住宅地に押し寄せる太陽光パネル。気温の上昇や反射光、雨水排水対策の不備に苦しめられる住民も(北杜市高根町)

2017年4月施行の「改正FIT(固定価格買い取り制度)法」に基づいて経済産業省が定めた太陽光発電事業者向けの「事業計画策定ガイドライン」には、次のような一文がある。

「(発電事業者は)事業計画作成の初期段階から地域住民と適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施するように努めること」

また、改正FIT法施行規則では、地方自治体の条例を含む関係法令の順守義務が定められている。つまり、地域住民との共生を図る努力義務とともに、電気事業法や森林法などの関係法令、条例を順守することが発電事業を運営するうえで必要不可欠だ。関係法令を守らない場合には、FIT認定の取り消しによって発電事業の継続が困難になる可能性もある。

造林の届け出で伐採 裏で発電所建設を準備

だが、住民とのコミュニケーションを軽視し、法律や条例を踏みにじって開発を進めようとする事業者は後を絶たない。その実態を長野県や山梨県で取材した。

今年8月、長野県富士見町の住民から経済産業省新エネルギー課宛てに「不適切案件の報告」と題したメールが送付された。このメールには「以下に報告する悪質な案件は条例違反であり、取り消しを求める」と記載され、現場の写真が添付されている。

悪質だと名指しされたのは、「富士見第一有限責任組合」「富士見第二有限責任組合」など有限責任組合30団体。代表者の依田(よだ)武氏は太陽光発電所運営会社「ワールドブレインズ」(山梨県甲府市)、「SIソーラー」(東京都中央区)などで代表取締役を務め、山梨県などで太陽光発電事業を幅広く展開している人物だ。富士見町で事業を進めるために、依田氏は発電所計画ごとに30団体を設立した。

依田氏の事業が悪質な事例として通報されたことには理由がある。森林法の規定を守ろうとしなかったのだ。

住民とのトラブルを招いた開発長野県富士見町造林の名目で皆伐された境小学校前の森林
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