うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

モテモテ音羽之丞 ~『男色比翼鳥』巻1の1 その2~

「うきよのおはなし(はてな)」一周年記念企画『男色比翼鳥』巻1の1読み直し続きだよ!

取り上げて欲しい作品やテーマは引き続き募集中だよ!

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※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
男色比翼鳥 6巻. [1] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※画像はクリックすると拡大します。

翻刻

なりきのふけふと暮(くら)しけるが光陰(かうゐん)は矢(や)のごとしも
はや十四の色すがた誠に情(なさけ)深(ふか)き美少也されば近国(きんごく)の
若(わか)男恋したひ牛遣(うしつかひ)のだらすけ迄もいやましの
おもひ草(ぐさ)葉(は)づゑにむすぶ露斗(つゆばかり)の御なさけに預(あづか)り
たしとかほど口ぎたなき男さへいろにハ迷(まよ)ふむだ口
も恋のならひとしほらしある時音羽之丞五月雨(さみだれ
のしめやかに降(ふ)り塩干(しおひ)をしらぬ庭(にハ)の石(いし)もさび昼(につ)
中(ちう)にさわぐ鼠(ねづミ)も追(をハ)ずすこしは是も伽(とぎ)にやなる
とすぎし昔(むかし)をおもひ出し父母に別(わか)れし無常(むじやう)
を観(くわん)じまたは此身に心をかけし人々の文取出し
見るに大かたはふたつ三ツ五ツ迄重(かさな)るハすくなしさるにて
も我(われ)色有身にていまだ定(さだま)る念友(ねんゆう)もなくうか/\と

赤字前回くずし字クイズ答えです。

【現代語表記】

なり。昨日今日と暮(くら)しけるが、光陰(こういん)は矢(や)のごとし、もはや十四の色姿、誠に情(なさ)け深(ふか)き美少なり。
されば近国(きんごく)の若(わか)男恋慕い、牛遣(うしつか)いの陀羅助(だらすけ)文楽の中年役で使う首(かしら)のことか?]迄も、弥増(いやま)しの思い草。
「葉末(はずえ)に結ぶ露計(つゆばか)りの御情けに預(あずか)りたし。」
と、かほど口汚き男さえ、色には迷(まよ)う無駄口も、恋の習いとしおらし。
ある時、音羽之丞、五月雨(さみだれ)のしめやかに降(ふ)り、塩干(しおひ)を知らぬ庭(にわ)の石(いし)も寂(さ)び、昼中(にっちゅう)に騒ぐ鼠(ねづミ)も追(おわ)ず、「少しは是も伽(とぎ)にやなる」と、過ぎし昔(むかし)を思い出し、父母に別(わか)れし無常(むじょう)を観(かん)じ、または此(こ)の身に心をかけし人々の文、取り出し見るに、大方は二つ三つ五つ迄、重(かさな)るは少なし。
さるにても、我(われ)色有る身にて、いまだ定(さだま)る念友(ねんゆう)も無く、うかうかと

【さっくり現代語訳】

日々を過ごすうちに、「光陰矢のごとし」とは言いますが、あっという間に十四歳若衆盛りになり、実に情け深い美少年に成長しました。

なので、近隣諸国の若い男音羽之丞を恋い慕い、牛飼いの中年までもが思いを募らせ、

「葉っぱの先の露ぐらいちょっとだけでもいいから、情けを掛けていただきたいものだ」

と言う始末。

こんな野蛮な男でさえも惑わされて、つまらぬ事を言ってしまうのが、色恋というもので、けなげものである。

ある時、音羽之丞は、五月雨さみだれ)がしめやかに降り、雨に濡れて庭石も寂しげに見えて気分が上がらず、昼間からに暴れるネズミさえも追う気にならなかったので、

「少しの気晴らしにでもなるかな。」

と、のことに思いを巡らせ、父母に死に別れたこの世の無常をはかなみました。

それから音羽之丞恋を仕掛けた男たちからのラヴレターを取り出して見てみると、ほとんどが数回でやりとりが終わっていて、長く続いているものはありませんでした。

音羽之丞は、

「それにしても、若衆としては今が盛りなのに、まだ決まった兄分がおらず、ぼんやりと

【解説】

まず、この話における世界観に戸惑った方もいらっしゃると思います。

この『男色比翼鳥』が出版された当時、男色(男同士の恋愛)は特別なものではなく、普通に行われており、いわば文化・風俗として成立していました。

この点を踏まえて、この先を読み続けてくださいね♪

文中の塩干を知らぬ庭の石も寂び」の解読が困難だったのですが、おそらく、百人一首二条院讃岐(にじょういんのさぬき)の歌、

「我が袖は 潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし」
(あなたのことを思うと、私の袖は、潮が引いても海中から姿を見せない沖の石のように、人知れず涙で濡れていて、乾く間もないのです)

を踏まえた表現だと思われます、たぶん。

モッテモテで恋を仕掛けまくられる音羽之丞君ですが、どうも音羽之丞君の相手としてふさわしいは現れなかったようです。

次回予告とくずし字クイズ

困った時の仏頼みのようです。
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三つ目コーナー

僕が主人公のBLもの、誰か描いてくれないかな?

誰も描かないし、誰も読まない!

 

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