リノンの試験
リノンは注文ボタンを押した!!
勉強も終わったので、ひとバトル♪
…てか、ユウスケもつられて勉強してたけど…。
図書館を出て、私はユウスケの手を取る。
「じゃあ、行くよ!」
私たちは世界が割れる音とともに、異世界のはざまにいざなわれる。
「モンスターは?」
「えっと、私の好きなクマ!」
なんというか、固い経験値をもらえるモンスターよりも、
戦った気分になれるから…。
「じゃあ、行くよ!!」
「うん!」
私は掛け声とともに、クマに襲い掛かる。
ユウスケはクマに炎の魔法をぶつける。
…まぁ、私一人でも余裕だけど…ユウスケの経験値も
稼ぎたいから、攻撃してもらう。
「うりゃぁぁぁ!!」
私は毒針でクマの喉笛を横なぎ、続けて急所…心臓に毒針を
打ち込む。
「…!?」
クマは悲鳴を上げることが出来ずに、倒れる。
そして、クマの血しぶきを私はもろに浴びる。
「…なんだか、リノンらしいね…。」
「そう?」
っと、異世界のはざまが消える前に、お土産つけなきゃ。
私は毒針にポーチから取り出した、
チンアナゴのボールペンを括り付ける。
「それでいいの?」
ユウスケは不思議そうに見つめる。
「うん、もしかしたらこれで届くかもって。」
何回かバトルして気が付いた事。
ユウスケの世界の物でも、
簡単なものであれば異世界のはざまに持ち込めるらしい。
一度、スマホで記念撮影しようとしたけど、
その時は持ち込めていなかった。
…基準は分からないけど、少なくてもポーチとボールペンは
持ち込めるらしい。
「送れるか、楽しみだね。」
「うん♪」
こうして、異世界のはざまは消えてゆき、元の世界に戻っていた。
「リノン、ボールペンはまだある?」
ユウスケが不安そうに尋ねる。
私はポーチの中を調べてみる。
「うん、なくなってる。
大丈夫じゃないかな?」
私はユウスケにそう告げる。
「無事届くといいね。
じゃあ、ご飯にしようか?
何食べたい?」
「お魚~!」
「じゃあ、またあのファミレス行こうか?
学校からも近いから。」
そういうと、ユウスケは前に働いていたファミレスへと向かう。
…そっかぁ…。
私にとっては初めてユウスケとご飯を食べた、思い出の場所だなぁ…。
「いらっしゃいま…って、新田君か。」
あれ?
ユウスケの知り合いかな?
「はい、どうも…。」
「…それより、噂の彼女連れてきたの?可愛いね…。」
「…噂って…。」
ユウスケはなんか、ひそひそ話ししてる…。
まぁ、いいや。
「時間が無いから、席お願いしていいですか?」
「あぁ、わかった。こっちの席でどうだい?」
「ありがとうございます。」
ユウスケと二人で席に着く。
「ねぇ、ユウスケの知り合いなの?」
「うん…まぁ、ここで僕はバイト…働いてたから。
先輩だよ?」
そういえば、初めてここに来た時、いっぱい人来てたなぁ…。
もしかして、異世界から来た私が珍しいとか?
「…私、異世界から来たってバレてるのかな…。」
「いや、そうじゃないから、安心して…。」
ユウスケは少し疲れたように答える。
さて、ご飯、ご飯♪
メニューも慣れたし。
でも、このメニュー、写真がいっぱいで見やすいなぁ…。
むこうの世界でもあると便利なのになぁ…。
「私はこれにする!」
アジのフライ定食を指さす。
「じゃあ、僕はこれにしよう…。」
そう言って、ユウスケはボタンを押そうとする。
「…それ、私押してみたい。」
「え?いいけど…。」
ユウスケはボタンを私に差し出す。
私は、恐る恐るボタンに指を置き、力をこめる。
「ピンポーン」
店の奥の方で音が鳴る。
「ユウスケ、これでいいの?」
「お待たせいたしました、ご注文をどうぞ!」
「ひゃ!!」
「?」
私は店員さんがすぐに来て、驚いて声を出してしまう。
「ユウスケ、店員さん早いね…。」
「いや、良いから早く注文しよ…。」
ユウスケはそそくさと注文をする。
「僕はハンバーグ定食で。」
「私はアジのフライ定食お願いします。」
「ありがとうございます。
ハンバーグ定食にアジのフライ定食ですね。」
「はい。」
あれ?
どことなく店員さんがニヤニヤしてる…。
「ユウスケ、あの店員さんも知り合いなの?」
「うん、まぁ…。」
ユウスケはバツが悪そうに答える。
…せっかくの二人でご飯なんだから、元気にしてほしいなぁ…。