2年前にリリースされた、日本で初となるフリマアプリ「Fril」。20代の女性を中心に200万ダウンロードを突破し、ユーザー間で盛んにものが売り買いされる人気サービスです。最近では、「EMODA」など人気ファッションブランドのオンラインストアをFril内に開設するBtoC事業も手がけ、着々と進化を遂げています。
男性のみで構成されるFrilのファウンダーチームが、どのようにして女性から圧倒的に支持されるスティッキーなプロダクトを作ることができたのか。「ユーザー中心のプロダクト作り」を徹底するFrilの根強い企業文化について、CEOの堀井翔太さんにお話を伺いました。
「うちで働いてみない?」現役ユーザーをスカウト
現在、60名ほどいるチームの半数を占めるのが、Frilの現役ユーザーからなるカスタマーサポートのメンバーです。Frilで楽しい利用体験をしている彼女たちに共通するのが、サービスに対する愛と、強い帰属意識。サービスを使う側から、今度は自分がもっとFrilを良くしたいという思いで、徐々に作り手になっていくのだといいます。
Frilでは、カスタマーサポートが主役になる組織設計を意識的に行っていると話す堀井さん。
「立ち上げ当初からユーザーを集めた座談会を定期的に開いて、ユーザーインタビューを行っていました。サポートへの問い合わせが1日数百件レベルになった時、仕事を探しているというユーザーさんに『うちで働いてみない?』と声をかけたことが最初でした。彼女が大活躍してくれて、以降、Frilのユーザーから人を募集することが増えたんです」
スマホから寄せられるユーザーの問い合わせには、例えば「動きません」とだけ記されたような端的なものが多いのだとか。でも、カスタマーサポートのメンバー自身も熱心なユーザーであるため、ちょっとしたキーワードをヒントにユーザーの状況や操作を想像できます。教育や研修を施すことなく、様々な問い合わせを解決に導けるのです。
また、Frilのカスタマーサポートの仕事は、ユーザーからの問い合わせ対応にとどまりません。アプリ内をパトロールする仕事、アプリの使い勝手を確認するQA(Quality Assurance:品質保証)やバグチェック、フルフィルメントなど、その仕事は多岐にわたります。こうした様々な仕事において、数百件単位の販売実績を持つ現役ユーザーが関わることで、Frilは自ずと「ユーザーと一緒に作る」サービスになっているのです。
「振り返れば、ユーザーがいる」Frilのオフィス
Frilのオフィスで特徴的なのが、「振り返ればユーザーがいる」こと。通常のIT企業ではあまり接点が多くなさそうなエンジニアとカスタマーサポートの2つの部門が、隣り合わせに仕事をしています。お互い、気軽に声がかけられるよう、オフィスのレイアウトにも工夫がされています。
チームごとのデスクはなるべく近くに配置され、カジュアルに立ち話ができるスタンドアップミーティング用のテーブルを中央に設置。また、オフィスの半分をソファとテーブルだけの空間にすることで、各チームが隔たりなくお昼を食べたり、雑談できたりするスペースになっています。
「些細なことかもしれませんが、色んな人と話をしやすいオフィス空間を作っています。また創業メンバーたちが、積極的にカスタマーサポートの女の子に話しかけて意見を聞く姿勢を見せています。ユーザーの方を向いてプロダクトを作りたい人が集まってくれているので、それをオフィス内でも自然と実現できるよう心がけています」
社内の7割を女性が占め、主婦や学生など多様な人材が集まるFrilでは、どうしても話しやすい人に集中して声をかけてしまいがち。チーム全体の一体感を高めるようなイベントを四半期に1回、開催しています。前回はバブルサッカーで、つい先日も釣りに行ったばかり。代表の堀井さん自らが席順やグループ分けを考え、様々なメンバー間でコミュニケーションが育まれるようにしています。
「スグ売れる」を一層強化するブランド検索
Frilの開発プロセスでは、新機能追加やルール変更などの変化の度に、社内のユーザーにモックやデモを見せることを欠かしません。でき上がったものに対しても、同じく社内のユーザーがQAを行い、Frilの利用体験が損なわれていないか、課題が改善・解決されているかを確認します。メジャーアップデートに関しては、社内での確認に加えて、より広くユーザーに使ってもらい、本リリースへの準備を進めていくとのこと。
ユーザーの声を吸い上げることで生まれたのが、最近追加された「ブランド検索」機能です。Frilでは、欲しいアイテムをブランド名で検索するユーザーが圧倒的に多く、それを受けてブランドのタイムラインが加わりました。これまでは、保存していたお気に入りから行っていた検索が、追加された機能によって、ログインした瞬間に自分のタイムラインへ好きなブランドのアイテムが流れるように表示されます。
かねてから、出せばスグ売れると定評があるFril。今回のブランド検索の追加で、より一層欲しいものが見つかるサービスが実現します。
「在庫がたくさんある通常の買い物と違って、フリーマーケットのFrilは、一点ものがいくつも集まる場所です。でも、その一点ものを見つけられなければ、それは存在しないのと同じこと。これまでのフォロー・フォロワー関係や、フリーワードによる検索に”ブランド検索”を追加することで、より欲しいものが見つかる場所にしていきます」
フェアな情報共有と脱・定例会議が生むスピード感
Frilに新しく入ったメンバーが驚くのが、役職や役割に隔たりなく、あらゆる情報が共有されるオープンな文化。「上下関係がない、できるだけフラットな組織でありたい」と話す堀井さん。月次で開催される締め会にはアルバイトを含むメンバー全員が参加し、業績や競合施策などが話し合われます。
「『女性が多い職場だと、派閥ができて大変じゃないか?』とよく聞かれるんですが、みんなすごく仲が良いです。Aさんは知っているけれど、Bさんは知らないといった情報の格差から生まれるトラブルがないのも理由の1つだと思います。メンバー全員に情報を包み隠さず共有することで、チームの一体感が強化されています」
「情報共有」と聞くと、そのために頻繁に会議が開かれることが想像されますが、Frilでは、いわゆる会議室で行うようなミーティングは皆無。ビジョンや方向性の共有は全体会議で行い、サービス改善のサイクルや意思決定を加速できるよう、あえて定例会議は設けていません。
例えば、開発チームの情報共有は、毎朝の5分から10分のスタンドアップミーティングで行われます。テーブルを囲み、立ったまま行うミーティングでは、各々の進捗とその日の業務内容だけを共有。その他に必要な確認やコミュニケーションは、その時々現場で行うことで2〜3週間のスパンで、スピーディなイテレーションサイクルが実現しているのです。
人気ドラマの豪華女優陣が登場するTVCM
作り手が用意したコンテンツをユーザーが消費するのがBtoCのサービスなら、CtoCサービスのFrilは、コンテンツ(ユーザーが出品するアイテム)を作るのも、それを消費するのもユーザーです。つまり、作り手が「いいコミュニティを提供すること」がすべてだと堀井さんは話します。Frilを毎日のように使うサポートメンバーによって、健全でアクティブなコミュニティが作られています。
2年という月日をかけて、繰り返し使われるスティッキーなコミュニティができた今、サービス拡大のために仕掛けるのが、10月31日から全国放映されるTVCMです。女性にとってなじみのあるモチーフを取り入れたCMに登場するのは、沢尻エリカ、シシドカフカ、篠原ともえ、田中美麗の女優陣。高い視聴率を記録して、セカンドシーズンに突入したドラマ『FIRST CLASS(ファーストクラス)』のキャストです。
「自分の持ち物をキープするのか手放すのかを取捨選択する」というFrilの利用体験を連想させる内容が描かれたCM。撮影には、Frilのカスタマーサポートの女性メンバーが同行。そこで、とあるメンバーが発した言葉が心底うれしかったと堀井さんは振り返ります。
「CM撮影の現場で、メンバーの子が『これ、私が作っているアプリだよってお母さんに自慢します』と言っていて。ここで働いているよ、ではなくて、自分が作っているという自負を持ってくれていることがすごくうれしかったです」
競争がひしめくフリマアプリ市場で、プレーヤーが少数のアプリに集約されていくのも時間の問題。組織がどのように変わろうとも、「ユーザーの方を向いてプロダクトを作る」ことだけは変わらないと話す堀井さん。エンジニアが強くなりがちなITスタートアップで、同じだけ声が大きな現役ユーザーが、社内で直接サービス作りに携わる。急成長するFrilの型破りなプロダクト作りには、誰しも学ぶことがあるのではないでしょうか。
▼フリマアプリ フリル TVCM「クローゼットランウェイ篇」30秒
▼フリマアプリ フリル TVCM「クローゼットランウェイ篇」メイキング