一般に土木構造物は建築に比べて造形的な華やかさや多様性が乏しいが、橋は大いなる例外だ。絵画の題材として輝かしい歴史があり、古今東西の画家を魅了してきた。日本美術を代表する巨匠である浮世絵師の葛飾北斎もその一人だ。
すみだ北斎美術館(東京都墨田区)が11月4日まで開催している「北斎の橋 すみだの橋」は、北斎やその弟子が橋を描いた浮世絵をまとめて見られるユニークな企画展だ。
北斎は風景、人物、花鳥から妖怪に至るまで題材の幅広さで知られるが、橋は好きな題材の1つではなかったかと思われる。富士山を描いた有名なシリーズ「富嶽三十六景」には「深川万年橋下」のように橋の方が主役の作品もあるうえ、橋の絵ばかりを集めた「諸国名橋奇覧」も残しているからだ。このシリーズには伝説上の橋まで描いた。「名所絵」と呼ばれ、実在する名所を描くのが基本だった浮世絵の風景画のなかでは破格の作品といえる。
墨田区が橋の多い区であることにちなみ、明治以降にできた区内の橋の資料も展示され、日本の橋の多彩さを概観できる展覧会ともなっている。
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