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皇室とも縁戚…38歳「エリート財務官僚」突然の訃報の無念

父は水戸徳川家直系のサラブレッド

皇室とも縁戚の「貴族」

「主人が亡くなってからまだ日が経っておらず、家族としても困惑し、悲しみに暮れております。わざわざご足労いただいたのに申し訳ありませんが、取材は遠慮させていただきます」

夫を失ったばかりの妻は、取材に訪れた本誌記者にインターホン越しに気丈に答えた――。

8月7日、ひとりの財務官僚が心不全でこの世を去った。

亡くなったのは、千家倫彦・大臣官房信用機構課機構業務室長(38歳)。

千家氏は、学習院高等科から東京大学経済学部に進学、'05年に財務省に入省した。

'09年からは、幾多のノーベル経済学賞受賞者を輩出しているイギリスの名門大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに派遣留学し、経済学と統計学の修士号を得ている。

官僚として将来を嘱望されていた千家氏の訃報は、財務省のみならず、霞が関中に大きな衝撃を与えた。

それは、40歳手前という若すぎる死だったことはもちろんだが、もうひとつ、千家氏が霞が関で広く知れわたる「サラブレッド」だったことが大きい。

千家氏の母方は、『古事記』や『日本書紀』にも登場し、日本最古の神社ともいわれる出雲大社(島根県)の宮司の家系で、祖父・達彦氏は出雲大社教のトップにあたる管長を長年にわたり務めていた('15年に死去)。母方の祖母の血筋をたどれば、伊藤博文と高橋是清にも行き着く。

一方、父方は「水戸黄門」として知られる徳川光圀を生んだ水戸徳川家の直系で、千家氏の父親は徳川幕府に幕を下ろした15代将軍・徳川慶喜のひ孫にあたる。

 

この、ただでさえやんごとなき千家一族の名を一層世間にしらしめたのが、'14年の高円宮典子女王と、千家国麿氏(現・出雲大社権宮司)の結婚だった。つまり、亡くなった千家氏は皇族ともつながる家柄なのだ。

「『とんでもない家柄の人間がいる』と、千家君と仕事をしたことがない職員でも彼の名前だけは知っていました」(千家氏と同じ部署にいた財務省職員A氏)

こうした血統もさることながら、千家氏は財務官僚としての働きぶりも高く評価されていた。

「色が白く、品のあるたたずまいの人でした。見た目と違わず物腰も非常に柔らかいけれど、芯は強く主張したら譲らない『ザ・財務官僚』。それは相手が上司でも部下でも変わりません。

経済学部出身者らしく、数理的な分析へのこだわりは人一倍でした。部下に対しても、丁寧な口調は決して崩さないけれど、時には非常に強いトーンで『論理的にきちんとした資料を作らないと駄目じゃないですか』と説いていたのを憶えています」(A氏)