【大相撲】また初星与えた 稀勢ガックリ2敗目 支度部屋で無言2018年9月17日 紙面から
◇秋場所<8日目>(16日・両国国技館) 進退を懸ける横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=は小結玉鷲に押し出されて2敗目を喫した。玉鷲は初白星。他の横綱陣は白鵬(33)=宮城野=が再出場の平幕豊山を上手投げで下し、鶴竜(33)=井筒=は関脇逸ノ城を寄り切り、ともに全勝を守って勝ち越した。大関とりの関脇御嶽海(25)=出羽海=は勢に押し出されて2敗目。大関高安が正代に引き落とされて初黒星を喫した。大関対決は豪栄道が栃ノ心を寄り切って7勝目を挙げた。かど番の栃ノ心は5勝3敗。 ◇ 何もできなかった。稀勢の里は立ち合い、低く当たった玉鷲のもろ手の押しに棒立ちになり、右の喉輪でのけ反った。上手を狙った右はまわしに届かずじまい。あっという間に押し出されて2敗目。6日目の千代大龍戦に続いて全敗だった相手に不覚を取り、土俵下でガックリと膝を付いた。 関脇経験者に圧倒された一番。惜しまれるのは、幻となった最初の立ち合いだった。左から先にグッと踏み込んだのは稀勢の里だったが、行司から「まだまだ」の声。不成立となった。 横綱本人は、今場所初めて無言を貫いて影響を認めなかった。一方、土俵下で一番を見守った阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「最高の立ち合いを稀勢の里がやって、食い止められると私は見ていた。待ったが大きかったかも分かりませんね」と思いやった。 悔しい折り返しとなったが、必死の相撲で6勝をもぎ取った。八角理事長(元横綱北勝海)は「まあ、場所前のことを考えるとまずまずじゃないの。これからだから」と進退という相撲人生で、最大級のプレッシャーと向き合う場所での星取りに及第点を与えた。その上で、ここまでの立ち合いの踏み込みを評価して「今更変えることはできないわけだから。やってきたことをやろうという」と、心構えを説いた。 9日目は、8場所連続休場中に実現しなかった大関戦。栃ノ心の挑戦を受ける。手負いでかど番の相手を、どう退けるか。後半戦を占う結びの一番となる。 取組後の沈黙の支度部屋、稀勢の里は気合を入れ直すように、左手で膝をパチン。あとは土俵上、自身に言い聞かせるように繰り返してきた「集中」の真価を発揮するしかない。 (志村拓)
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