漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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カルネ村

モモン、ナーベ、『漆黒の剣』、ンフィーレア、エンリの八人はカルネ村の門から入ってすぐの家に入った。どういう訳かこの家は空き家の様であった。

 

「ごめんなさい」

 

そう言って少女エンリ・エモットは頭を下げる。

 

「いえ気にしなくていいですよ。頭を上げて下さい。」

 

そう言ってモモンは少女の頭を上げるように言う。

 

「ですがっ!」

 

エンリはそれでも頭を上げなかった。

 

「自分たちの村を守る為に必要なことなのでしょう。ならば謝る必要はありませんよ。」

 

(村を守る為に戦うか・・・)

 

(もし村人全員で戦えば何かが変わったのか?)

 

「っ・・」

 

モモンが感傷から戻ってきた。

 

「エンリ。モモンさんの言うとおりだよ。」

 

「ンフィーレア・・」

 

エンリはようやく頭を上げた。

 

それから少ししてンフィーレアが尋ねる。

 

「所であのゴブリンたちは一体?ご両親も見えないけど・・」

 

「・・・村が襲われたの。両親はその時に・・」

 

エンリの口から語られる内容は要約するとこうだ。

 

スレイン法国が王国戦士長であるガゼフ・ストロノーフを抹殺しようとした。だが王国戦士長であるガゼフが動くには何か理由が必要であった。そこでスレイン法国は特殊部隊である六色聖典の一つ・陽光聖典を派遣した。陽光聖典は王国の辺境の地にある村を帝国の騎士に偽造して次々と襲撃した。ガゼフとその直属の部隊の戦士団はこの襲撃犯を調査及び捕縛するために派遣される。それを知った陽光聖典は派遣されたガゼフの戦力を減らすためにわざと襲撃した村を全滅させなかった。何故か・・それは生き残りを出すことでその者たちの安全を確保する必要が出て来るからだ。そうなると戦士団を護衛として付ける必要が出て来る。それによりガゼフたちの戦力は半減。陽光聖典は遂にガゼフ抹殺に乗り出す。その舞台として選ばれてしまったのがカルネ村であった。カルネ村は襲撃されエンリの両親も含めて多くの村人が虐殺された。

 

「酷い・・・そんなの国のやることじゃないよ。」

 

ンフィーレアがエンリの話を聞いて怒りで身体を震わせる。

 

それを見てモモンはかつての自分とンフィーレアを重ねた。

 

(10年経った今もあの国は変わらないんだな・・・)

 

(村、虐殺、生き残り・・・)

 

(・・・・)

 

モモンは無意識に拳を作っていた。そのことにナーベだけが気付いていた。

 

(モモンさん・・・)

 

「でも・・エンリやネムちゃんが無事で良かったよ。」

 

「うん。本当に。村を襲撃された時に私たちを助けてくれたお方がいるの。」

 

「えっ・・」

 

(今の話からして王国戦士長であるガゼフ・ストロノーフではないのは確かだろう。では一体誰がこの村を?)

 

「一体誰が?」

 

ンフィーレアが尋ねたのも無理は無い。この村を助けたのはガゼフではないのが確かなのはその場にいる全員が理解できたはずだ。

 

「その御方はね、凄い魔法詠唱者<マジックキャスター>なのよ!」

 

そう言ってエンリは自分と妹を始め村を助けてくれたという人物について語り始めた。そしてその者が授けてくれた笛のアイテムを使用したことでゴブリンが現れてエンリに忠誠を誓っていることも話してくれた。

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

 

エンリの話を聞き終えた一同はカルネ村を拠点にする許可を村長夫妻から貰った。ンフィーレアはエンリと何やらまだ話している。『漆黒の剣』はンフィーレアが話を終える間だけでもとゴブリンたちの動きを見て少しでも技を盗もうと見学している。ルクルットに至ってはゴブリンたちと共に村人に弓矢の扱い方を教えていた。モモンとナーベは村を一望できる丘に立っていた。

 

「モモンさん」

 

モモンが兜を脱ぐ。そこから現れた黒い瞳がカルネ村を見ていた。

 

「ナーベ、悪いが今は一人にしてくれないか?」

 

「・・分かりました。」

 

ナーベが去る。

 

「カルネ村の様にギルメン村にその魔法詠唱者<マジックキャスター>が現れていたら結果は違っただろうか。」

 

「母さん・・」

 

「ウルベル・・チーノ・・チャガ・・アケミラ・・」

 

「ギルメン村の皆は助かっただろうか・・」

 

モモンが感傷に浸る。その時であった。

 

「この村が気に入ったか?」

 

背後から声がした。その声は力強さと自信に溢れていた。話し方も高貴で知的な印象を与えるものであった。

 

モモンは振り向く。

 

そこにあったのは『闇』だった。いや『死』がそこにあった。

 

黒い外套に金色や紫色の刺繍がされておりその装備は非常に輝いて見えた。腕には鉄のガントレットを嵌めており、顔には何故か分からないが全体的に赤いが緑色の涙を流しているような仮面を被っていた。

 

(不思議な存在感を持つ人だな。何というか人間離れしているような)

 

「あなたは?」

 

不思議なことに敵意は感じなかった。

 

モモンの問いにその人物は答えた。

 

「私がアインズ・ウール・ゴウンだ。」

 

 

 

 

 

 

 







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