東レテニストーナメントのために日本に凱旋帰国した大坂なおみ選手が大フィーバーを巻き起こしている。「そもそも『帰国』なのか?」という話だけでトピックになるほどだが、なによりも魅力はテニス選手としての素晴らしい能力と、本人の謙虚にして飾らないキャラクターだ。
ただ、世界中で一夜にしてセレブとなった彼女への日本である対応に、引っかかる人も少なくないのではないだろうか。NY在住のライター、黒部エリさんが海外での報道や自身の体験をもとに分析した。
USオープンで優勝した大坂なおみ選手が日本に凱旋して、東レ テニストーナメントに参加している。
アメリカでは当初ブーイングがとびかった表彰式と大坂選手の涙、そしてなによりセリーナ・ウィリアムズの行動についての是非ばかりが報道されていた。だがその後、大坂選手が人気司会者エレン・デジェネレスの番組『エレン』に出演すると、その素直な言動にたちまち愛されキャラとなって、セレブの仲間入りをしている。
そんな折り、日本から、思いもよらないニュースが入って来た。
「日本ではこんなモノマネも出ているよ」と知人に知らされて、ビデオを見たとたん愕然とした。そこには女性コメディアンが、大坂選手のややたどたどしい日本語をまねるさまが映っていたのだ。しかも、全国放送の視聴率高いワイドショーで放送されたものだ。
え、こんなことをお笑いにしていいの、というのが最初に頭に浮かんだことだ。自分の規準でいえば、アウトだ。もし私がおのれのヘタで訛りがある英語を、アメリカのコメディアンにモノマネされたら、激しく傷つくだろう。
そしてなにより厄介なのは、おそらくコメディアンは大坂選手を好きで、決して悪意とかいじわるでやっているわけではないところだ。番組でも大坂選手を祝福するつもりで登場してもらったであろうこともわかる。悪気なくやっているからこそ、無意識に多文化を受けいれていない社会の通念も垣間見えてしまう。
なにもモノマネが差別的であるとか、禁止せよ、という話ではない。
たとえばアーノルド・シュワルツネッガーは、訛りのある英語で成功した人だ。シュワルツネッガーのモノマネをする芸人なら喋り方もまねる。いっぽうメラニア・トランプ大統領夫人にも、東欧なまりがある。だがジジ・ハディッドがテレビでメラニア夫人の喋り方をモノマネした時は、アメリカ国内でもそれはいじわるだと非難の声があがった。
つまりそれをウリにして芸能活動をしている人や政治家に対してと、そうではない人に対する「いじり」の違いだ。
そしてまた同時に現代日本で、それほど日本語がへたなのがお笑いになりえるのかという疑問も浮かんでくる。
現代では大学のチームも多国籍になっているし、どこの国の代表チームにも移民のアスリートがいる。すでに多様化の時代に入っているのに、大坂選手はいまだに「ガイジン枠」なのだろうか。