突然の平和条約提案、領土交渉乱す「くせ球」
2018年09月13日 09時23分 読売新聞
東方経済フォーラムの全体会合に臨む(左から)安倍首相、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領。この場で平和条約締結の提案があった(12日午後、ロシア・ウラジオストクで)=吉岡毅撮影
【ウラジオストク(ロシア極東)=田島大志】ロシアのプーチン大統領が12日、前提条件なしでの日露平和条約締結を突然提案したことに、日本政府内では困惑が広がっている。北方4島の帰属問題が未解決のまま平和条約を締結すれば、領土問題が置き去りになりかねないため、外交ルートを通じて発言の真意を確認する構えだ。
領土問題を巡る日本政府の方針は、4島の帰属問題を解決し、平和条約を結ぶというものだ。菅官房長官は12日の記者会見で、この方針に「全く変わりはない」と強調した。2001年にプーチン氏と森首相(当時)が署名したイルクーツク声明にも「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結」と盛り込まれている。
外務省関係者は今回のプーチン氏の提案について、「従来の立場とは異なり、領土問題解決へのハードルをあげた。交渉を乱す『くせ球』だ」と警戒する。米露関係の緊張緩和が進まないことを背景に、プーチン氏が領土返還後の米軍駐留を警戒し、領土問題解決に「及び腰になっている」(日露関係筋)との見方もある。