ライ麦、名前を聞いたことはありますが、具体的にどんな植物なのか知りもしませんでした。ライ麦の雑草魂に溢れた生い立ちを知るまでは。
もともとコムギ畑の雑草であったものが、コムギに似た姿の個体が除草を免れ、そこから繁殖した個体の中から、さらにコムギに似た個体が除草を逃れ、といったことが繰り返され、よりコムギに似た姿へと進化(意図しない人為選択)した さらに環境の劣悪な畑ではコムギが絶えてライムギが残り、穀物として利用されるようになった
ライ麦の生き残り戦略がスゴイの一言。
小麦畑に生えている雑草からはじまり、小麦に似ている個体が人間の駆除の手を逃れて生き延びる。それを繰り返し続けた結果、穀物としての地位を手に入れたのがライ麦さんです。
秀吉もビックリの出世物語。ダーウィンもビックリの適者生存。
ローマ帝国では、貧困者が食べるものとしていたため、一時期栽培が激減した。しかし、ローマ帝国の北部では小麦の生育条件が悪く、しばしば小麦畑をライ麦が覆うようになり、2世紀ごろにはライ麦を主目的として栽培されるようになった
他人の評価に腐らず、自分の輝ける場所を探して人間の胃袋を奪う様には勇気をもらいます。文字通りの雑草魂。
ライムギの重要性が低下し始めたのは18世紀に入ってからのことである。このころからイギリスでは囲い込みや農業革命の進展によってコムギの生産が急伸し、コムギの一大輸出国となった。これに伴い、食味に劣るライムギの輸出が急減した。バルト海からのライムギ輸出量は、17世紀前半の50年平均が13.2万トン、後半50年が11.2万トンだったのに対し、18世紀前半の50年には6.4万トンと半分以下に減少してしまった
自力の強さでひ弱な小麦の弱点をつき、人間の胃袋を満たし続けていたライ麦。しかし、人間はというと…… やはり小麦が大好き。手に入れた技術で農業革命を進展させて小麦の生産は急伸させる。そしてライ麦は見放される…… ライ麦、カワイソス。
現在ではライ麦粉は小麦粉よりビタミンB群や食物繊維が多いことを認められて蔑まれることはなくなり、健康的な食物としてヨーロッパ全土で栽培されている。しかし19世紀以後、コムギの作付面積が拡大するとともにライムギは栽培面積、栽培量ともに激減し、現代においてもなお栽培は減少の一途をたどっている。生産量が少ないため、僅かな不作でも価格が急騰する事があり、昔とは逆に小麦のパンよりライ麦パンの方が高値で取引されることも珍しくない。
なんということでしょう。せっかく健康食品として認められたのに、時既に遅し。ライ麦の需要は減少する一途。皮肉なことにそれがライ麦の価値をあげて小麦より高値取引をされることになるとは。
たしかに小麦より味は悪いかもしれない。しかし、人間が好きな小麦に自分を似せたり、小麦が生きれない劣悪な環境を生き延びて人間の空腹を充たしたり、小麦より人間の方を向いている作物、それがライ麦。
ここまで来ると、人間はもっとライ麦の方を向くべきなんじゃないだろうか、という気持ちになってくる。いや、私が無知なだけで、もしかしたらみんなライ麦が大好きで、多くの家庭の食卓にはライ麦料理が並んでいるのかもしれない。
そう思ってクックパッドでレシピ数を検索してみました。
- ライ麦 のレシピ 1,823品
- 小麦 のレシピ 3,083品
ダブルスコアは免れているけれど、かなり差がある。
料理はしないけれど、みんなライ麦のことが気になってGoogleで検索しているかもしれない。Googleトレンドを見てみます。
日本語だと結構な差がある。いや、日本はライ麦が入ってきたのがかなり遅く、ライ麦後進国。英語なら期待できるのではないか。ryeとwheatで調べてみる。
やっぱりだめ。
Google Ngramsを使った、本の単語出現頻度でもダメ…… 小麦強し。
まあ、私もコレを書くまでは殆ど知らずに検索する事もなかったですからね。ライ麦畑で捕まえても途中で挫折して読んでないし。
ただ、これからはもっとライ麦のことをココの隅にとめて生きていきたいなって思います。でも、パン屋にいっても小麦パンばかりなんですけどね :|
- 作者: J.D.サリンジャー,野崎孝
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