「CTO」に聞いた「CEO」選びのポイント -Vol.2 Origami編- 

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今をときめくスタートアップ企業のCTOに、どんな理由で現在のCEOと働くことを決断したのかを伺う、この企画。第2回は、株式会社OrigamiのCTO野澤貴さんにインタビューを行いました。

野澤さんは、慶應大学大学院在学中にIPA主催の未踏ソフトウエア創造事業に採択され、その成果をもとにネイキッドテクノロジーを共同創業。モバイルアプリ基盤技術を設計・開発した後、ミクシィでサービス開発戦略の立案・推進に携わってきました。そんな野澤さんが新たな活躍の場として選んだのが、康井義貴氏がCEOを務めるOrigami。自身の趣味嗜好にあった商品を簡単に購入できるスマートフォン向けECサービス「Origami」を運営する同社は、2013年のサービス提供にあわせて、合計5億円の資金を調達するなど、注目を集めています。

自らの能力を最大限発揮できる環境をつかみ取り続けてきた野澤さんに、CEOや働く場選びのポイントを聞きました。

決め手は、背中を預けられる仲間

-野澤さんは「ミクシィ」から「Origami」に移られたわけですが、ここに参画しようと決断する決め手はなんだったのですか?

「そうですね。ビジネスモデルの話やマーケットが楽しいからということもあるんですが、一番大事なのはチームだと思っています。極論すると、今考えているビジネスモデルがうまくいかなかったとき、もう一回頑張るとして、そのメンバーでやるのかどうか。そのことにどれくらい納得感があるかどうかだと思うんですよね。その意味で、大事なのはCEO選びだけではなくて、他にどんなチームのメンバーがいるのかっていうことだと思っていて。かつそのチームを集めたことを含めて、CEOがどれくらいの会社をつくる能力があるのかというのが、重要な項目ではないかと感じています」

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-Origamiでは集まっているメンバーはその意味で信頼できたと?

「はい。集まってるメンバーというのが、僕にとって、それぞれの仕事の領域を安心して任せられる人間でした。そしてそれが、そういうメンバーをちゃんと集められた、すなわちOrigamiという場所をちゃんとつくった、CEOの能力なんだろうなと思っていました。スタートアップという視点でいうと、もう一つ大事なのはお金集め。サービスをちゃんと成長させていく、そのドライブをちゃんと踏めるか踏めないかというのは資金力が関わってきます。なので、チーム集めとお金集めがうまくできるというのが一番大事かなと」

-なるほど。そのような視点はご自身がネイキッドテクノロジーの創業に関わった経験からきているのでしょうか。

「最初のキャリアがスタートアップで、お金が尽きるか尽きないかという話は常に考えなければならなかったので、そういう意味でお金にシビアなのはあるのかもしれないですね。あとは、スタートアップで厳しい時期って必ず出てくるんですよ。常にノリノリでいければいいのですが、そうじゃないときも、このメンバーと一緒なら頑張れるなと思えるかどうかってすごく大事。相手に『背中を預けられるか』ということですね。そういう意味で、立ち上げたネイキッドテクノロジーでは厳しい時期もありましたが、結果的にネイキッドテクノロジーのメンバーってチームとしては常に機能してたというか、一度も崩壊してなかったんです。なのでやっぱり次にやるとしてもチームが、底辺のところまで落ちたと想像しても、そこから這い上がれるかというのが、肝になるのではないかなと」

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相性を見極めるには時間が必要

-そもそも、どのような経緯でOrigamiで働き始めたのですか?

「ミクシィにいるときに、『知り合いだった康井くんが独立して会社を立ち上げたらしい』ということを聞き、何人かで遊びに行きました。お互い『何やってるの』みたいな話になって、ミクシィでデータ分析してて、というようなことを話したんです。もともとネイキッドテクノロジーではモバイルをやってましたし、それで康井くんから『ちょっとモバイルとデータ分析知りたいんだよね』みたい話をされて。なんかそのうちにいろんな相談がくるようになって、答えているうちに、気付くとオフィスにいてみたいな(笑)」

-ははは(笑)。頼まれているうちに気付いたら巻き込まれていたと。じゃあどこが転機というよりも、だんだん相談されることが増えていって、いつの間にかジョインすることになっていたのですか?

「まぁ、本当に自分がそこに入るって考えるときは、『この会社で大丈夫かな』とか『このチームで大丈夫かな』というのは考えたのですが、少なくとも、僕のなかで検討の俎上にあがるかという意味では、その一緒に仕事をした時間が重要ですよね。お互いにフィットするかしないかというのは面接してるだけじゃわからないので、一緒に仕事しててそこがわかってるというのはすごく大事というか。特にベンチャーが資金調達をする最初のタイミングでは、メンバー集めは『お金あるんで、ウエルカム』という感じではないじゃないですか。なので、そのタイミングで関わってくれるような人を探すのは、やっぱり相性が合うかどうかが大事。僕にとってもOrigamiにとっても、そういう時間がちゃんと取れたっていうのはすごく大事なことだったと思うんですよね」

エンジニアのタイプによって、働きやすい職場は異なる

-全員がエンジニアリングのことをわかっているラボみたいな企業もあれば、エンジニア、営業などと役割がきっちりと分かれている企業もある。エンジニアにとって理想的な職場はどちらでしょう?

「エンジニアにも最近は2タイプあると思っていて、それが『サービス志向のエンジニア』と『技術志向のエンジニア』。サービス志向というのは、技術にだけ興味があるというよりは、実際サービスがどうやってワークしているのか、そのなかでユーザーがどのような動きをしているのかというような、ビジネス的なところに興味がある人。技術志向は、技術自体を深掘りしていくのが楽しいという人です。そういう意味でいうと、どっちのタイプなのかによっても、どの環境が幸せなのかって変わると思うんですよね」

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-エンジニアのタイプによって働きやすい職場は異なると。

「技術を突き詰めたいという人たちには、余計な雑音が入らないラボ的な環境って理想的なんだろうなと思います。一方でWebサービスのスタートアップだと、なんでもやらなきゃいけなかったりとか、サービス伸ばすためだったら技術的にどうこうっていうのは置いといても、こういう機能は早めにローンチしなきゃいけないとか。いろいろ制約条件が出てくるので、サービス志向の人のほうが特に序盤のスタートアップの段階だと活躍しやすいのかなと思いますね」

環境に飛び込んでみると、志向も変わる

-技術志向のエンジニアも、サービス志向の必要性を感じるタイミングがあるのでしょうか。

「あると思いますし、環境によっては、たぶん必然的にやらなきゃいけなくなる話だと思うんですよね。そういう環境に身を置けば『興味あるわ』ってなる人は結構いると思っています。僕がネイキッドテクノロジーのときには、どちらかというとコア技術の細かいところを考える、技術的なことやっていて。今度はミクシィに入って、データ分析の仕事をし始めて、『あぁ、そういう領域もおもしろいな』というふうに頭が変わっていったところがあります。なので、やってみたら興味がわいてくるというのも少なくないですね」

-なるほど。その環境に身を置けば楽しさに気付くことが結構あると。

「ありますし、一方で例えば、データ分析をするにあたっても、エンジニア的な発想で、そのサービスをきれいに数字で分解していくことができる。データをストラクチャー化して、数字で管理することができるってエンジニア的な喜びだなと思っていて。そういう観点でビジネスのことを考えるのが好きになる方もいると思うし、はまりかたも人それぞれかなと思います」

技術志向のエンジニアは浮気をしてはいけない

-エンジニアが関わる領域が広がっていくなかで、今後エンジニアに求められるものは何でしょうか?

「エンジニアリング技術に裏打ちされてマーケティングできますとか、デザインできますみたいな人が増えていくというなかでいうと、エンジニアリングできますって純粋にいう場合は、それはそれで、求められるレベルはちょっとずつ上がっていくのかなと予測しています」

-なるほど。出来合いのものをいじれば、そこまでスキルのない人でも、それなりのことができるようになって来ていますものね。

「そうなんです。そういう意味でデザインできるエンジニアだったり、ちょっとコードが書けるデザイナーだったり、そういうポジションで価値を発揮する人が結果的に増えてきたと思うんですよ。今って、いろんな仕事とエンジニアリングとの関わり合いが密になってきたのかなと思っていて。でも一方で、エンジニアとして超一流になろうと思ったら、そこで浮気をしている場合ではないと思うんですね。そんなに簡単な話じゃなくて、どれだけ優れたものを、どれだけいろんな観点から検証し、優れた設計を考えられるのか、とか。そういう話になってくると、やっぱり専門のプロがいるかなと思っています」

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