VRイベントプラットフォーム「cluster」運営が4億円をシリーズBラウンドで調達
VRイベントプラットフォーム「cluster」を提供するクラスターは9月12日、シリーズBラウンドで総額約4億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はXTech Ventures、グローバル・ブレイン、KDDIの各社が運営するファンド。また資金調達にあわせ、前ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏が社外取締役として就任した。
クラスターは、VR上で音楽ライブやイベントなどを開催できるプラットフォームclusterを運営する。cluster上では同時に最大5000人と接続が可能。クラスターが目指すのは“ひきこもりを加速させる”バーチャル上でのエンタメ体験の提供だ。
例えば、バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとしたバーチャルアイドルが増える中、リアルタレントが行うような商業活動をバーチャル上でもできるように、有料イベントを開催できるチケット機能を7月にcluster上で公開している。
今回の資金調達でクラスターは、事業拡大に向けたプロダクト開発や人材採用強化を図る。
クラスターは2016年4月に5000万円を調達、2017年5月に2億円を調達しており、これまでの累計調達額は約6.5億円。2017年6月よりcluster正式版を提供している。
[以下、吉田ヒロ追記]
clusterではVR空間の中で、バーチャルアイドルの歌やダンスを視聴したり、バーチャルアイドルと一緒に運動会といったイベントを楽しめる。映像は、MacやWindowsマシンのほか、Oculus RiftとHTC Viveで視聴できる。
8月31日に開催された、世界初となるバーチャル空間での有料ライブ「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」は、チケット価格が5400円だったにもかかわらず瞬く間に完売。当日はチケットを購入した約300人のユーザーがVR空間で、全国7都市15劇場の映画館にて4000人超がライブビューイングでイベントを楽しんだそうだ。
clusterはバーチャルアイドルの活動が活発になるずっと前の2014年ごろ、Oculus Riftが開発版(DK)時代で初音ミクがVRで動き始めたころに、クラスターで代表取締役を務める加藤直人氏が中心となって開発に着手したサービス。加藤氏によると、今回のシリーズBの資金調達によって開発体制の強化と開発スピードの加速化を図りたいとのこと。
新機能としては、ライブ中にバーチャルアイドルと観客のコミュニケーションを図るための投げ銭機能が近々実装される予定だ。「投げ銭機能によってVR空間に花火を打ち上げるといった演出が可能になれば、ライブがさらに盛り上がり一体感もさらに高まる」と加藤氏。複数のサーバーを連携させることで数万人規模のバーチャルライブを開催するという目標も明かしてくれた。
そして加藤氏が次に狙うのは物販機能。リアルのアイドルライブと同様に、チケット販売からライブ中の演出、キャラクターグッズの販売までを一手に担う、アイドル興業のフルフィルメントシステムとしてclusterを成長させていきたいそうだ。ちなみに、バーチャルライブのステージ演出については、3Dゲームの開発環境としてすっかり有名になった「Unity」で構築できる。クラスターでは、社内にステージ演出の開発部隊を結成する計画もあるとのこと。もちろん、日本国内に数多く存在するモバイルゲーム開発会社が、既存のスキルを駆使することでVR空間でのライブ演出を構築可能な点も見逃せない。バーチャル空間とバーチャルアイドル、VR観客、開発会社とすでに役者は揃っているのだ。