たくろぐ!

仕事はエンジニア、心はアーティスト

メイプルシステムズを退職しました!(だいぶ前に)

前書き

先に述べておくが、これからの話は全て僕の独断的主張である。
事実を元に話をする部分もあれば、自分の当時の感情を元に話をする部分もかなりあると思って欲しい。
ただ一番言いたいのは、僕はメイプルでいろいろな経験をしたし、いいことも悪いことも全ていい経験だと思っているということだ。
その上でこれから述べる話の中でネガティブに感じることがあるかもしれないが、それは誤解であるということを先に記しておく。

社長は人に夢を与える仕事

社長は人に夢を与える仕事だとつくづく感じている。
来年はもっと成長しているだろうとか。
年収が上がっているだろうとか、今よりやりたい仕事ができているだろうとか。
気の許せる仲間ができているだろうとか、仲間が増えておもしろくなっているだろうとか。
社員のいろいろな期待が向けられてそれに答えないといけないのが社長という仕事だ。

社長は演者である

そのために社長がしないといけないのはそれほど難しいことではない。
みんなよりちょっといい服を着ているとか、うまい食いもんを食っているとか。
そういうものは目に見えやすくてわかりやすい。
社長についていけばこんな暮らしができるというイメージを持たせることが第一歩だ。
だから社長は松屋でご飯を食べてはいけないし、Amazonのタイムセールで買い物をしてはいけない。
誰でも送ることができる日常から距離を取らないといけない。
極端に聞こえるかもしれないが、本気で上場を目指すくらいの経営者はそうするべきだ。
いや実際にはそうではなかったとしても、パフォーマンスを怠ってはいけないということだ。

会社のお金は社員が稼いだお金

社長の仕事は夢を与える仕事と言ったが、だからと言って会社のお金でいいジャケットを買ったり女性と遊んだりして私腹を肥やしている社長はもはや論外だ。
現場に出ていてほかのエンジニアからその人が所属しているSESの会社の話を聞く機会が間々あるが、私腹を肥やす社長が多いのはよく聞く話だ。
そういう意味で、メイプルの社長はWantedlyのスカウトメールを1通送ることも無駄なお金はないと考えていて、送る相手のことを調べてから入念に文章を考えて送っていたりと本当に会社のお金を大切にしている社長だ。
むしろ金のないおまえら以上にお金には細かいしおまえら以上に質素に生きている。
それがおまえらが彼に親近感を覚えることが多い理由の一つだ。
そしてそれはある意味彼のパフォーマンスであり、それがわからないおまえらは若すぎるんだ。
(「若いからわからない」ではない、念のため。)

夢で腹は膨れない

人は憧れと妬みが表裏一体の生き物である。
彼はそれがわかっているのかもしれない。
自分が人より良いものを身につけていれば妬みの対象になるし、接待だとしても自分だけいいものを食べていてずるいやつだ思われてしまう。
だからメイプルの社長は服のバリエーションは少ないし、なか卯が好きだ。
飲みにいくのも300バーだし、いつも薄着で、スーツ姿を見たことは3年以上いて一度もない。
おまえらは夢見がちで、食べ盛りで、妬みがちな未熟な若者なのである。
それでも夢だけでは腹は膨れないこともわかっていて、今の現実に妬む対象を求めてしまうのだ。
それがわかっているからこそ彼は質素で庶民的な社長でありつづけようとするんだ。

社長もおまえらもみんながそれぞれ生活がある

これはもはや説明はいらないだろうが、社長もおまえらもみな人なのだ。
おまえらは自分の生活があるから、会社に所属することを選び働いている。
社長も同じように自分の生活がある中で社長を全うしている。
いつの日か、社長の口から「社長はやるべきではない」と言う言葉を聞いたことがあるが、彼の本当の気持ちを聞いた気がした。
本来社長の口からこういう言葉を聞くのはよくないことだが、それは自分だから言ってくれたのではと思っているし、そう言ってくれたことに感謝している。
彼も人だし、養うべき家族がいて、今の生活水準を下げたくなくて(言い方は悪いが)仕方なく社長をしているのかもしれない。
それくらい社長業というのはストレスフルな仕事だし、ただやりたいからと簡単にやれる仕事ではない。
それでも、彼はエンジニアを幸せにする会社を作るために頑張っているし、おまえらが外で稼いでくれたお金を私腹を肥やすために使ってはいない。
おまえらが社長はあれだけ稼いでいる(実際に稼いでいる)と言っていくら妬んでもお門違いなのである。

よく学び、よく遊ぶ

社長はよく学び、よく遊ぶ。
そしてそういうおまえらもとても好きだ。
彼もまだ30半ばを少し超えたくらいで、まだまだ少年の心を持った大人なのだと思う。
だから業務外でも遊びに誘われることがある。
そういうときは彼のおごりのことも少なくない。
これはお金がなくて遊び盛りの若いおまえらには最高なことだと思う。
彼にとっては仕事もプライベートも同じで、遊びでもおもしろければ評価してくれる。
そして大事なことだが評価が上がるというのは給料が上がるわけではなく、社長との付き合いが深くなるということだ。
社内で一緒にゲームをやったり、飲みに連れて行ってもらったり、ご飯をご馳走してくれたりする。
これは他の会社ではありえない話かもしれないが、まさにこれこそがメイプルの最大の特徴である。
一番遠い存在であろう社長と一番親密になるにはメイプルは最高にいい環境なのだ。

そして頭もいい

そしてこれも大事なことだが、社長はとても頭が良い。
遊びも本気だが仕事も本気で、若いおまえらが彼から学ぶことは普通の経験ではできないくらい豊富にある。
社長はプログラムも書けるし、経理もできるし、人事もできるし、資金調達もできる。
世間的には超がつく優秀な人材なのだ。
それもそのはず、彼は23歳のときには子どもをあやしながらプログラミングの本を読んで勉強していたと言い、その努力はおまえらの想像をはるか斜め上を行っている。
したがって0からこの業界に入って一人前のエンジニアを目指している若手なら学べることは他社より格段にある。

ワンマンなのかと言われればそう

ここからは少し視点を変えて現実的な話をしていく。
外部の人からはメイプルはよく映っているのかもしれない。
数年前にWantedlyアワードを受賞して名だたる企業の仲間入りを果たして?から、いまだに採用は右肩上がりなのがその証左である。
しかしメイプルはやはりというか、それでもまぎれもないベンチャーなのである。
(ここではベンチャーを本来の意味ではなく、スタートアップ的な意味で言っていることを先に言っておく。)
ワンマンであるというと社長の決定権が高く周囲が振り回されるようなイメージだが、メイプルでは若干異なる。
社長の特に長けている能力の一つとして、説得力の高さがある。
ワンマンのテンプレではなく、ちゃんとおまえらの意見を聞いた上で、自分の意見の優位性をロジカルに展開するので結果的に彼の意見が採用されやすいということだ。
その最たる例が「離職率100%」である。
社内でも物議を醸し、これが原因で退職したエンジニアもいるほどの議題だったのだが、結局メイプルの経営理念としての「逆張り」と共に、半ばなし崩し的に決まったという経緯がある。
当時僕にも事前に社長から直接これについての意見を聞かれて正直にあまりいい印象ではないということを話したが、結局彼が決めることなので「任せます」と言ったら、賛同者の数に数えられていた。
世間の言うワンマンなのかはよくわからないが、とにかく根回しがうまく説得力のある説明ができることが彼の魅力であり、弱点なのかもしれない。

入りも多いが、出も多い

これは外から見るとわからないことかもしれないが、メイプルは少なくとも僕が入ったときから3年はほとんど人は増えていない。
採用面でWantedlyで表彰されているのにも関わらず、だ。
それはなぜかと言うと入る人と同じくらい人が出るからだ。
今は資本注入があり、外部から優秀?な人事や経理の人が来たり、僕が辞めたときより人が増えているかもしれないが、その多くは新人エンジニアばかりだ。
それより深刻なのは今まで長く働いていた優秀なエンジニアがやめてしまうことだ。
これには明確な理由があるのだが、ここではあえて伏せておく(察し力の高いおまえらなら既にわかってると思うが)。
「会社が成長していく中で辞める人がいるのは仕方ない」と社長が言うのもわかるが、本気で会社を上場させることを目指しているのであれば人を増やすことよりもまず辞める人を減らすことの方が大切なのではと思っていた。

よくも悪くもSESの会社である

多くのSES会社がSESから抜け出せないわけは単純明快で、ただエンジニアを外に出すだけでキャッシュが手元に入ってくるからだ。
さらにSESという短期的な人借りにニーズがあるからというのも外せない。
SESに対する事業としては受託開発や自社サービスがあるが、受託は瑕疵担保責任があり支払いが遅れがちになるというデメリットがあり、自社サービスはサービスができたからと言って売れるとは限らないというリスクがあるのでなかなかすぐ舵をきれない。
したがって多くのITベンチャーは手っ取り早くキャッシュが生まれるSESに真っ先に取り組む。
多分にもれずメイプルもまぎれもないSES会社で、おまえらは入社したらほぼ確実に現場へ派遣される。
とはいえメイプルは銀座のオフィスに寝泊まりするための場所があり、タイミング次第でそこを利用することができプログラミングを学ぶことができる。
まずはそこで(無給で)集中的に勉強しながら、現場に入るために面接を受けていく。
面接で受かったらそこで初めてメイプルとの有期雇用契約になるのだが、エンジニアではないおまえらは最初はテスターをやる。
でもテスターはプログラムを書かないので、エンジニアになるためには現場から帰ってオフィスでプログラムを書き続けないといけない。
そして努力を続けた結果、晴れて一人前のエンジニアになれるというわけだ。
(ちなみに僕はそれを途中で諦めて退職という道を選んだ。そして違うステージでプログラムを書いている。)

ベンチャーベンチャーたる所以

メイプルがベンチャーかと言われると、今期で10年目という年だしなかなか難しい気もする。
SESの業界のなかでは4,50人も社員がいれば大手だし、名前がある程度通っていることを考慮すれば中堅クラスとも言えるかもしれない。
しかしその実態はしっかりベンチャーなのだ。
僕が辞めるとき、ようやく経理の男性(最年長)や人事の女性(2番手くらい?)などが入社して社内体制の刷新があったが、結局人事権が社長にある時点で彼らが会社を変えられることは期待できない。
資金調達のニュースもそうだが、株を少し手放したところで実質的な経営権を持つのは社長なのであって、メイプルはまだベンチャーを抜け出せていない。

おまえらを外に出せば会社の利益になるという構造

ベンチャーはみんなそうだが、大手と違って金もないし、人脈もない。
だからといって卑屈になる理由はないと思っていて、社員が少ないながらも魅力的なサービスを展開している会社も増えてきた。
大手のようにマンパワーで事業を展開するのが難しいのなら、少数精鋭でいいから優秀な人に仲間になってもらえるだけの人を惹きつける魅力を持っていることが重要である。
メイプルもオフィスは今どきのベンチャーっぽいし、和気藹々と仕事をするメンバーが社内にはいる。
だがメイプルは先も言った通り、新人を採用をして彼らを現場に送るだけで、教育にはコストをほとんど払わない。
そして彼らは現場に出ているのでほとんど社内のことを知らずに(さらにプログラミングのことも知らずに)いつのまにか辞めてしまう。
メイプルが採用にかけたコストは大したことはないのだが、それでも結局定着しないのはSESの功罪なのかもしれない。

20代のおまえらは金も(プライベートの)時間も惜しむな

さてではメイプルに入ろうとしているおまえらに向けて僕の助言を言おうと思う。
まずは20代だが、おまえらはエンジニアという仕事を諦めるな。
とにかく寝る暇も惜しんで最短でエンジニアになる道を模索しろ。
でないといつの間にか使えない30代のおっさんになって、業界から捨てられる(か、未来が見えなくなって自分から離脱する)。

30手前のおまえらは最初に条件を提示しておけ

次に30代だが、よほどの給与が提示されない限り入るのはおすすめしない。
また実力のあるエンジニアならなおさらだが、30代でこの業界に足を踏み入れようとすると痛い目に会う。
できればSier、少なくとも事業会社を目指すべきで、SES会社は絶対にやめとけ。

それ以上のおまえらの輝けるステージではない

それ以上の人だが、この業界に残っている人は最新の技術にもキャッチアップしていく超がつく優秀なエンジニアのみだ。
35歳がこの業界の定年と言われるほどで、現場でたまに見る40代以上のエンジニアはとてもよくできるし、自分の業務をこなしながらアドバイザリーもやっているような人も少なくない。
ある程度できるくらいでは正直SESの面接すら組ませてもらえないし、メイプルのような会社もそれを重々承知だから採用すらしない。

すべて自分次第

これまでいろいろ言ったが、この業界はどこも同じような会社ばかりだ。
環境がどうあれ、すべては自分次第だ。
おまえらがエンジニアになると決めたら絶対に諦めてはいけない。
エンジニアになるためにはとても幅広い技術を学ばないといけないし、その習得には数年かかると言っても別に遅いということはない。
数年いろいろな現場を経験する中で、ふとした瞬間にジョブズが言う、最初は点でしかないものがいづれ線となって繋がるという時が来る。
その前に諦める人がこの業界では圧倒的に多い。
だからこの記事を読んだ人にはぜひ悲観的にならず、どんな逆境にも諦めないでチャレンジするという気概を持って頑張って欲しいと思う。
いろいろ言ったが、メイプルが特別なわけではない。
メイプルはこの業界のその他大勢となんら変わらず、悪いところもあるけどいいところも同じかそれ以上あるということを伝えて終わろうと思う。
この記事を読んで少しでも優秀なエンジニアが増えることを切に望み、締めくくりたい。