9月13日、モバイル業界が揺れた。新型iPhoneの製品名表記で。
(※表記が揺れる:ある文字表記について、2種類以上の書き方をされることで表記にばらつきが生じること)
9月13日未明にAppleが発表した、新型iPhone 3機種。その名は「iPhone テン・エス、テン・エス・マックス、XR(テン・アール)」なのだが、この「テン・エス」が「XS」なのか、「Xs」なのかで業界関係者の多くが混乱した。
Apple Japan広報に13日午後3時ごろに確認したところ、「大文字(XS)で間違いない」との答えを得たため、以後「XS」と表記するが、なぜ情報が錯綜(さくそう)したのか。経緯を追っていこう。
まず、イベント中にスライドに映された「iPhone XS」の「S」表記は、「iPhone 4s」や「iPhone 5s」と同じく、角が丸い四角形で囲ったものだった。ともに映された「iPhone XR」の「R」も同じく四角形で囲われていた。
四角の中に大文字の「R」がある様子を見れば、「S」についても大文字と考えるのが自然だ(後述するが歴史を知っているとまた別)。しかし、発表終了直後に同社公式サイトに掲載されたプレスリリースのタイトルは、「iPhone史上で最高かつ最大のディスプレイを搭載したiPhone XsとiPhone Xs Max」だった。リリース内の表記も「Xs」。
プレスリリースの掲載とともに、公式サイトには製品情報ページも登場。こちらの表記は一貫して「XS」。プレスリリースと製品情報ページ、どちらが正しいのか――。ITmedia MobileやNEWS編集部で速報を書いていた記者たちは、錯綜する製品名に混乱した。
現地で取材をしていたライターの石野純也氏も、広報から「Xsです」と連絡を受けた後に再度「XSが正しい」と連絡を受けたとTwitterで報告するなど、広報レベルでも混乱していた様子が見受けられる。
広報ですら混乱した理由を察するに、そもそもAppleが「四角で囲われたエス」を大文字から小文字に改めたという歴史がある。
初めて「四角で囲われたエス」をiPhoneの製品名に採用したのは、2009年に発売した「iPhone 3GS」だった。この時は表記の通り大文字。次にこれを採用したのが、2011年に発売した「iPhone 4S」。発売当時は大文字としていたのだが、2013年に発表した「iPhone 5s」(小文字、やはり四角に囲われている)に合わせ、iPhone 4Sも「4s」と改められた。この変更がユーザーへ十分に周知されず、「4S」なのか「4s」なのか混乱した時期があった。以降、「四角で囲われたエス」は全て小文字での表記が続いていた。
この流れをくみ、「Xs」と書くだろうと考えてしまっても不思議ではない。出版やメディア業界によくある失敗として、「大きな見出しほど間違いがないと思い込んでしまい、ミスに気付かない」というあるあるネタがある。Appleも、今回このパターンに陥ってしまったのかもしれない。
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