Windows OSのデフォルトブラウザというのは非常に大きな強みで、Microsoftが長らくIEでこの分野の盟主に君臨してきた理由でもある。かつて欧州委員会の独占禁止法裁定により、Webブラウザを標準で選択していない「Windows N」という特殊なバージョンを欧州に投入せざるを得なくなったほど、その影響力は大きかった。
だが現状において、世界のインターネットユーザーの半数以上はモバイルへとシフトしつつあるといわれ、スマートフォンのOSであるAndroidやiOSでデフォルトブラウザの地位にある「Chrome」や「Safari」が大きなシェアを獲得している。
加えて、デスクトップ市場においてもWebブラウザの盟主は既にChromeへと移って久しく、Windows 10のデフォルトブラウザであるはずのEdgeはIEの水準さえ下回っている。Edgeが利用できる唯一のOSであるWindows 10本来のシェアと比較しても低く、Edgeの戦略は現状においてほぼ失敗といってよさそうだ。
2018年4月には米ZDNetのエド・ボット氏が、米国政府の運営するサイト情報をまとめたDigital Analytics Program(DAP)の分析データを使い、同国内外を含むインターネット経由での生のアクセス情報から、Edgeの利用動向を分析した記事を掲載している。
同記事では、2017年第2四半期と2018年第1四半期の90日分のデータ比較で、Windows 10からのアクセスがどのWebブラウザから行われたのかをまとめているが、Chromeが56%程度で安定しており、EdgeとFirefoxが微減傾向であるにもかかわらず、なぜかIEだけが3%増加している。
この傾向は奇妙だが、実はWindows 10に移行したユーザーがデフォルトブラウザであるEdgeを使わず、わざわざIEを起動しているケースが少なからずあるようで、ボット氏は「企業ユーザーの間にWindows 10が浸透しつつあるため」と分析している。つまり、Windows 7からWindows 10への移行が本格的に進むことで、逆にIEのシェアを増やしてしまったという皮肉な状況が生まれたのだ。
ボット氏は「80%のWindows 10ユーザーが最初に行うのは、デフォルトブラウザからEdgeを外すこと」と説明しており、最新の環境を求めるユーザーはChromeへ、企業などレガシーコンテンツにアクセスするユーザーはIEへ流れているという。
またMicrosoft最大の誤算として「EdgeをWindows 10専用のブラウザにしたこと」を挙げており、結果として最大勢力だったWindows 7ユーザーがWindows 10へと移行した際、逆にEdgeを選択することを妨げている、と考察している(ちなみにAndroid/iOS版のEdgeはある)。
Edgeのユーザーが少ないということは、IE向けに作られたWebアプリケーションの検証・移行も進まず、使いにくいままの状態でEdgeへの対応が放置されるという悪循環を生み出す。筆者もつい最近、Gmailの表示がEdgeに最適化されていない問題に気付いたことがあった。
Edgeが今置かれている状況は、決していいとはいえず、Microsoftの今後の対策が気になるところだ。
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