プーチンが「領土棚上げ」を口走った深刻事情

「年内平和条約」の提案は何を意味するのか

9月10日に会談した安倍晋三首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(写真:Valery Sharifulin/TASS Host Photo Agency/Pool via REUTERS)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月12日、ウラジオストクで開催中の「東方経済フォーラム」で突然、爆弾発言をした。

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「いま思いついた。平和条約を前提条件なしで結ぼう。今ここでとはいわない。今年末までに結ぼうではないか」と、文字通りの"思いつき発言"をしたのだ。

これは「領土問題を棚上げして平和条約を結ぼう」というもの。日本側としては到底応じることはできない。このような提案は、プーチン大統領が誠意をもって領土問題に取り組んでいるか疑問を抱かせるものといえる。一体、その背景には何があるのだろうか。

「領土問題は一朝一夕には解決できない」

この爆弾発言に先立つ9月10日夜、安倍晋三首相とプーチン大統領は正式に会談を行っている。両首脳は、北方領土での「共同経済活動」の実現に向けた「ロードマップ(行程表)」を取りまとめた。

肝心の領土問題については、安倍首相は、「(北方領土)4島の未来像を描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」と進展があった印象をにじませる発言。それに対し、プーチン大統領は「長年議論が続いている領土問題を一朝一夕には解決できないことはわかっている」と前置きの上、「両国国民に受け入れ可能な解決方法を探すという意味で共同経済活動に着手した」と、ロシアの立場を語っていた。

しかし、現実にはなんら北方領土問題は進展していない。この際、あらためて北方領土問題の現状と課題を見ておこう。

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  • NO NAME54efd7cf4850
    安倍政権は絶対口にしないが、日米地位協定がある限りロシアが北方領土を返還することは絶対にない。日米地位協定は沖縄だけの問題じゃない。

    日米地位協定には、日本の領内のアメリカが望む場所に自由に米軍基地を設置できるという取り決めがあり、日本には拒否権が無い。米軍犯罪者も日本法ではなくアメリカ法で裁かれる。同じ敗戦国でもイタリアは米軍基地内での捜査権があり、米軍犯罪者もイタリア法で裁かれる。

    沖縄の基地だけではなく、日本の全ての空港、港には、米軍の戦闘機、軍艦が、事前予告なしにいつでも着陸、接岸ができる。北方四島を返還すれば、そこは自動的に米軍基地になる。アメリカが北方領土に基地を設置すると言えば日本は拒否できない。それを熟知しているロシアが返還することは絶対にない。

    安倍は事実を伏せて北方領土を政治利用して国内支持率を上げようと必死だが、国際舞台ではそんなインチキは絶対に通用しない。
    up140
    down23
    2018/9/13 21:11
  • NO NAME02f9cd127797
    島を日本に返したら、日米安全保障条約に基づいて米軍基地が作られ、ロシアにとっての脅威になるのだから、安保条約があるかぎり北方領土は1ミリも帰ってくるわけがありません。
    いい加減に目を覚まして現実を直視しましょう。
    up77
    down14
    2018/9/13 20:22
  • NO NAME419aa359a18b
    出来ないことわかっててアベが馬鹿にされたに過ぎんですわなぁ

    勿論、アベが国内世論操作のために都合のいい結果を持って帰りたかったことなんぞもとKGBのプーちゃんは御存じですともさ。

    「リップサービスして欲しいんならもっと貢物もってこい、このキャッシングマシーンが」ってことですよ。

    あ~あ、日本の威信がまた落っこちた……orz
    up108
    down46
    2018/9/13 17:13
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