ミスティアのクーデターまでの六日間 その十四 ~不死者達の宴~
古代龍から飛び降りた私たちは城門めがけて走り出した。
「魔法をかけます”スピードスター”」
アルファが呪文を唱えると私たちの身体が光り身体が軽くなり、まるで足に羽が生えたように軽快に走れるようになった。
「ありがとうアルファ」
私がお礼を言うとアルファはニコリと笑い私の前を走り出す。サグルの横につくと「あなたは後ろに下がりなさい」と肩を叩く。
「なぜだ?」
「あなたは人を殺せない。今あなたが前後不覚になったら私たちが全滅します。だからミスティアだけを守るようにしなさい」
アルファが語気を強めてサグルをたしなめる。少し言い方が強い気もするけどサグルを邪骨の兵にさせるわけにはいかないしね。
「私もその方が言いと思う」
「……わかった。なら俺はミスティアを命がけで守ろう」
「ありがとう、でもサグルを助けるのは私だから」
と、あまりしゃべってる暇はない。城門の前に大量の敵兵が待機していた。
「兵の数は1000程しかいません、どうやら私達の作戦は成功したようです」
”ビシュ!ビシュ!”
弓が私達をめがけ飛んで来る。無数の弓が上空に見えるとアルファはスクロールを取りだし魔法を使う。氷の魔法が吹雪のように敵を襲う。城門から周辺が凍りつきその周りにいた兵士達も氷の彫像のように固まる。そして上空の弓も凍りつき、その重みでドスドスッと落ち地面に突き刺さる。
1000人いる兵を城門を挟んで二分した。残りは800人程、左の敵を私達が受け持ち、右の敵をウィルソン達レジスタンスに任せた。
「アルファは獣化しないのか?」
サグルは同じ獣人なら獣化した方が良いのではと言うが
アルファは「抑制剤を使ってますので無理ですね、ですが……」と言うとアルファはバッグから黒曜石を取りだし上に投げる。パチンと指を鳴らすと黒曜石は砕け破片が敵を襲う。
細かく砕けた破片は鎧の隙間から入りこんだ。
「うがぁぁ!」「見えねぇ!」「助けてくれぇ!」
盾を持った敵防御兵から阿鼻叫喚の叫びが響き渡る。叫ぶ兵達は辺り構わず剣を振りだし味方の兵を切りつける。
「私は獣化しなくてもそれなりに強いです」
アルファはどや顔でサグルを挑発するようにニヤケル。私は挑発するなとアルファの背中を叩く。
「何をしたの?」
「黒曜石炸裂させ破片を操り目を潰しました。あとは弓兵と槍兵だけです」
なら次は私の番だ、アルファやサグル達にだけ手を汚させるわけにはいかない。仲間なのだから等しく汚れよう。
私は30発の
その魔法は青い炎の竜巻となり敵を討つ”
敵は炎に包まれ一瞬で燃え尽き更に城門をも破壊した。
「アルファ、サグル、レジスタンスを助けにいくわよ」
「はい!」「おう!」
私達は今だ戦っているレジスタンスの応援へと向かった。ミリアスとサラスティも戦っており状況は優勢だった。
「ミリアスおまたせ」
「早いな、こちらはすぐに終わる休んでていいぞ」
とは言え生意気なミリアスに膝カックンを食らわせて私も戦闘に加わった。
「ウイニード、ちゃんと私に捕まってなさいよ」
「ギャ!」
パワーシューズとスピードスターの効果で私の動きはまるで風だ。さらに
ほどなくして残りの敵兵はすべて殲滅された。
「速さは力、力はパワーつまり最強だね」
サグルが意味不明なことを言って勝利を祝うように私に拳を向ける。私は拳をサグルの拳に当てると、この作戦の成功を確信した。
私達が攻めいったことはすでに伝令が走っているからばれているだろう。だけどこちらは正門から反対側だ私達が王城に入る方が早い。
壊れた城門からアルファは鑑定魔法で城を見ている。
「ザコトルスはいる?」
「ええ大丈夫です、ちゃんといます。サグルは助かりますよ」
良かった、いなかったら目も当てられなかった。
「ウィルソンさん、こちらの被害は何人でました?」
「0です、
みんな、勝利に高揚して士気も高い。私はマイクを使い勝ちどきをあげる。そのまま私達は勢いに身を任せ城門をくぐった。
私とアルファが先頭で次のサグル、ミリアス、サラスティそしてレジスタンスの順で突撃した。
城下町はまるで人がいないかのように静かだった。上り坂を先まで見ても動くものは風に舞い散る枯れ葉だけだった。
「どう言うこと?兵どころか町人、いいえ生き物の気配すら感じない」
「確かにこれはおかしいですね。私の鑑定魔法魔法でも人っ子一人いないです」
「ぎゃぁぁぁ!」
後方のレジスタンスの集団から悲鳴が上がる。私達は立ち止まり後ろを見ると大量の町民がワラワラとあふれだした。三々五々脇道から次々と現れてはレジスタンス達に飛びかかる。武器などは持っておらず、レジスタンスに素手でつかみかかる。
さすがに暴徒と化した町民を攻撃しないで鎮圧するのは無理と判断し、レジスタンス達は暴徒を剣や槍でさすが傷をものともせずに町民はレジスタンス達に掴みかかると鎧の隙間から身体に噛みつくのだ。
私は助けに向かおうとするが押す暴徒と押されるレジスタンスが邪魔をして助けに向かうことができない。
私がまごまごしてる間に暴徒は次々とレジスタンス達に噛みついていく。血しぶきが上がり血溜まりを作り倒れる。血だまりに倒れたレジスタンスはムクリと立ち上がると他のレジスタンスを襲い出す。
どういうこと、傷で錯乱したのだろうか?
「まずいです、あれはゾンビです」
アルファが噛みつく町民を見てそう言う。
「ゾンビって不死の魔物? あれって想像上の魔物じゃないの?」
「理論上は存在します。現に目の前にいますしね」
ゾンビはどんな攻撃にも死なず噛まれた者もゾンビと化し、新たにゾンビとなった者もまた人を襲いゾンビを増やす。そしてゾンビは殺す方法はないと言われている。
頭を切り離しても腕や足を切り離しても死なない、しばらくすればまた一つになり人を襲う。また肉が腐るのを待っても
つまりゾンビを倒しても更に強い
「なんでゾンビがこんな町中にいるのよ」
すでにレジスタンスは我先へと逃げ、兵としての体をなしていない。
私もサグルに抱えられその場から逃げるように屋根の上へと上がった。サグルは私達を屋根の上にあげると。他のレジスタンス達を救出に向かった。
サグルは次々とレジスタンスを抱えると屋根の上へと救助する。
「これはどうしようもないな」
ミリアスがゾンビの群れを見て半ば諦めたように言う。
「アルファ、ゾンビを倒す方法はないの?」
「古文書ではゾンビは神職の者が倒せると言います」
「なら、サラスティなら倒せるんじゃない?」
「いいえ、今の神職では倒せないでしょう」
「どう言うこと」
「通常ゾンビを浄化できるのは高位の神職に着くものと言われてますが、真奈美様の話では今の神は
「今の神様って
「はい、不死王ヴァンパイアです」
ヴァンパイアって魔族じゃないのそんなのがこの世界の神だったの……。
「でも、なぜ王都がゾンビだらけになってるの」
「ザコトルスが何かしたと考えるのが自然でしょうね」
「私を捕まえるために民をゾンビにしたって言うの?」
「でもそれだとミスティアもゾンビになってしまうんじゃないか?」
ミリアスがザコトルスの行動が矛盾していると言う。確かに私を手に入れてもゾンビじゃ意味がない馬鹿げている行動だ。
「ゾンビをコントロールできるとしたら?」
「そんなことできるの?」
「
「
アルファが言うには
ただしその存在は真奈美ですら見たことがないと言うから実在はしないのかもしれない。
「アルファは鑑定魔法でそいつを見ることはできないの?」
「鑑定魔法はアンデットを見ることができません」
それでさっき囲まれたわけか。
「これ、真奈美が何かした訳じゃないわよね?」
「真奈美様もアンデットは作ったことはないです。でもヴァンパイアがいる魔族ならあるいは……」
魔族、魔王であるガリウスなら魔族を動かすこともできる。そしてガリウスの力ならアンデットだって作れるかもしれない。
でも、なぜガリウスがこんなことするの? いいえ、ガリウスがこんなことするわけがない。でも大和神国を出て最初の日、私を襲ったのは魔族だった。
ガリウスがやらせた? それは絶対にない、私の心を救ってくれたのは
……でも、あのリマイラはと言う戦士は
考えれば考えるほどガリウスが私を
疎まれて当然だ、私はそれだけのことをガリウスにしたのだから。
生き残ったレジスタンスの救出が終わったサグルが帰ってきて私を見ると私の頬に指を当てる。
「なんで泣いているんだ?」
いつのまにか私は涙を流していた。弱いな私は、ガリウスに嫌われるのはすごく怖い。
「なんでも……。ううん、ガリウスがね私を疎んでこんなことをしてるんじゃないかと思って」
「ミスティアはバカだな。ガリウスはミスティアを助けるって言ったんだろ」
「うん、でもあれはガリウスだったのか」
「信じろよ、ミスティアは猪突猛進のバカなんだから悩んでても仕方ないだろ。取り合えず会って聞けば良い、それから考えろ」
「そうだね、ごめん。でも、バカはないでしょ……」
私はサグルの脇腹の毛を思いっきりねじった。
「イタタ、ひどいなミスティア励ましたのに」
「お礼よ、お陰で元気が出たわ」
「それは何よりです勇者ミスティア様」
サグルは左手を後ろに回しまるでダンスを誘うかのようにお辞儀をした。
「すみません私が余計なことを言ったから」
アルファが私が泣いたのは自分のせいだと謝る。私は自分がネガティブに考えてしまったのがいけないのだとアルファの頭をあげさせた。
「それでどうする、手づまりだぞ」
サグルがアルファに打開策を求める。
「最初のアンデットを倒せば全てのゾンビはその動きを停止します」
ゾンビは感染瘴気で動いており瘴気を感染させ、その人間の邪念を餌に瘴気を増幅させていると言う。そして感染瘴気は一人のアンデットによりコントロールされていると言う。もちろん
「ミスティアを欲しがっていると言うことはこのゾンビはコントロールされている可能性の方が高いわけか」
「そう言うことです」
「だけど最初のアンデットを倒せと言ってもどうやって探して倒せばいいんだ?」
「
アルファが言うにはゾンビはその身にある感染する瘴気で動いているのだとから、それを取り除けばゾンビは動かなくなるかもしれないと言う。でも普通の人間は
言うなればサグルの超回復が+で感染瘴気が-の関係だと言う。
「ただ探すのは無理です、鑑定魔法でも探せません」
「そうか、つまり全部のゾンビから感染瘴気を吸い取れと言うことか」
「申し訳ないですがその通りです」
「ダメよそんなの、この王都の国民すべてが敵なのよ身体が持つわけないわ」
「そうですね、やってみなければわかりません」
「そんな分の悪い賭けにサグルの命をベットできないわ」
サグルの命を救うためにサグルの命を賭けさせるなんてできるわけない。
「いや、ミスティア大丈夫だよ。俺の身体はある意味
「だけど、それじゃ……」
私がサグルを止めようとしていると家がグラッと揺れだした。ゾンビ達が私達をめがけて集まりだし家の壁にぶつかり家全体を揺らしていたのだ。
「この揺れはまずいですね、屋根の上に人が大量に乗っているせいでこの揺れが増幅されてます。このままでは家が持ちませんよ」
「話してる猶予はないな、それでどうすれば良い俺は
「この
「わかった」
サグルはアルファから奪うように籠手を取ると両手に装着した。
「ごめんなさい、サグルあなたに頼ることしかできなくて」
「ミスティア、ごめんなさいじゃないだろ。いってらっしゃいだ」
私は無言でうなずき、サグルの背中に手をあて「行ってらっしゃい」と送り出した。
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