ども宇佐美です。
仕事の合間に書いているので短めの記事です。
コロラド先生なる人が<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか>という記事を書いていて、これがデマだ、ということを指摘したらいわゆる反原発の人に噛み付かれて仕方ないので簡単に反証しておく。
コロラド先生なる人は簡単に言えば「泊原発が動いていたら停電はなかった、ということはありえない」と言っているのだから、これを反証するのは簡単である。泊原発が稼働していて、苫東厚真火力群が脱落しても全道停電しない発電所の組み合わせパターンを示せばいい。なお泊原発は短時間であれば所内単独運転できるので周波数が乱れただけで即座に落ちるということはないことをあらかじめ指摘しておく。

反証にあたっては今年の電力需給の正確なデータは公開されていないので、2017年の9/6のデータ(上表)を参照する。2018/9/6の停電が起きた時の電力需要は286.0万kwhだったようだが、これは2017/9/6の2:00の発電量とほぼ同じだ(*揚水向けに10.3万kw回していることに注意)。この時火力発電は256.4万kw出力している。同日の火力発電所の組み合わせは昨年も今年も、
・石炭(200万kw):厚真165万kw、奈井江35万kw
・重油(140万kw):知内70万kw、伊達70万kw
であったと推測されるので、ここでは仮に今年も火力発電が総計256.4万kw出力していたとする。この時ベース電力の石炭は定格出力200万kwで動いていたと想定されるので、ミドル火力の知内と伊達が残りの56.4万kwを出力していたと推定される。したがって電源脱落時の上げ調整力は出力超過運転分含めば最大で(140-56.4)×1.05で87.78万kw程度はあったと推定される。
つまり、電源脱落がこの規模であれば、一部の負荷を切り離すことで周波数を維持し、一時停電で復旧できたということだ。したがって例えば以下のような組み合わせならば、脱落は70万kw程度ですみ、全道停電は起きなかったと考えられる。
・原子力(90万kw) :泊 90万kw
・石炭(200万kw):厚真70万kw、
・重油(140万kw):知内70万kw、伊達70万kw
「この組み合わせが不自然で経済性を考えれば厚真は130万kwのはずだ」という人もいるかもしれないが、そもそもそのようなことは断定しようもないので、反証としてはこれで十分であろう。出力が足りないというならば、奈井江35万kwを加えてもらっても結構だ。結論は変わらない。
また上の表を見ていただければ分かるが、北海道は昼に太陽光発電との関係で、昨年度ベースで80.1万kw、おそらく今年であれば90~100万kwの出力調整が火力発電系統に求められるため、むしろ調整力を確保するために、厚真を130万kw動かすよりも上記のような組み合わせの方が自然だろう。
30分で書いた記事なので過不足あるかもしれないが、おそらくこれで<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」>という主張の論拠に対する反証にはなっているだろう。過不足あれば指摘を願う。特に反原発派からの指摘を期待している。
とはいえ雑に書いた記事なので、我ながら不十分に感じるところもあり、後日もう少し説明を丁寧にし、詳細を検討した論考をまとめたい。
ではでは今回はこの辺で。
追記;
この記事を書いた動機についてだが、私は「泊原発を動かせ」という気はない。それは最終的には道民が決めることだ。ただこの機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたいだけだ。
仕事の合間に書いているので短めの記事です。
コロラド先生なる人が<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか>という記事を書いていて、これがデマだ、ということを指摘したらいわゆる反原発の人に噛み付かれて仕方ないので簡単に反証しておく。
コロラド先生なる人は簡単に言えば「泊原発が動いていたら停電はなかった、ということはありえない」と言っているのだから、これを反証するのは簡単である。泊原発が稼働していて、苫東厚真火力群が脱落しても全道停電しない発電所の組み合わせパターンを示せばいい。なお泊原発は短時間であれば所内単独運転できるので周波数が乱れただけで即座に落ちるということはないことをあらかじめ指摘しておく。
反証にあたっては今年の電力需給の正確なデータは公開されていないので、2017年の9/6のデータ(上表)を参照する。2018/9/6の停電が起きた時の電力需要は286.0万kwhだったようだが、これは2017/9/6の2:00の発電量とほぼ同じだ(*揚水向けに10.3万kw回していることに注意)。この時火力発電は256.4万kw出力している。同日の火力発電所の組み合わせは昨年も今年も、
・石炭(200万kw):厚真165万kw、奈井江35万kw
・重油(140万kw):知内70万kw、伊達70万kw
であったと推測されるので、ここでは仮に今年も火力発電が総計256.4万kw出力していたとする。この時ベース電力の石炭は定格出力200万kwで動いていたと想定されるので、ミドル火力の知内と伊達が残りの56.4万kwを出力していたと推定される。したがって電源脱落時の上げ調整力は出力超過運転分含めば最大で(140-56.4)×1.05で87.78万kw程度はあったと推定される。
つまり、電源脱落がこの規模であれば、一部の負荷を切り離すことで周波数を維持し、一時停電で復旧できたということだ。したがって例えば以下のような組み合わせならば、脱落は70万kw程度ですみ、全道停電は起きなかったと考えられる。
・原子力(90万kw) :泊 90万kw
・石炭(200万kw):厚真70万kw、
・重油(140万kw):知内70万kw、伊達70万kw
「この組み合わせが不自然で経済性を考えれば厚真は130万kwのはずだ」という人もいるかもしれないが、そもそもそのようなことは断定しようもないので、反証としてはこれで十分であろう。出力が足りないというならば、奈井江35万kwを加えてもらっても結構だ。結論は変わらない。
また上の表を見ていただければ分かるが、北海道は昼に太陽光発電との関係で、昨年度ベースで80.1万kw、おそらく今年であれば90~100万kwの出力調整が
30分で書いた記事なので過不足あるかもしれないが、おそらくこれで<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」>という主張の論拠に対する反証にはなっているだろう。過不足あれば指摘を願う。特に反原発派からの指摘を期待している。
とはいえ雑に書いた記事なので、我ながら不十分に感じるところもあり、後日もう少し説明を丁寧にし、詳細を検討した論考をまとめたい。
ではでは今回はこの辺で。
追記;
この記事を書いた動機についてだが、私は「泊原発を動かせ」という気はない。それは最終的には道民が決めることだ。ただこの機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたいだけだ。
コメント
コメント一覧
いくつか質問させてください。
・所内単独運転についてのリンク先ですが、「泊発電所1号機及び2号機の安全性に関する総合的評価」とあるのですが、3号機についても同様と考えたのはなぜでしょうか?(「主蒸気ダンプ容量が約70%であり、所内単独運転が期待できる設計となっていること」あたりですよね?)
・脱落が165万kwでブラックアウトして70万kw程度なら防げるという根拠はどこにあるのでしょか?個人的にはうまく停電させられば(例えば札幌を切り離す) 165万kw が脱落してもブラックアウトは避けられたのではないかと思っています。
コロラド先生の記事では南早来変電所のダメージについても言及されていますが、この点はこれからの調査待ちですね。
それぞれの点について。
・短い時間で書いたので見逃してました。1、2と3は同じPWRで三菱重工製なので、3になって安全性が落ちるということはないだろうと思いますが、組み合わせとしては1、2を稼働という組み合わせを考えるべきだったかもしれません。いずれにしろ結論は変わりません。
・脱落は厚真の70万kwという想定です。震度2で泊は今まで停止したことはないでしょう。そして上げ調整力が70万kw以上作ることは可能です。
・地震後も17分は送電網は落ちなかったので、変電所は動いていたと考えるべきでしょう
追記:
北電のリリースによると変電所に大きな被害はなかったとのことです。南早来1号線が一部断線とのことですが、負荷が落ちる方向に働く事案ですし、厚真の脱落はすでに記事に織り込み済みです。
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/oshirase/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/h08.pdf
以上です。
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