◆プーと大人になった僕 鑑賞◆
評価/オススメ:★★★☆
文月的採点(/50点)
この作品ジャンルは?:ファンタジー オススメしたい人は?:すべての「大人」 印象を一言で?:「物語」とは大人にこそ必要なもの グロテスクですか?:そうした描写はありません
◆synopsis◆
少年クリストファー・ロビンが、“100エーカーの森”に住む親友のくまのプーや仲間たちと別れてから長い年月が経った── 大人になったクリストファー・ロビンは、妻のイヴリンと娘のマデリンと共にロンドンで暮らし、 仕事中心の忙しい毎日を送っていた。 ある日クリスファー・ロビンは、家族と実家で過ごす予定にしていた週末に、仕事を任されてしまう。 会社から託された難題と家族の問題に悩むクリストファー・ロビン。 そんな折、彼の前にかつての親友プーが現れる。 プーに「森の仲間たちが見つからない、一緒に探してほしいんだ」と頼まれたクリスファー・ロビンは、子供の頃プーたちと過ごした“100エーカーの森”へ。 何一つ変わらないプーやピグレット、ティガー、イーヨー、カンガとルーの親子。 仲間たちとの再会に喜びと懐かしい日々を感じながらも、仕事に戻らなければならないことを思い出す。 「仕事って、ぼくの赤い風船より大事なの?」と、悲しむプーたち。 急いでロンドンに戻ったクリストファー・ロビンは、森に会議の重要な書類を忘れてしまう……。 一方、クリストファー・ロビンの忘れものに気づいたプーと仲間たちは、マデリンの助けを借り、親友のため、初めて“100エーカーの森”を飛び出し、ロンドンへと向かう。 クリストファー・ロビンが忘れてしまった、本当に「大切なモノ」を届けるために── ※公式HPより◆comment◆
2018/9/14 本日から公開の作品。
わたし、4月頃に本作の情報が出てから、ずっーーーーーと待っていました。
予告編ですでに、数回涙を流している文月です。
わたし、何故かオープニングの導入エピソードですでにハンカチを濡らしてしまいました・・・・・
緩いなぁ。
というより、それだけ
「プー」のいる風景が純真すぎる
ということなんだなと。
つまり、わたしのいる世界とは全くの異世界がそこにあって、
きっとかつては自分もそこにいたんだという、寂しさを感じたんだと思う。
純真alwaysな世界。
★ちなみに公式HPではプーさんの成り立ちやディズニー作品の情報が見られます。
この作品は「大人になった僕」たちにこそ、物語が必要なんだと改めて教えてくれるのです。
特に新社会人、仕事で自分を縛ってしまっている人、そんな人に観てもらいたい作品です。
本作ではふたつのカタルシスを体験できます。
ひとつは「社会人」になってしまった自分自身の殻を破って、あの頃へ戻ることによるもの。
もうひとつは「本当に大切なもの」を守るのであれば、それに真正面から向き合えばいい、というもの。
作品をすべて鑑賞した後に、このふたつの思いで胸がいっぱいになると思います。
大人になる、ということはファンタジーなんて作り物だと思い込むことではないのですがね。
僕達って、いつから変わってしまったんでしょうか?
生きていく上で誰もが通る「通過儀礼」
本作ではそれを学校へ入ることとして象徴させています。
つまり、家族以外の「社会」との出会い。
大人への第一歩。
保育園も幼稚園も学校も、全ては「社会」というものに慣れていくためのシステムなんだ。
僕たちは社会で生きなければいけません。
そこには、自分よりも長く生きている大人がいて、
やりたいことを我慢する必要があって、
他人と違うことを良しとしない空気があって、
責任、義務、と言う名の鎖を自分から身体に巻き付けて、
不公平で、不条理で、夢とは銀行口座の残高の数字に置き換えられていって、
「何かをしていなければ」「自ら進んで苦労を背負わなければ」
不適格だと思い込んでしまう。
誰もがそうだから、なんて、一体誰が決めたことなのか。
そう、プーと仲間たちは
「自分であること」のどこがいけないの?
と、純真無垢な真理を僕達に問いかけてくるのです。
ユアン演じるクリストファー・ロビンが本当にステレオタイプな「大人」で自分を縛り付けている姿を観ていて、わたしは心が痛かった。
過剰すぎるほどに眉間に皺を寄せて、ぶっきらぼうで、どうしよう、どうしよう、わたしは一生懸命家族のために働いているんだ、なんでそれを理解しない。
こう言っている姿。
おそらく物語の前半は彼に好感を持てる人間は少ないはず。
物語はクリストファーが上司にプライベートを潰してまで部門整理のための施策を至急考えるように指示されたところから変わっていきます。
※この上司を演じているのが、わたしの中では永遠に「マイクロソフト・ホームズ」であるマーク・ゲイティス。残念ながらCVは木村靖司さんではなかったのですが、脳内変換しちゃうわたしは立派な「SHERLOCK」キアンw
(この場合シャーロキアン、ではありません)
いつ、「確率の問題だ、弟よ」と言い出すのかハラハラしてました(笑)
プーは、クリストファーと別れてから30年近く経過しているにもかかわらず、クリストファーがいつ戻ってくるのかを楽しみに「森のドア」を眺めているのです。
彼がいなくなって寂しいけど、今日は今日という時間が流れる。
楽しい仲間もいるし、何かあったら、きっとクリストファーが戻って助けてくれる。
そう信じて疑わない姿。ドアを眺める姿。
それだけで、涙が!!!!
ある日、いつもと森の様子が変わってしまったことに驚いたプー。
奇しくも愛娘のマデリンによってプーと自分との繋がりを思い出しかけたクリストファー。
その偶然から「森のドア」は再び開かれ、ふたりは再会するのです。
(予告編へと繋がる)
ずーーーーっと胸が痛いのは、「社会人」になったクリストファーが、プーにすら、心を許さないところをこれでもかと見せられるからなんです。
ずっと会いたかった友達に再会したプーの喜びを素直に受け入れられないクリストファー。
しかし、プーの言葉が、硬く閉ざされたクリストファーの心を確実に崩していく。
って、クリストファーのツンデレ野郎!!!!
プーを大人の論理で傷つけてしまったとき、自分の過ちに気が付き、
「社会人・大人」から「クリストファー・ロビン」に戻るあの瞬間。
わたしは彼がとても幸運だったと感じます。
彼は「忘れ物(≒自分)を取りにいくために」あの森に呼ばれたんですから。
彼には還る場所があり、生涯の友達がいたんです。
作品を通して、わたしはクリストファーが再会したのがタイラー・ダーデンでなく、プーであってよかったと安堵しました。
「ファイト・クラブ」のタイラー・ダーデン。
わたしのオールタイムベストの映画です。
なぜ話題にしたかというと、タイラー・ダーデンとプーは表裏一体だと感じてしまい、その思いが頭から離れないのです。
それはさておき、この物語が森に還ってよかったね、で終わらなかったのもドキドキでした。
実は善意の手違い(笑)で、クリストファーが頭を悩ませていた仕事で使う重要な書類(これはあくまでもサラリーマンとして重要な書類)を森に置いてきてしまったことが解ります。
プーは仲間とともにその書類を届けるために、ロンドンに向かうのです。
電車で(笑)
ここからの冒険が一番楽しいし、気がつけばプーを応援している「自分を発見」するでしょう。
(というより、愛娘のマデリンのキュートさと頑張りが大きいのですが)
ラストは思った通りの着地点に収まるのですが、やはりラストカットは美しかった。
クリストファーとプー。
もっと早く再開できていたら、クリストファーもあんな嫌な大人にならずに済んだかもしれないのにね。
それは、わたしたちも同様です。
あなたは、クリストファーになっていませんか?
もしくは、タイラー・ダーデンと名乗る人物に話しかけれませんでしたか?
冒頭に戻りますが、
物語の前半で「本当の自分自身」を見つめ直して
物語の後半で「だからこそ守るべきものが何であるのか?」をもう一度考え直してみるきっかけをプーと仲間たちは教えてくれます。
何もしない。
何もしない。
何もしない。
それが次のいいことに繋がるから。
2018年映画鑑賞 237本目
0 件のコメント:
コメントを投稿