(前編はこちら)
「ギズモード・ジャパン」を始め、「ライフハッカー[日本版]」「コタク・ジャパン」「ルーミー」「タブロイド」「グリッティー」「マイロハス」「カフェグローブ」といった、ガジェット系から女性向けメディアまで、幅広いジャンルの合計8メディアを運営するメディアジーン。その大黒柱のメディアといえば、やはりギズモード・ジャパンだ。昨年9月には月間7000万PVに迫るPV数を上げた。現在も月間5000万PV前後と、安定した高PVをたたき出している。
加えて、他の7メディアも順調にPVを伸ばしており、それを裏で支える緒方氏はたいへん苦労していることだろう。
安定的な運用への改善策とは
筆者はギズモード・ジャパンでも原稿を書いているが、緒方氏が入社する以前は、iPhone発売やWWDCといった大きなPV流入があるときには、ギズモード・ジャパンのサイトが落ちてしまったり、記事を入稿するMTに入れなくなったりといった現象に出くわしたことがある。しかし、現在ではほとんどそのような現象は見られない。「ちょっとMTが重たいな」くらいの感じだ。
この改善はどのように行ったのだろうか。
「クラウドの導入や、データベースを本格的に使い始めたということが大きいですね。クラウドフロントを当てれば、それで多少のPV増加ではビクともしません。クラウドフロントの料金的な問題もありますが、短期間に大量のPVが見込まれるという場合には、物理サーバーを増やして維持するよりも安いのではないでしょうか」
PVが右肩上がりで増え続けているという状況ならば、ランニングコストをかけてでも物理サーバーを増設すると言うのもアリだが、一時的な場合であればクラウドを併用するというのはとても有効なようだ。現在は、物理サーバーとクラウドの併用をしているのだろうか。
「ギズモード・ジャパンのCMSに関しては、まだクラウドには上げていません。社内で段階的にリニューアルをしている段階で、マイロハス、グリッティ、カフェグローブ、コタク・ジャパンが先行してクラウド移行を完了しています。次にライフハッカー日本語版、その次にギズモード・ジャパンという感じでリニューアル予定です」
これからの理想のエンジニア像はフルスタック
Web制作一筋の緒方氏だが、現在のWebメディアのエンジニアにはどんな人が向いていると考えているのだろうか。
「弊社に関していえば、スタートアップに近いような性質があると思っていて。現在はシステム開発は2人ですが、昨年までは1人で回していたので、何でもできる必要があるわけです。フロントエンドからバックエンド、サーバーの構築も。最近はそういう人をフルスタックエンジニアと呼ぶらしく、かっこいいなと思っています(笑)。」
「弊社で人材を募集する際に、会社にオーダーしていた採用条件が、若いこと、プログラマとして働いた経験があること、得意な言語が1つあることでした。僕自身が、どちらかというとディレクション脳なので、プログラムのスペシャリストを目指すというよりは、必要なことはひと通りできて、かつ経営方針にも口を突っ込めたらいいなというような感じで。向いている人というのはそういう人なのかもしれませんね」
確かに、エンジニアの多くはスペシャリスト寄りの人が多い印象だ。経営サイドのことをきちんと考えようというマインドセットを持ったエンジニアは、少数派ではないだろうか。そう考えると、今後はトータルでバランスのとれたエンジニアが重宝される時代が来るということかもしれない。特に、Webメディアの運営に携わりたいというのならば。
「たとえばPHPで世界トップ10に入るような人は、究めていけばいいと思います。でも、そうじゃない人はどうしたらいいかというと、キャリア設計だと思うんです。フルスタックエンジニアって空いた穴をひと通り埋められる器用貧乏の便利屋みたいな側面も確かにありますが、ディレクションに首を突っ込んで、テクニカルディレクションから上流工程に持っていくということもある。最近はグロースハック的なことも流行っているので、開発的な視点からそういう方面に行くというのもアリじゃないですか」
緒方さんは、今後はこれまでメディアジーンが制作してきたコンテンツを使った、テクノロジードリブンな案件を作っていきたいという。
「うちの8メディア、合計1億PVの流入を何かに活かしたいと思っていて。キュレーション的な、弊社印のサービスを立ち上げたら、それを広めることは割と容易だと思っているんです。多少アイデアはあります。他社にはない新しいものを作りたいですね」