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元気に飛び立てコウノトリ 越前市で誕生の3羽、17日放鳥

飼育ケージ(奥)に通い、放鳥される幼鳥などの世話を続けるコウノトリ育む会の(左から)岡山さん、堂下さん、宮崎さん、夏梅さん、山野さん、三好さん=越前市中野町で

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 県内で産まれた卵から五十四年ぶりに誕生した国の特別天然記念物コウノトリの幼鳥三羽が十七日、越前市坂口小学校近くの水田で放鳥される。幼鳥と親鳥の世話をする住民団体「コウノトリ育む会」のメンバーたちは、異常気象やひなの死を乗り越え、幼鳥たちが飛び立つ日を迎えようとしている。

 放鳥されるのは、雄の「りゅうくん」、雌の「こころちゃん」「ひかりちゃん」。五月に誕生した。飼育ケージがある同市白山地区の住民を中心に二〇一五年に結成した育む会の堂下正道会長(71)と岡山秀昭さん(65)、宮崎礼三さん(75)、夏梅敏明さん(74)、山野長太郎さん(71)、三好栄さん(64)の六人が交代で世話を続けてきた。

 今年二月の大雪ではケージに続く道が積雪で閉ざされ、親鳥の雄の「ふっくん」、雌の「さっちゃん」の餌やりに苦労した。別のケージで飼育している一羽も含め「一日二回、雪をかき分けて餌を届けた」(堂下会長)という。

 雪解け後に朗報があった。一一年に着手した県による飼育・繁殖事業で、ふっくんとさっちゃんが初の有精卵を産み、待望の四羽のひながふ化。メンバーらは沸いた。しかし、六月にひな一羽が突然死。過去に世話したひなが死んだ例はなく、当時「何が悪いのか分からなかった」と困惑した。「残りの三羽は無事に」と願い、餌の食べ具合など気になることがあると一緒に世話をする獣医師に相談し、より連携を強化した。

 餌を運びに行くと、幼鳥が近くに寄ってくるようになった。放鳥を控え堂下会長は「その瞬間にならないと、気持ちは分からない。五羽でにぎやかなケージも親鳥二羽だけになるんだな」と寂しさも感じている。

 飼育するペアからひなが誕生し、今回の放鳥で育む会としても一つの区切りを迎える。三好さんは「飼育の経験を語り部として住民に伝え、関心を高めることが新たなステージになる」と見据えた。

 (山内道朗)

 

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