社員とインターンの比率が1:1、Rettyがインターンを積極採用する理由

 

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プロフィール:
奥田健太 株式会社Retty CFO
1985年生まれ。東北大学工学部卒業後、三菱商事株式会社に入社。リスクマネジメント部にて5年半勤務。昨年7月より、実名型の次世代グルメサービス「Retty」を運営するRetty株式会社でCFO(最高財務責任者)を勤め、ファイナンスや資金調達と同時に人事統括として急成長ベンチャーの一役を担う。

わずか約2カ月で100万人増! 急成長を遂げるRettyについて

ソーシャルメディアのコネクションを利用して、趣味・嗜好の合う人のグルメ情報を入手することができる、新しいグルメサービス「Retty(レッティ)グルメ」。実名の口コミをベースとしているため、皆に教えたくなる良いお店に出合えるという食通のファンも多い。そんなRettyを生み出したのは、2011年に創業したRetty株式会社。現在、積極的にインターンの採用に乗り出しており、「Retty Business School」という制度までできたという。スタートアップ企業がインターンを雇用するメリットは、どこにあるのか。CFOの奥田氏に、詳しく話を聞いた。

—— まずはRettyの現状を教えていただけますか?

5月26日にユーザー数が300万人を突破したのですが、つい最近400万人を突破しました。わずか2カ月ほどで100万人も増加したということで、かなり勢いがついてきていると思います。

—— 考えられる要因はありますか?

RettyはCGMなので、ユーザーさんの口コミの量に比例して、検索においても好ポジションを作れつつあり、従来のソーシャルメディア経由での流入に加えて、検索経由での流入も増えているからだと考えています。特にSEOのトレンドとして、ブラックハットの施策が機能しなくなっているので、正当に評価されるためには、ユーザーさんの口コミという、信頼性の高いコンテンツを地道に増やすことが近道であると考えています。そのため、ユーザーさんが書き込みをしやすいよう、スマートフォンのアプリに力を入れています。

—— アプリがメインということは、Rettyのユーザーさんは若い方が多いのでしょうか?

いえ、実はそうでもないんです。ユーザーさんには、口コミを「書いていただく方」と「見ていただく方」の2種類いらっしゃるのですが、「書いていただく方」は30代〜40代がボリュームゾーンで、新しいWebサービスにしては年齢層が高めになっています。というのも、グルメにお金や時間を費やすには、ある程度の余裕がないと難しいんですよね。50代の方も結構いらっしゃいます。

一方、「見ていただく方」はあまり年代に偏りはなく、若い方も幅広くご利用いただいています。Rettyはスマートフォンで手軽に書けるように、我々も注力して取り組んでいるので、通常のCGMに比べて、全体のユーザーさんの中で「書いていただく方」の割合がかなり高いところが特徴です。

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「遊びにきてよ」から始まったスタートアップへの転職

—— 奥田さんがRettyにジョインされたのはいつですか?

入社という意味では、昨年の7月1日からです。3月末に代表の武田と会って、ランチをしながら情報交換をしている中で、「今度、暇なら土曜日に遊びにきてみなよ」といわれて。オフィスで半日いろんなディスカッションに混ぜてもらっていたら、「じゃあ1カ月くらい週1で来て」となり、だんだん巻き込まれていったといいますか…(笑)。

僕は元々、三菱商事のリスクマネジメント部というところで、経営企画や全社的な投資のルールを決めたり、大きな投資案件の分析をするような仕事をしたりしていたのですが、当時、Rettyがちょうど資金調達を目指していた時期だったので、それに向けて戦略策定や事業計画策定を一緒にやってくれないかということで、5月の初めくらいに打診を受けて、Rettyへ転職することに決めました。

—— 武田さんに初めて会ったときには、すでに転職を考えていたのですか?

いや、最初はRettyというサービスやスタートアップに興味があっただけで、特に本格的に転職活動をしていたわけではありません。ただ、Rettyに遊びに行っている頃から、いろんなデータを開示してくれて、それを元に真剣に議論できたことで、わりと実践的なイメージが湧きやすかったというのが大きいですね。

Rettyのメンバー構成は「社員:インターン=1:1」

—— Rettyの現在のメンバー構成について教えてください。

社員が約20名と、インターンとして週4〜5日来ている学生が同じく約20名います。初期の頃からインターンにも活躍してもらっているので、この比率を保ったまま増えているという感じです。1年前に入った僕が7番目の社員だったので、この1年で社員だけでも13名ほど増えていることになりますね。

役割としては、社員約20名のうち12名がエンジニア、あとはデザイナー・ディレクター・ビジネスがそれぞれ2名ずつになっています。

—— 積極採用を続けおられるようですが、応募状況はいかがですか?

幸いなことに、最近はRettyの知名度も少しは上がってきたので、コーポレートサイトWantedlyからの応募も多数いただいておりますし、社員の紹介で優秀だと噂を聞いた人に直接声をかけさせていただく、ダイレクトリクルーティングのようなこともやっています。元Googleの人間がCTOとして入ってから体制も本格的に整ってきたので、良いエンジニアさんにはいくらでも来ていただきたいですね。

今週はインターンも含めて、25人くらい面談させていただきました。平均1日4〜5人ですね。良い人を採用できるかどうかのKPIはアポイントメントの数だと思っているので、積極的にお会いするようにしています。

—— 採用は奥田さんおひとりでご担当されているのですか?

採用チームのオーナーシップを持っているのは僕ですが、代表の武田やエンジニア・デザイナー・ビジネス部門からも入ってもらい、みんなの力を借りながら5〜6名でやっています。

採用活動は、採用担当である僕や採用チームの人間にスキルがあるからうまくいくというものではないですよね。会社全体として欲しい人を巻き込んでいくことが大切なので、欲しい人を口説くのはみんなでやるべきことですし、逆に、相手も入り口である僕だけを見て会社の良し悪しを判断するわけではないので。

なので、採用担当としての僕の仕事は、会社と欲しい人を繋ぐオーガナイザーとして場を作ったり、間口を広げたりすることなのかなと。

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オリジナルのインターン制度「Retty Business School」

—— インターンを積極的に採用するのは、なぜですか?

当初からそうだったかは別として、現在インターンに力を入れて採用しているのは、長期的に新卒として入ってきた若い人が活発に活躍してもらえる会社にしたいからです。インターンはその土台作りという位置づけですね。

実際、今年の4月にはインターン経由で3名の新卒が入社してくれました。教育にも力を入れているので、新卒として入らなくても、インターン生は外でも十分に活躍してもらえるような実力が付いていると思います。

—— スタートアップで教育に力を入れるのは大変じゃないですか?

大変ですね。でも教えるのが好きな人が多くて、その人たちが中心になって教えていますし、それ以外の人もオン・ザ・ジョブで教えるのはウエルカムというカルチャーがあります。若いので学習のスピードも速いですし、短期的にコストをかけてでも3カ月や半年単位で見ると、かなりプラスになっているかなと。

どこのスタートアップでもそうだと思うんですけど、やりたいことがいっぱいあって、猫の手も借りたいくらいの状況の中で、将来的に力になってもらえるなら、今ちょっと手間がかかってもいいかなという感覚ですね。みんなが教えて、それが自分たちに還ってくる、というコンセンサスがきちんと取れていると思います。

—— 「Retty Business School」について教えてください。

インターンにはメンターがつくようになっていて、月に1回フィードバック面談をしています。インターンは毎月、目標とその達成に必要なアクションプランを作っているので、それをレビューして次の月の目標とアクションプランを立てるという形ですね。

インターンにはC〜Sのクラスがあって、最初はみんなCクラスからなんですが、Sクラスまでいくと我々としては新卒で来てくださいというオファーと同じくらいの意味があります。一方、入社して3カ月経ってもCクラスからBクラスへ上がれなければドロップアウトとなるので、みんな真剣に取り組んでいます。

これまでやめた人も含めて60名ほどのインターンを採用したのですが、その中でSクラスまで行ったのは5名。そのうち3名が新卒として入社して、現在Sは1名いる状態です。

卒業生の中には、起業して資金調達した人もいます。Retty卒業生として活躍してもらえると、我々もうれしいですね。

—— 授業のようなものがあるのですか?

実践がメインで、プラスαとして週に1回ほど勉強会を用意しています。そもそも「教えてください」というスタンスの人は長く続かないと思うので、採らないようにしていて。放っておいても成長するくらいの人は、自分から聞きに来るので、こちらから完全なパッケージを作って教えるということはあまりしていません。

エンジニアとデザイナーは、ある程度、初めからスキルがある人じゃないと厳しいですね。今Sの1名は早稲田の学生なんですが、高校生の頃からデザインをやっていて、大学に入ってWebの制作会社でアルバイトをしていました。企画や営業の仕事は、のみこみの早さや考える力、粘り強さといった、一般的な資質でどうにでもなると思います。

インターンの採用を決める3つのポイント

—— 学生を見極めるポイントは?

3つあると思っていて、1つ目は「コミットメントの質と量」。その人がどれだけRettyに熱中できそうかどうかですね。夢中になってハマりやすいタイプの人かどうかを見ています。2つ目は「素直さ」です。頭の中でクリティカルに考えることは大事ですが、マインドセットとして斜に構えるのは、成長を阻害するものだと思っているので、ロジカルに考えつつも腹落ちさせるのが速くて、素直に周りのアドバイスや自分の経験を成長に繋げられるタイプかどうかというところです。3つ目は「必然性があるのかどうか」。その人の環境や原体験としてRettyでインターンをすることに必然性があるのかどうかを最近見るようにしています。必然性があれば、会社にも自然とフィットすると思うので。

—— インターンだけでなく、中途でもどんどん人が入って来るとなると、人間関係などいろいろな場面でコンフリクションが起きませんか?

みんなすごく仲がいいんですよ。だから人が増えても、部活に部員が増える感覚っていうか(笑)。ユーザーさんに良いものが出せるかどうかというアウトプットだけで考える文化が根付いているので、自分のプライドとかそういったものは、何の価値もないよねという文化を徹底しています。

プロジェクトベースでリーダーがいるだけで、役員も含め皆フラットだというのもあって、そこで衝突が起きるようなことはありませんね。インターンにも、よっぽど秘匿性の高いもの以外は積極的に情報を開示していますし、もちろん会議にも参加してもらっています。

—— Wantedlyで関西の学生さんを募集されているのは、なぜですか?

関西の学生は良いんですよ。実際、日曜の夜行バスで来て、木曜の夜行バスで帰るみたいな感じで通っている人もいて。通いにせよ、引っ越すにせよ、関西からインターンをやるためには大きなハードルがあるわけで、それを乗り越えてくるくらいなので気合いが入っている人が多いんですよね。それに、関西って優秀な学生さんもいっぱいいるのに、東京ほどスタートアップがあるわけじゃないので、需給バランスが歪なのでチャンスだなと思っています。

—— 今後、人事において改善したいことはありますか?

社員はみんなエキスパートで、社会経験のある人ばかりなので、社員の成長は社員まかせになっている部分があるので、そこをもう少し改善したいなというのはありますね。今までインターンで仕組みとしてやってきたようなことを、社員の成長にレバレッジをかけられるような仕組みとして、社員用にも整備していきたいなと思っています。

今をときめくスタートアップに興味を持つ学生は多く、インターンを採用するのは比較的に容易なのかもしれない。だが、正社員に比べて人件費を抑えられるとはいえ、貴重なメンバーとして戦力になるまで育て上げるには、時間や労力といった別のコストが必要となってくる。Rettyでは「Retty Business School」というオリジナルの制度を整えることで、その辺りのバランスがうまくコントロールされているようだ。殊にスタートアップにとって、インターンの頃から単なる雑用係としてではなく、正式なメンバーとして学生を迎え入れることは、右も左もわからない新卒を採用するよりも、よほど理に適っているのかもしれません。

(野本纏花)