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秋田の人口たった2600人の村が「学力日本一」になった秘密

スーパーも塾もないけれど…

世界中から教育視察団が訪れる

秋田県の東成瀬村は奥羽山脈の懐に抱かれた雪深い村だ。

東は岩手県、南は宮城県に接し、総面積の93パーセントが山林原野である。東西17キロ、南北30キロの細長い地形で、村の中央部を南北に成瀬川が縦断している。2018年1月末現在、村の世帯数は870世帯、人口は2600人(男1255人・女1345人)だ。

東成瀬村の存在を広く世に知らしめたのは「学力テスト」である。

通称「学テ」と呼ばれ、小学6年と中学3年の全員を対象として、国語と算数・数学に加え、18年からは理科を含めた3教科で行われている。 

2017年度の全国学力調査の結果は、秋田県は全国の小中学生の平均正答率より各教科で3ポイント以上高く、小6、中3とも国語は全国1位。算数・数学は2位と3位。

秋田と同じく上位常連には石川県や福井県がいる。「平成の学テ」が始まってから10年、この常連の3県がトップ争いを繰り広げる構図がほぼ固定化している。

教育ジャーナリストで『秋田県式教育法』などの著作を多数持つ矢ノ浦勝之氏によると、「平成の学テ」が始まった2007年から2010年の3年間の調査結果で、小学校では国語・算数A、B両問題で秋田は毎年一番。中学でも国語は毎年一番で、数学でも常に3位以内を確保している。

 

学テは「県」から独立した「教育委員会」がとりしきる教育行事である。そのため、成績の公表などの権限は各地域の教育委員会に任せられ、市町村レベルでの学校比較による成績は公表されていない。

そうしたなか、2008年、当時の寺田典城秋田県知事が「秋田県は学力テストで日本トップクラス。中でも東成瀬村が県内で一番」とメディアに成績を公表した。これが東成瀬村が「学力日本一の村」と喧伝される根拠になった。

毎年、東成瀬村には年間600名をこす教育視察団が訪れる。その数は年々増え続けており、視察団は日本国内だけでなく韓国、香港、モンゴル、ペルー、ユネスコ関連と世界に広がっている。

しかし、スーパーも民間の塾もない、人口減少と少子高齢化の進む小さな豪雪の村の子供たちの学力が、なぜ高いのだろうか?

クレーン車で雪下ろしをする村の人。冬の積雪量は2m以上にも達する(筆者撮影)