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特集

2017年9月1日(金)

エジプトで中国のウイグル族の拘束・強制送還相次ぐ

 
放送した内容をご覧いただけます

イスラム教スンニ派で最も権威のある教育・研究機関エジプトのアズハル。
7月、ここに通う学生が当局に次々と拘束されました。
ターゲットは、中国・新疆ウイグル自治区から来たウイグル族の人たちです。
NHKは、拘束を逃れ、エジプト国内に身を隠すウイグル族の男性との接触に成功。

エジプトにいるウイグル族男性
「家族を置いて逃げたきり1週間ずっと外にいます。
知人の家に隠れて外出もできません。」

ウイグル族や人権団体は、中国政府の要請を受けた拘束だとみて、警戒を強めています。
海外に住むウイグル族に何が起きているのか。
断片的な情報から浮かび上がってきた実態に迫ります。

海外のウイグル族 “相次ぐ拘束・強制送還”

花澤
「中東のエジプトで7月、ウイグル族の留学生など少なくとも62人が、エジプト当局に拘束されたり、中国に強制送還されたりするケースが相次ぎました。」

増井
「アメリカ政府の諮問機関や国際的な人権団体などから、非難の声が上がっています。
なぜ、ウイグル族の拘束が相次いでいるのでしょうか。」

松岡
「新疆ウイグル自治区は中国の西部に位置しています。
ウイグル族はこの自治区を中心に1,000万人以上いて、そのほとんどがイスラム教を信仰しています。
自治区では、当局を狙った爆発や殺傷事件が相次いでいて、中国政府は“反テロ”を名目に、取り締まりや住民の監視を強化しています。
背景には、中国政府が1990年代からウイグル族に対して強めてきた民族・宗教政策があると見られています。

学校ではウイグル語の使用を禁止。
最近では、18歳未満の青少年がイスラム教のモスクに行くなどの宗教活動に参加することも禁じられています。
これに反発したウイグル族の中には、イスラム教を学ぶことなどを目的に、トルコやエジプトなどに留学する人が相次ぎました。
中でもエジプトでは、イスラム教の教育・研究機関が多くのウイグル族を受け入れてきました。
今回、エジプト当局に拘束されたのは、多くがこうした留学生たちでした。




海外のウイグル族 “相次ぐ拘束・強制送還”

「ウイグルの同胞よ、我々はエジプト当局に拘束されている。」

7月、エジプトの空港で、ウイグル族が撮影したとされる映像です。
中国に強制送還される直前に撮影し、SNSに投稿したとみられます。
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、ウイグル族の留学生ら少なくとも62人がエジプト当局に拘束され、一部は中国に強制送還されたとしています。

当局の取り締まりを逃れ、エジプト国内を転々としているウイグル族の男性が、インターネットを通じてNHKの取材に応じました。

エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「(警察が)ウイグル族が経営するレストランに来て、次々と連行していった。
街頭で取り調べられ、その場で拘束された人や自宅で拘束された人もいた。」

エジプトにいるウイグル族は、イスラム教スンニ派で最も権威のある教育・研究機関「アズハル」などでイスラム教を学んでいます。
卒業後、現地で生活を続けている人を含めると、その数は数千人に上るとされています。

拘束された人のなかには正規のビザを持っている人のほか、地元の女性と結婚している人もいるといいます。
17年前からエジプトで暮らすこの男性も、アズハルで学んでいます。
しかし数年前から、中国当局から帰国を促されるようになったといいます。

エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「“帰らなければ故郷の親戚が迷惑する”と中国当局が通知を出して脅し始めた。

“親戚を拘束する、お前を裁判にかける”と。」

国際的な人権団体によると、中国政府がここ数か月、ウイグル族の人たちに帰国を促していたということです。
さらに6月には、エジプト政府に対し、ウイグル族などが過激な思想を持っているとして、取り締まりの強化を求めていたと分析しています。
これに対し、中国政府は、あくまでエジプト当局の判断によるものだったとしています。

中国外務省 陸慷報道官
「中国が繰り返し主張しているのは、海外にいる中国人は、滞在国の法律を守って行動しなければならないということだ。」

この状況に、アメリカ政府の諮問機関が先月(8月)声明を発表。
拘束されたウイグル族は200人に上るという報告もあるとした上で、「ウイグル族に対する無責任で敵対的な行動を強く非難する」として、エジプト政府に対し拘束や強制送還の停止を求めました。
そして、拘束された人の中には、すでに中国に強制送還された人もいて、収監されたり拷問を受けたりするおそれがあると指摘しています。
エジプトで身を隠している男性は、国際社会もウイグル族の現状に関心を持ってほしいと訴えました。

エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「私たちを保護してくれる国が出てくることを期待していますが、今のところそうした国はなく、失望しています。」


なぜ起きている?

増井
「ここからは、中国現代史がご専門で、ウイグル族を研究している、中央大学講師の水谷尚子さんに伺います。
こうしてウイグル族の拘束や強制送還が相次いでいること、アメリカや人権団体は、エジプト政府が中国政府の要請を受けて行っていると指摘していますが、なぜ今こんなことが起きているんでしょうか?」


中央大学講師 水谷尚子さん
「まず、イスラム学を勉強した人たちが、今、世界中で、ウイグル民族の中でどのような立ち位置になっているかと申しますと、例えばトルコ最大のウイグル族の亡命者組織、それを作った人というのがエジプトのカイロ大学でイスラム学を学んだ人なんですね。
つまり、イスラム学を勉強した人々が亡命者団体の指導者に多くなっている。
中国政府はそれを非常に問題視しているのではないかと私は考えております。」

花澤
「つまり指導者になる可能性のある人たち、そこに対する今回の摘発ということになるわけですか。」

水谷尚子さん
「そうですね、あくまで中国側は『反テロ』、イスラム過激派を強調しますが、実態としては、むしろ各国にある亡命者組織の上層部に必ずイスラムの指導者的な方がリーダーとして入り込んでいて、そういう人たちがリーダーシップをとってウイグル人をまとめているというところがあり、その辺も中国政府はよく理解しているのではないかと思います。」

花澤
「エジプト政府は、この拘束や強制送還の理由も背景も何ら説明していないわけですが、なぜこういうことをするのでしょうか?」

水谷尚子さん
「エジプト政府は習近平氏と去年(2016年)の1月に会見をしていて、かなりの額の経済支援を受けています。
それと同時に『一帯一路』政策への賛同を表明していますし、そのような経済的な支援の裏返しという面もあるのではないかと私は考えております。」


トルコ政府は?

花澤
「先日、8月上旬にトルコと中国の外相会談がありました。
ここでトルコのチャウシュオール外相が『トルコ国内でのいかなる中国に敵対する活動を認めない』と会談後の会見で発言しているんですが、これはトルコにかなり多くのウイグル族がいますから、これに対する圧力を強めるということではないかと受け止められましたが、この点についてはどうお考えですか?」

水谷尚子さん
「2つ考えられます。
1つは、まず現段階においては、国内で起こったさまざまなウイグル人の反政府活動が国外から直接指令が来ているということはあまり考えられない。
つまり、例えばシリアの中のイスラム過激派組織にウイグル人が入り込んでいるのは事実ですけれども、そう簡単に中国国内に帰れるわけではありません。
そういう人たちが、国外からコントロールしているのではなく、国内で何らかの不満がある人たちが、とうろうのオノを振り上げていると私は見ております。
将来的にそのような中国政府への不満分子がイスラムによって団結すること、イスラムを旗印に抵抗運動をすることを中国政府は案じていてトルコにそのようなことを言っているのでしょうが、現段階では直接大きなつながりが作られていくということは考えられないと。
それと同時に、トルコ政府が現段階のエルドアン政権においてはウイグル人を大きく締めつけるということはあり得ないと思います。
というのは、大トルコ主義者のエルドアンからすると、やはり同じトルコ系民族は保護するべき民族であるからして、全てのトルコ人社会に対して反感を持たれるようなことをトルコ政府がするとは、現段階では、この政権がある限りは思えないと考えています。」

花澤
「そうすると、発言は外交上の儀礼的な感じで、実際にはやらないだろうと。
ただ、エジプトだけではなくて他の国でもウイグル族の人たちに対する締めつけは起きているのでしょうか?」

水谷尚子さん
「トルコはそういうことは一度もしていませんが、例えばタイや中央アジアの国々などはウイグル人を中国に強制送還しています。
エジプトのみならずタイも2005年に、そして中央アジアは上海協力機構ができて以降、多くのウイグル人、亡命を求める人を強制送還させています。」

花澤
「かなり状況としては厳しくなっているということですね。」

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