9月9日現在品切れとあるが、撮影したのは9月14日だ 撮影/梅津有希子

余震も停電もまだある北海道で「今、ストーブが足りない」という大問題

電気なしだと寒さをどう乗り切れるのか

北海道・札幌市出身のライター、梅津有希子さんは、9月6日の震災後1週間して、一人暮らしをする母のために帰省をした。その一番の理由は、1年のうち半分必要だというストーブの確保のためだったという――。

 

9月6日未明に起きた、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震。厚真町を中心に甚大な被害となったが、その後の北海道内全域約295万戸にわたる大停電が、道民の防災意識をガラリと変えたといっていいだろう。過去にも北海道南西沖地震や十勝沖地震などの大きな地震はあったが、道内全域の停電は、1951年の北海道電力創設以来初だという。

今回の大規模停電の復旧タイミングは地域によってかなり差があり、「復旧まで少なくとも1週間」という情報も流れるなど、道民の不安は募る一方だった。結局、筆者の札幌の実家は地震発生3日目の夜に復旧したが、道内でも最後のほうだった。

コンビニも看板の電気を消して営業している 撮影/梅津有希子

北海道から出たことがなく、これまで大きな災害経験のないひとり暮らしの母は、「札幌で震災は起こらないだろう」と思い込んでおり、防災の備えはゼロ。食べ物と飲み物は問題なかったが、今回の停電でも「家の電話がつながらない」「携帯の充電が切れた」「車で充電しようにも、電動シャッターが開かず車が出せない」「水は出るが電動のトイレが流せない」「テレビもラジオもチェックできない」と、とにかく何もできない。「これは一緒に災害対策をせねば」と、様子が落ち着いてきた1週間後、札幌に帰省したのだ。

もしも真冬にこの大停電が起きたら

わが家と同じような家族はたくさんいたようで、家電量販店やホームセンターはどこも大盛況。各店の棚から一斉に姿を消したのが、ポータブル式の石油ストーブだ。
真っ暗ななか、携帯やスマホの充電も切れ、情報もなかなか入手できず、いつ通電するかもまったくわからない……。

「もしもこの大停電が真冬に起きたら」と、誰もが考えたことだろう。今回は半袖の季節でまだよかったが、厳寒期に停電すると、凍死する人も出てくるかもしれない。暖房の対策が急務だ。

現在、北国の暖房は「FF式」と呼ばれる石油ストーブが主流だ。FFとは、「Forced Flue(強制通気)」の略で、ファンで強制的に給排気を行う暖房のこと。換気の必要がなく、部屋の空気が汚れないことが利点で、気温の低い真冬でも素早く部屋を温めてくれる。FF式でなければ寒さはしのげないといっても過言ではないくらい、北国の冬には欠くことのできないパワフルな暖房器具だ。

ところが、このFF式をはじめとする石油ストーブは、電気がないと使うことができないため、停電時は一発アウト。このため、乾電池で動くポータブルタイプの石油ストーブに道民が殺到し、一瞬で棚から消えたのだ。

空っぽになったホームセンターのストーブ棚。9月9日現在品切れとあったが、これは9月14日の写真だ 撮影/梅津有希子

いくつかのホームセンターと家電量販店に問い合わせてみたところ、「入荷の予定はあるが、いつ入るかは未定」とのこと。入荷してもすぐに売れてしまうといい、「欲しい時にストーブが買えない」という状況もまた、今回の停電同様、北海道の歴史で前代未聞のことではないだろうか。

FF式が主流の今、ポータブルタイプはあまり需要がない。とある家電量販店のスタッフは、「昨日入荷した10台がすぐに売り切れた」と驚き、「例年ポータブルは大して売れず、こんなことは初めて。しばらくこればかり売る日が続きそうです」と、忙しそうにメーカーに在庫を確認していた。