小中学生スポーツの指導者の体罰を問題提起したくて3年前、連載記事を書いた。聞くにたえない暴言で子どもを威圧するバスケットボールの監督、平手で何度も子どもをたたく学童野球の監督…。「クレームは言いません」と保護者に誓約書を提出させるチームもあった

▼「うちも同じです」。寄せられた反響の大多数は暴力に反対する保護者からの意見。一方で「子どもを甘やかしていいのか」と反論もあった。「苦労も知らんくせに勝手なこと書くな」と直接抗議に来た人もいた

▼どんな理由があろうと暴力は暴力。大人が子どもをなぐったら普通は犯罪だ。暴力的な指導を受けて育った子が暴力的な指導者になっている例もあり、連鎖を止めたかった

▼体操や駅伝、レスリングなど多くの競技で、指導者による暴力やパワハラの訴えが相次いでいる。五輪を目指すトップ選手が被害者という実態に驚く

▼自分に暴力を振るうコーチをかばう10代の女子選手もいる。幼少期からの指導者に過度に依存するねじれた構図が、問題の根深さを感じさせる。大舞台で活躍する選手を育てるなら、精神的な自立に導くコーチングが必要ではないか

▼スポーツの語源はラテン語の「気晴らし」だ。一生楽しめて、人生を豊かにするもの。スポーツの本当の価値を子どもと共有できる大人が増えてほしい。(田嶋正雄)