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異世界で交換日記してた元女勇者レベル99が、リアルで彼女になりました。 作者:SchwarzeKatze

リノンの試験

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大樹…巻き込んでゴメン…。

僕はリノンが生徒指導室に向かうのを見送る。


「この時間で3科目か…。」


時間にして1時間半くらいだろうか…。

ちょっと早い。

ちゃんと回答を書いてるのか不安になるけど…。

リノンの事だから、しっかりやっているのだろう。

に、しても早い…。

僕は少し落ち込む。


「雄介、もしかして彼女か?」


声の方向に振り返る。

そこには大樹が居た。

部活の休憩中だろうか?

体操着で僕に声をかけてきた。


「陸上部の練習中?」

「おう、そうだよ。

で、あれが彼女?」

「あぁ…そうだよ。

転入試験を受けに来たんだ…。」

「へぇ…そうだったんだ…。」

「紹介する約束、遅くなってごめん…。

試験がひと段落着いたら、声かけるよ。」

「いや、いいよいいよ。

じゃあ、紹介してくれるの楽しみにしてるからな!」


大樹は大げさに笑って、僕の肩をたたく。


「それにしても…かわいい子だな…。

どっからあんな子を…。」

「…深い事情はあるから、ゆっくり話すよ…。」


…異世界から来たなんて言ったら、信じてくれないだろうなぁ…。

そう考えていると、何やら不穏な空気が流れ込む。


「え!?バカな?」

「ん?どうした?雄介?」


大樹は何気なく僕の肩をたたく。

!?

いけない!

大樹と触れ合った状態だと、異世界のはざまに連れ込まれる可能性が…。


「大樹ゴメン!!」

「?」


僕は大樹の手を振り払おうとする。

…が、遅かった…。


「…大樹、ゴメン、巻き込んじゃったようだよ…。」

「え?なんだこれ?」


世界は悲鳴を上げて、異世界のはざまの景色に変わる。



「雄介、これ、どういうことだ?

それに、お前の姿…。」


大樹は茫然と立ち尽くす。

僕たちの視界には、野犬のようなモンスターが3体いる。


「ゴメン…巻き込むつもりはなかった…。」


僕は力なく答える。


「あれ…犬だよな?

可愛い犬だよな?

まさか…襲ってこないよな?」

「…残念だけど…。」


モンスターは僕たちにけん制をかけてくる。


「…これが僕の最近の日常…なんだ…。」


大樹に申し訳なさそうに言う。

そして、僕は杖に力を込めて、魔法を念じる。


「ファイヤーストーム!!」


3体のモンスターが炎に包まれる。

…ダメージが足りない!

僕は1体にめがけて、杖を振り下ろす。


「ギャン!!」


炎のダメージで弱っていたのか、モンスターはすぐに倒れる。

そして、もう一体…。


「大樹!!!」


僕がもう一体に対してとどめを刺したとき、

残りの一体が大樹にめがけて襲い掛かる。


「くっ、来るな!!!」


大樹は無我夢中で地面の石を投げつける。


「キャン!!」


大樹の石が、モンスターに当たる。

ひるんだ!

今のうちに!!

僕は杖を握り、炎の魔法を唱える。


「大樹、伏せて!!」

「!?」


大樹は声に反応して伏せる。

そして、僕の放った魔法がモンスターに命中する。

モンスターは力なく倒れていった。


「こ、これは何なんだよ…。」


大樹は震えたような声で言う。


「…彼女のいた世界…って言ったら、信じる?」


僕は恐る恐る、大樹に尋ねる。


「…わからない…。」


大樹は首を振りながら答える。

そりゃ…僕だって信じられなかったものだ。

いきなり信じろと言っても通用しないだろう。


「だよな…。」


僕は力なく、答える。

そして、大樹の腕がほのかに光る。


「雄介、これは?」


僕は大樹のそばによって、腕の文字を確認する。


「…シーフ、レベル4…。」


異世界のはざまは崩れ、元の世界に戻った。



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