去年も早川書房は「海外SFセール」をやっていたのだけれども、今年もやりはじめたようなので個人的おすすめを紹介します。今回も大体半額になっている! お得! しかもシリーズ物が多くて素晴らしい。とくにセール対象が代わり映えしないようなら前回の記事を貼っつけて終わりにすりゃあいいかなぐらいに思っていたのだけれども、今年に入ってからの新刊も大量に入っているから一から書き直すぞー!
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前回セール対象だったやつは今回もおおむね&僕がオススメしたやつは前回の記事を読んでね。書き手のバックボーンとして、現在雑誌のSFマガジンで海外SFレビューを担当しているので、この3年ぐらいに出た海外SF新刊は全部読んでます。
ざっと紹介する──近刊の話題作
早川書房作品が一望できる『ハヤカワ文庫SF総解説2000』とかディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とか傑作『火星の人』とかは前回紹介したのでおいておくとして、まずこの2017年〜2018年に出た近刊を中心に紹介していこう。まずなんといってもアダム・ロバーツ『ジャック・グラス伝 宇宙的殺人者』!
ジャック・グラス伝 宇宙的殺人者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 作者: アダムロバーツ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/08/31
- メディア: Kindle版
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- 作者: エランマスタイ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: Kindle版
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人類が無尽蔵のエネルギィを手に入れて裕福に暮らしている”もう一つの2016年”で、人類初の時間航行へと挑み歴史を変えてしまい、世界を我々のよく知る”この世界”、主人公視点だと”ディストピア”に変えてしまった一人の男の物語。勝手にこっちをディストピア認定すんじゃねえぞと憤りを感じるが、主人公もまたこの世界で暮らすうちに、ディストピアであったとしても愛着を覚えはじめ、自分はどのような人生を、世界を選ぶべきなのかをもう一度考え直していくことになる……。
- 作者: カートヴォネガット,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/04/25
- メディア: Kindle版
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- 作者: クリストファープリースト
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/10/31
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本書はそんな無数の人々の物語を取り上げながら、人が痕跡を残さずに消失する新兵器によって、状況的に明らかに死んでいる。しかし、生きていないともいいきれない──そんな"はっきりしない"、"可能性に揺らぎのある世界"を描き続けていく傑作である。プリースト作品は『双生児』、『無幻諸島から』もセールになっているのでこの機会に揃えてしまうのもいいかも。傑作しか書けねえのかよみたいな作家なので。
- 作者: ニールスティーヴンスン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/06/30
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人類は地球近郊に環境循環型の宇宙船を建造し、5千年から1万年後、地球に帰還できる日を待つことになる。なんといっても凄えのはそうした状況が遠い未来ではなく近未来を舞台に、現実的な技術・科学描写と共に語られていくことで、人間が宇宙で1万年も暮らすなんて絶対に無理! と誰もが思う中、エンジニアと政治家が突き進んでいく! 舞台が宇宙に移ってから人間が政治的対立から逃れられぬ様、宇宙で起こるはじめての紛争、戦争──とどこを切り取っても興奮が巻き起こる傑作である。
シリーズ物
- 作者: フランクボルシュ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/07/21
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- 作者: ジョージ・R・R・マーティン,岡部宏之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
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- 作者: コニーウィリス
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/22
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- 作者: コニーウィリス,大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/14
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- 作者: ロバ?ト・ブートナー
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/11/29
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おわりに
あんまりオススメしすぎてもしょうがないのでこんなところで……と思ったけど忘れていたのがあって、『ネクサス』は他者の脳と通信をして強烈な一体感をもたらす「ネクサス」など無数の技術革新が生まれた世界をリアルに描き出している素晴らしい近未来SFだし、イーガンの新刊『シルトの梯子』も近年のイーガン作品の中では読みやすい方で人類と新しい時空との対決を描き出している傑作である。いや、こうしてふりかえるとこの一年でほんとにおもしろい海外SFがたくさん出たなあ。
- 作者: グレッグイーガン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/12/28
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