「ウイグルの同胞よ、我々はエジプト当局に拘束されている。」
7月、エジプトの空港で、ウイグル族が撮影したとされる映像です。
中国に強制送還される直前に撮影し、SNSに投稿したとみられます。
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、ウイグル族の留学生ら少なくとも62人がエジプト当局に拘束され、一部は中国に強制送還されたとしています。
当局の取り締まりを逃れ、エジプト国内を転々としているウイグル族の男性が、インターネットを通じてNHKの取材に応じました。
エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「(警察が)ウイグル族が経営するレストランに来て、次々と連行していった。
街頭で取り調べられ、その場で拘束された人や自宅で拘束された人もいた。」
エジプトにいるウイグル族は、イスラム教スンニ派で最も権威のある教育・研究機関「アズハル」などでイスラム教を学んでいます。
卒業後、現地で生活を続けている人を含めると、その数は数千人に上るとされています。
拘束された人のなかには正規のビザを持っている人のほか、地元の女性と結婚している人もいるといいます。
17年前からエジプトで暮らすこの男性も、アズハルで学んでいます。
しかし数年前から、中国当局から帰国を促されるようになったといいます。
エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「“帰らなければ故郷の親戚が迷惑する”と中国当局が通知を出して脅し始めた。
“親戚を拘束する、お前を裁判にかける”と。」
国際的な人権団体によると、中国政府がここ数か月、ウイグル族の人たちに帰国を促していたということです。
さらに6月には、エジプト政府に対し、ウイグル族などが過激な思想を持っているとして、取り締まりの強化を求めていたと分析しています。
これに対し、中国政府は、あくまでエジプト当局の判断によるものだったとしています。
中国外務省 陸慷報道官
「中国が繰り返し主張しているのは、海外にいる中国人は、滞在国の法律を守って行動しなければならないということだ。」
この状況に、アメリカ政府の諮問機関が先月(8月)声明を発表。
拘束されたウイグル族は200人に上るという報告もあるとした上で、「ウイグル族に対する無責任で敵対的な行動を強く非難する」として、エジプト政府に対し拘束や強制送還の停止を求めました。
そして、拘束された人の中には、すでに中国に強制送還された人もいて、収監されたり拷問を受けたりするおそれがあると指摘しています。
エジプトで身を隠している男性は、国際社会もウイグル族の現状に関心を持ってほしいと訴えました。
エジプト当局から逃れているウイグル族の男性
「私たちを保護してくれる国が出てくることを期待していますが、今のところそうした国はなく、失望しています。」