イタリアンなのに、「つけ麺」!?
こんにちは、下関マグロです。
知り合いのライター、和田静香さんはイタリアンのお店でアルバイトをしているんだそうです。そこで、そのお店のシェフの方にまかないメシのご紹介をお願いできないかと聞いてみますと、「冷製つけ麺パスタ」はどうかとのこと。
おお、めちゃくちゃそそられるじゃないですか。
どんなつけ汁なんでしょうか。あえて、そのあたりは聞かずに、和田さんがまかないメシを食べるときにご一緒したいとお願いをしました。
というわけで、和田さんがバイトの日、中野区沼袋にある「トラットリア・ラ・パンダ・ジャッラ」さんにうかがいました。
とてもかわいらしいお店です。
左がライターの和田静香(わだ・しずか)さん、右がオーナーシェフの石川文(いしかわ・ふみ)です。石川さん、お店の名前、けっこう変わっていますね。
石川さん:看板に絵がありますが、「パンダ」というのは車の名前なんですよ。イタリアのレストランで働いていた時に、そこのオーナーのお父さんが黄色いパンダでいろいろなところへ連れて行ってくれたんです。その思い出をお店の名前にしました。
── なるほど、ジャッラは黄色いという意味なんですね。で、トラットリアはイタリア語で大衆食堂ですか?
石川さん:そうなんです、パンダという車も大衆車なんで、そのあたりの意味も込めた店名なんです。
── それでは、お店でいつも休憩時間にスタッフの皆さんが実際に食べている「まかないメシ」のご紹介をお願いできますでしょうか。
石川さん:まずはつけ汁の材料です。こちらになります。
左上から……
【つけ汁の材料(3~4人分)】
- フランボワーズビネガー:10g
- バルサミコ酢:25g
- 生ハム:10g
- トマトソース:250g
- トマト(皮ごと):100g
- パセリ(あれば):分量外
──フ、フランポワーズ……? あの……いきなり聞き慣れない材料の名前が出てきましたね。
石川さん:たしかに「フランポワーズビネガー」はあまり一般的なスーパーなどでは売っていませんね。私はネットで買っています。香りすごくがいいのでぜひ入手していただきたいですが、でも、なくても大丈夫。普通のお酢でもいいし、バルサミコ酢を35gと多めにしても大丈夫です。
── トマトソースは市販のものでもいいのでしょうか?
石川さん:はい、これは自家製ですが、スーパーで売っている缶詰や瓶詰のもので大丈夫です。ちなみに、トマトソースはトマトの水煮缶とは違うものですので、注意してくださいね。つくり方ははとても簡単なんです。この材料をミキサーにかけていきます。
石川さん:全部の材料を入れて、2分ほどまわします。
石川さん:これでつけ汁は完成です。
── あの、自宅にミキサーがない人はどうすればいいでしょうか?
石川さん:ミキサーがなければ、包丁で細かく切っても大丈夫です。でも、この際なので、持っていない人は買うといいかもしれませんね。ホームセンターで3,000円くらいからありますし、ネットでも安価なものが売ってますから。
──それにしても、これだけでつけ汁ができてしまうなんて、めちゃくちゃ簡単ですね。
石川さん:まかないは、手早くつくれることが大事ですからね。つけ汁ができたら、なにか別の器に移して、冷蔵庫で冷やしてください。この量でパスタ3人か4人分くらいですね。このつけ汁は多めに作っておけば、いろいろなものに使えますよ。たとえばゆでた野菜につけたり、お刺身とあえればカルパッチョみたいになりますし、シンプルにパンにつけてもおいしいですよ。
おいしさのためのこだわりポイント①:お皿を冷やしておくこと
石川さん:それとですね、おいしくていただくコツとして、お皿はすべて冷蔵庫で冷やしておいてください。せっかくの冷たいお料理なので、温かいお皿や常温のお皿に盛ってしまうと台無しになります。
──なるほど、たしかになかなかそこまでは我々のような素人はやらないですね。そういうちょっとしたことで、もっとお料理はおいしくなるんですね。
石川さん:ちょっとした手間ですが、お皿を冷やすのはぜひやって欲しいですね。さて、普段のスタッフのまかないメシでは、ついでに栄養バランスを考えて、野菜サラダをつくったりします。今日は2人前つくっておきましょう。これはもう、なんでもいいですよ。スーパーで売っているミックスの生野菜なんかで大丈夫です。
石川さん:ドレッシングはなるべくシンプルなものがいいですね。これはワインビネガーとオリーブオイルだけのお店のドレッシングです。クリーム系ではない、シンプルなドレッシングにしてください。青じそでもいいですよ、さっぱり系なら。
石川さん:サラダのドレッシングは食べる直前にかけてください。でないと、野菜がシナシナになっちゃいますから。そして、さきほどのソースを1人分(カレースプーンに3杯ほど)入れて、パセリをのせておきます。
石川さん:これは冷蔵庫へしまっておきましょう。この次にパスタをゆでるわけですけど、その前にすべての準備をしておきます。ここ、ポイントですね。
おいしさのためのこだわりポイント②:すべてを用意してから料理を始めること
【パスタの材料】
- フェデリーニ:70g(1人分で)
- バジル:1枚(1人分で)
- 塩:分量外
- 粉チーズ(お好みで):分量外
- オリーブオイル:分量外
石川さん:料理の途中で、あー、お醤油どこだっけとか、あれを切ってなかった……というようなことがあるとうまくいきませんよね。パスタは麺の硬さなど、とにかくタイミングが命の料理。だから、すべてを用意してから始めましょう。まずは大き目のボウルに氷をとお水を入れて、ざるを用意します。
── パスタを冷やすためのものですね。もしそのくらいの大きさのボウルがなかった場合は、普通にそうめんをつくるときのように流し台で水を流して、氷水につけてもいいでしょうか?
石川さん:もちろんそれで大丈夫ですよ。要はパスタを冷やせればいいわけですから。次に、パスタとバジルを用意します。
石川さん:パスタはフェデリーニという1.4mmのものを使います。1人分70gですね。今日はおふたりの分をゆでますので140gほどゆでます。
── スパゲティではなくフェデリーニですね。細めのパスタ。
石川さん:もちろんパスタの太さは皆さんのお好みで構いませんが、冷製つけ麺パスタにはフェデリーニが合うと思います。こうして、すべての準備を終えてから、パスタをゆでましょう。
おいしさのためのこだわりポイント③:できるだけ大きな鍋に、たくさんのお湯でゆでること
── 家庭でパスタをゆでるとき、気をつけるべきポイントってなにかありますか?
石川さん:自宅にある調理器具で可能な限りでかまいませんので、できるだけ大きな鍋を使って、たくさんのお湯で麺をゆでてください。小さい鍋だと、沸騰しているお湯にパスタを入れたときに温度が下がってしまうので、ゆで上がりが良くならないんですね。
──ゆでるためのお湯に塩は入れるんですよね、どのくらいですか?
石川さん:これはまあ、いろいろな説がありますが、私はなめてみてしょっぱいなと思う程度、海水と同じくらいですね。
── ゆで時間は?
石川さん:このフェデリーニの場合で7分です。温かいパスタの場合は5分ゆでるというのがメーカーの指定なんですけど、冷製パスタにする場合は少し余計にゆでてください。芯が残らないようによくゆでるほうがおいしくなります。
── やはり、ゆでる際には勘ではなくタイマーを使ったほうがいいのでしょうか?
石川さん:これはもう、絶対にタイマーを見てはかって欲しいですね。スマートフォンに入っているアプリのタイマーとかを使って、ゆで時間はできるだけ正確にはかってください。
──パスタをゆでる際の火加減って、どのくらいでしょうか?
石川さん:中火から強火ですね。パスタが鍋の中で対流して、踊るようなる火加減にしてください。
石川さん:ゆで上がりましたね。まずは、ざるにあげていきます。
手早く氷水につけています。まさにつけ麺の麺をシメているような感じですね。
石川さん:麺を冷やしている間に、お皿にオリーブオイルをかけます。麺がくっつくのを防ぐためです。
そして、麺のしまり具合などをチェック。
ここで、ものすごく丁寧に水を切ります。ああ、プロはこういうところをきっちりやるんですね。なんども水を切ってます。
石川さん:そうですね、ここはきちんとやったほうがいいですね。水が切れたら、へぎそばのようにひと口大に盛りつけていきます。
石川さん:麺を盛りつけたら、バジルをちぎってのせていきます。ちぎったほうが香りがでますからね。
石川さん:そして仕上げに粉チーズをかけます。これで出来上がりです。
完成です!
──おお、いい感じのまかないメシですね。それじゃ、まずは和田さんから食べてみましょうか。
和田さん:これ、どうやって食べるんですか?
──あ、和田さんも初めてなんですね。
石川さん:自由に、お好きなように食べてください(笑)。つけ汁に麺とサラダの野菜を入れてみてもいいですよ。
和田さん:いっただきまーす!
和田さん:冷たいミートソースみたい!
石川さん:ミートじゃないでしょ(笑)。ソースの中の肉は、生ハムぐらいしか入ってないヘルシーつけ麺です。
和田さん:つけ汁にお酢が入っているからか、後味はスッキリです。夏バテしているときにいいかもしれませんね。
──どれどれ、僕もいただいてみましょうか……あー、和田さんがミートソースみたいだと言っていたのがわかりますね。満足感がハンパないですよ。見た目以上にボリューミーですね。
石川さん:つけ汁にタバスコをいれてもいいんですよ。自家製タバスコをどうぞ。
和田さん:こってりだけど、さっぱりですね。これはクセになる味!
──ああ、タバスコを入れると、なんだか「つけナポリタン」みたいになりますね。あっという間に完食してしまいました。これ、簡単なので、ぜひ家でもつくりたいです。男性が彼女や奥様につくっても喜ばれるんじゃないですか?
石川さん:そうですね、冷やした白ワインとか添えると、喜ばれると思いますよ!
──これ、お店では出していないのですか?
石川さん:つけ麺ではなく「冷製パスタ」として出しています。ソースをそのままかけて。
ごちそうさまでした!
それにしても、こんなにおいしいまかないメシがいつでも食べられる和田さんがうらやましいなあ。
あ、そうそう、お店では、ホールスタッフを募集しているので、石川さんや和田さんと働きたい方はぜひ!
お店情報
トラットリア・ラ・パンダ・ジャッラ
住所:東京都中野区沼袋1-34-2 イワタビル1F
電話番号:03-5343-7838
営業時間:【ランチ】水曜日~土曜日 12:00~14:00(LO13:45)【ディナー】18:00~22:30(LO 22:00)※火曜日はランチ営業していません。
定休日:日曜日・月曜日
書いた人:下関マグロ
1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)など著書多数。
- Twitter:@maguro_shimo