米国・Facebook社傘下のOculus社は、2018年9月の開発者会議Oculus Connect 5(OC5)で新型のVRヘッドセットを発表するのではないかと噂されています。それが、、Santa Cruz(開発コードネーム)と呼ばれるVRヘッドマウンテッドディスプレイです。来月に控えたOC5を前に今までのSanta Cruzに関する情報を整理したいと思います。
1.Santa Cruzとは
2.Santa Cruzの特徴
2-1.一体型かつ外部センサーなしで6DoF
2-2.ハンドコントローラーで手も自由に動かせる!
2-3.Oculus GoやOculus Riftとは何が異なるのか
3.Santa Cruzの発売時期や価格
4.OC5での発表に期待
1.Santa Cruzとは
(OC3の基調講演で流された動画に映る第一段階プロトタイプのSanta Cruz)
Santa Cruzは、2016年のOculus社の開発者会議、Oculus Connect 3(OC3)の基調講演にて開発が発表されました。Oculus社はこれまで一般向けにOculus Rift(CV1)、Oculus Goの2つヘッドマウンテッドディスプレイを発売してきました。Santa Cruzは今までのヘッドマウンテッドディスプレイと、どこが違うのでしょうか。
初登場時の紹介動画(2016年10月公開)
https://www.youtube.com/watch?v=LIUYDUlGJzM
OC4(Oculus Connect4)で公開された紹介動画(2017年10月公開)
https://www.youtube.com/watch?v=7RlPZ_EGIv4
2.Santa Cruzの特徴
(OC3でSanta Cruzの開発を発表するFacebook社CEOマークザッカーバーグ氏)
Santa Cruzの特徴は、外部センサなしのヘッドマウンテッドディスプレイ単体で動作する一体型型で、自由に動き回ったり、手を動かすことも出来ます。同じ一体型でも周囲をみまわすだけのOculus Goとは異なり、パソコンにつないで行っていたOculus RiftでのVR体験をケーブルレスで行える、といった方が良いかもしれません。コントローラは、Oculus Go向けのリモコン型とは異なり、手や指の動きを認識するOculus Touchとに近い形状のものが採用される見込みです。
2-1.一体型かつ外部センサーなしで6DoF
VRデバイスのトラッキングには「3DoF」と「6DoF」があります。3DoFはデバイスの傾きのみを検知します。6DoFはデバイスの傾きに加え前後左右と上下の位置も検知します。つまり3DoFではVR空間上を自由に歩き回れませんが、6DoFでは自由に歩き回れます。(視覚的に3DoFと6DoFの違いを確認したい方はこちら)
Santa Cruzは一体型で外部センサを必要としないが、6DoFで自由にVR空間を歩けるのが特徴です。同じ一体型のOculus Goは3DoFで傾きしか検知されません。現在一体型で6DoFなのはLenovo社のMirage SoloとHTC社のVIVE Focus(※1)などが知られています。
(※1 VIVE Focusは現在中国国内のみでの販売で、2018年中にグローバル展開予定。日本での発売は技適(技術基準適合証明等)を取得後。)
プロトタイプ段階では前面に4つのカメラが搭載されており、そのカメラから位置を推定するインサイドアウト・トラッキングを採用していました。実際にOC3、OC4でプロトタイプを体験したMogura VR編集長の久保田はOC4での体験後「精度が気になっていたが、全く違和感を感じなかった。自由に歩き回ったり、しゃがんだりすることができる。」と話しています。事前にプレイエリアを設定することで、プレイエリアの縁に近づくと青い柵が現れ壁にぶつからないように設計されています。
またカメラを搭載しているため、シースルー(MR)での活用もあるのではないかと考えられています。実際にフェイスブックAR/VR部門のAndrew “Boz” Bosworth氏は自身のTwitterにSanta Cruzを用いて“MR(複合現実)”のサッカーゲームを行う様子を公開しています。
2-2.ハンドコントローラーで手も自由に動かせる!
(OC4で初めて発表されたSanta Cruz用コントローラー)
もう1つ注目なのがコントローラーです。Oculus Goではコントローラーも傾きしか取れず、Mirage Solo、VIVE Focusも発売当初は6DoFに対応していなかった(※2)のですが、Santa Cruzは6DoFに対応しています。Oculus Rift用コントローラーOculus Touchは手の指の動きVR空間に反映できるなど、自然な動作や握りができることから人気のある「コントローラーです。Santa Cruzになるとコントローラーはどうなるのでしょうか?
(※2VIVE社は2018年5月にVIVE Focusのコントローラーの6DoF対応を発表)
(OC4でのスライド カメラ位置が2mm違うだけでトラッキング範囲が1フィート(約30cm)ほど変わる)
Santa Cruz用のコントローラーはOculus Touchと同じデザインチームが手がけています。Oculus Touchに比べ軽く、細身です。タッチパッドと裏側にボタンが2つついているシンプルなデザインです。ヘッドマウンテッドディスプレイについているカメラを通してコントローラーから発せられる赤外線をキャッチして位置を特定します。カメラで捉えられる範囲しか認識できませんが、実際に体験したMogura VR編集長の久保田は「(カメラの)配置を工夫したことにより視界で見える範囲よりもコントローラーのトラッキングの範囲が広くなっている印象があった。」「同じような方式でコントローラーを認識するWindows Mixed Realityコントローラーと比べると精度が高く、ボタンも少ないため直感的に体験できた。」と述べています。
2-3.Oculus GoやOculus Riftとは何が異なるのか
ここまで、Santa Cruzの特徴を紹介してきました。改めて、Oculus GoやOculus Riftとはどういう点が違うかを整理していきます。
Oculus Goとは一体型という共通点がありますが、位置トラッキング・ハンドトラッキングともOculus Goが3DoFなのに対して、Santa Cruzは6DoFです。VRでできることの幅が全く異なります。
一方、Oculus Riftとは位置トラッキング・ハンドトラッキングとも6DoFという共通点があります。共通点だけをみると「Riftの一体型版」と言われることもありますが、大きな違いがあります。
Oculus RiftとSanta Cruzの違い、それはプロセッサの性能です。Oculus RiftはPCに接続し、VR Readyと呼ばれる基準を満たしたハイエンドなGPUにより駆動します。Santa Cruzは一体型ということでスマートフォンに搭載されているようなモバイル向けのプロセッサで駆動します。その性能差は大きく、「RiftのゲームをそのままSanta Cruzでプレイする」ことはできません。同じゲームをSanta Cruzでプレイできるようにするためには、開発者はポリゴン数の削減、テクスチャの削減などグラフィックスの最適化などを行う必要があります。
現在Oculusが関わっているヘッドマウンテッドディスプレイで比較すると下のようになります。
Gear VR |
Oculus Go |
Santa Cruz |
Oculus Rift |
|
形式 |
スマホ装着型 |
一体型 |
一体型 |
PC接続型 |
位置トラッキング |
なし |
なし |
あり |
あり |
ハンドトラッキング |
3DoF |
3DoF |
6DoF |
6DoF |
外部センサ |
なし |
なし |
なし |
あり |
3.Santa Cruzの発売時期や価格
発売時期や価格は正式には発表されていません。2017年秋のOC4では、「2018年中に開発者版を出荷する」ことは明らかになっていました。しかし、2018年8月「2019年第1四半期にSanta Cruz出荷を開始する」とメディアUploadVRが報じました。同社の取材に対しOculus社は「将来の計画や発表についてはコメントできませんが、OC5(Oculusが9月に開催する開発者会議)はとてもエキサイティングなものになるでしょう」と回答しています。
価格についての情報はありませんが、Oculus Goが約200ドル(日本国内価格:23,800円~)、Oculus Riftは約400ドル(同:50,000円~)です。本記事で何度か登場しているレノボのMirage Soloは約400ドル(同:56,268円)、HTCのVive Focusは約525ドル(日本国内価格は未定)です。
また、「Santa Cruz」という名称は開発コードネームです。製品版は別の正式な名称がつくことが予想されます。
4.OC5での発表に期待
(OC4でのOculus Go発表の様子 Facebook社VR担当副社長ヒューゴ・ベラ氏)
Santa Cruzの発表があるのか注目されるOculus社の開発者会議Oculus Connect 5(OC5)は9月26日と27日の2日間、米国・カリフォルニア州サンノゼで開催されます。5回目となる今年は、過去5年間の同社のVRの歴史を祝う内容も予定されています。昨年のOC4ではOculus Goの発表などがありました。今年はSanta Cruzの情報がどこまで明らかになるのか、期待したいところです。
Santa Cruzプロトタイプ体験レポートはこちら
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