婦加算」を知らなかったといい、他に持病がある人など全員を配慮して診察するのは当たり前なのに、どうして妊婦に負担させるのかわからないと疑問を投げかけた。

この妊婦加算に対し、ネットで妊婦加算自体を知らないという人が続出、「少子化対策に逆行する制度」「むしろ妊婦の負担は減らすべきでは」といった批判が多く寄せられた。中には、「事実上の妊婦税」「少子化が加速する」といった厳しい意見もあった。当事者の妊娠中の女性からは、「妊娠中は働けないので、負担が増えるのは困る」「妊娠してるから余計に心配になって病院に行く機会が増えるのにどうして」と困惑の声もあった。

突然、降って湧いたように話題となっている妊婦加算。どのような理由で新設されたのだろうか。

「妊婦加算」は今年4月、診察報酬の改定の際に新たに設けられた。妊娠中の女性が医療機関の外来を受診した場合、初診料と再診料・外来診療料に上乗せされる。一般的に妊婦検診や分娩にかかる医療費は自費であり、妊婦加算が上乗せされることはない。しかし、たとえば、妊婦がなんらかの病気にかかり、内科や耳鼻科などにかかった場合に加算される。

具体的には、初診料は2820円と定められているが、妊婦だった場合はさらに750円が上乗せされる。自己負担3割だとすると、実際に増える支払いは225円になる計算だ。また、再診の際も、同じく自己負担3割の場合は114円が負担増となる。深夜や休日の診療はさらに増額される。

今回の「妊婦加算」について、厚労省の担当者は、「妊娠中の方が外来で診療を受けても、安心して妊娠を継続、胎児に配慮した診療を適切に行ったりすることを評価して、医療機関としても妊婦さんを診療する体制が必要ということから、新設されました」と説明する。

妊婦加算の新設は、診療報酬などの改定について審議する中央社会保険医療協議会(中医協)が今年3月にまとめた答申に含まれていたのだ。中医協では妊婦が外来で診療を受ける際の現状について議論があったという。

議論では、胎児への影響を考えた上で、どのような薬を投与するか、また投与しないかといった判断を注意深くする必要があることや、流産や死産の原因となるような感染症など、特に注意を払わなければならない病気もあり、高い診察技術が必要であることなどが指摘された。妊婦加算は、いわば難易度の高い診療に対する「報酬」ということになる。

医療関係者からも、妊婦加算に賛同する声がネット上でみられた。薬を処方するなどの際に胎児への影響を恐れ、妊婦を診察すること自体を敬遠する医療機関が少なくないからだ。妊婦加算の「報酬」をつけることにより、妊婦に対する医療の体制を強化する狙いがある。

●なぜ妊婦自身に負担をさせるのか?

しかし、今回、妊婦加算が炎上してしまった原因のひとつに、周知不足は否めない。妊婦加算は2年に1度という節目で行われている診療報酬改定のひとつとして新設されたたため、単独で大々的にマスメディアで報じられる機会は少なかった。

厚労省の担当者も、「周知が難しいところです。改定された診療報酬は多岐にわたっていて、直接皆さまにご説明するのが難しいところがある。医療機関に対しては説明していますので、実際に医療機関から診療を受けた方に説明していただくことも想定されるのですが…」と話す。「ただ、妊婦の方にとっては意義があると思っています。妊婦の方にご理解していただくことが重要なので、しっかり趣旨を正確に伝えていきたいです」

妊婦加算の周知徹底も求められているが、一方で、「なぜ、妊婦自身に負担させるのか」という声もある。政治家からは、「医療サイドの理屈は理解できなくもないが、少子化が深刻な社会課題となり、全ての妊産婦に対し手厚い社会的サポートの必要性が叫ばれている今日、利用者目線に立って、政府は加算分を少なくとも助成や還付等で相殺する措置を講ずるべきではないか」という指摘もある(長島昭久衆院議員のTwitterより)。

妊婦加算によって、周産期医療の体制充実を目指すためにも、さらなる議論が求められる。

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