じゃらんnet>じゃらんニュースTOPページ>関東>今年のトレンドは「異素材」と「異色」!ラーメン官僚おすすめ8軒【関東】
2018.08.31
2018年も、早いものでもう9月。気候も穏やかになり、これからまさに食欲の秋が到来しようとしているところである。
前回の特集では、直近数ヶ月以内にオープンした淡麗系の新店を、7軒紹介させていただいた。
そこで、今回は、2018年のラーメンシーンの「トレンド」である、定番ではない異素材を用いたラーメンと、既存の枠には収まらない新機軸(異色)のラーメンに着目し、これらのラーメンを提供する店舗を8軒、厳選してご紹介しようと思う。(掲載順は、順位等とは特段の関係なし)
これらの店舗に足を運ぶことができれば、今年のラーメンのトレンドについては、概ね押さえたことになるのではないかと思う。
ラーメン好きの皆さまにおかれては可能であれば全店舗、そうではない皆さまにおかれても少なくとも1軒には足を運んでみていただきたい。必ずや、お気に入りの1杯を見付けることができるだろう。
本年8月18日、JR平井駅の近傍にオープンしたのが、こちらの『ひよこプリン』。
記憶に刻まれる印象的な屋号は、店主がかつて切り盛りしていた『めんやもも』と同じ。
店名の由来を尋ねると、「自分が作り手として『ひよっこ』だという意味合いと、商品化を試みている『プリン』を掛けたものです」と謙遜するが、その人物が『めんやもも』の主だったと聞けば、その言葉を真に受けるラーメン好きは存在しないだろう。なぜなら『めんやもも』は、14年もの長きにわたり、江戸川区のラーメン店の頂点の一翼を担ってきた名店なのだから。
『ひよこプリン』は、そんな実力店の店主が、『もも』の閉店から4年の歳月を経て新たに立ち上げた店なのだ。
鶏&香味野菜の持ち味をフルに活かした出汁と、薄口醤油を巧みに織り込んだカエシ。双方を縦横無尽に掛け合わせて創られるスープは、舌上でピタリと収束するうま味に確かな技量を実感。
いずれのメニューも優秀だが、イチ押しは「豆乳」を用いた「白らーめん」。出汁&トッピングに配置された香味野菜の自然味豊かなうま味を、風味まろやかな豆乳が優しく受け止める。レンゲを持つ手を止めさせない盤石の仕上がりだ。
2016年にオープンし、瞬く間に全国クラスの人気店にまで上り詰めた、鮮魚ラーメン専門店『麺魚』。そんな『麺魚』を率いる店主が、2018年4月にオープンさせた「セカンドブランド」が、こちらの『満鶏軒』。
店主は、千葉の人気店のほか和食業界の経験もある凄腕。今般、産声を上げた『満鶏軒』は、屋号が示すとおり「鳥」を用いたラーメンを提供。「鳥の中でも食味に独特の個性があり、工夫次第でどこまでも面白くなるから」と、鳥の中でも「鴨」をチョイス。鴨が持つありのままの魅力を表現したいと、スープに用いる素材は「鴨」と水のみ。それ以外の食材には目もくれないというこだわりようだ。
看板メニューは、「鴨中華そば塩」。
出汁は、巨大な寸胴に40羽の鴨の丸鶏を詰め込み6時間かけて弱火で炊き上げたもの。それに「岩塩」を加え、仕上げに数滴のフォアグラ油を垂らせば、絶品スープの出来上がり。「フォアグラ油は鴨の引き立て役ですね。数滴加えることで、鴨の風味が格段に増すんです」と笑う。
私が知る限り、ここまで鴨を突き詰めた1杯は同店をおいて他にない。他の追随を許さぬ徹底ぶりに、頭が下がるばかりだ。
ここ数年、駅ビル・駅近に、有望なラーメン店が続々と出店している。ご紹介する『MENSHO SAN FRANCISCO』も、そんな店舗の1つ。
ロケーションは各線新宿駅から徒歩1分程度と、アクセスはこの上なく良好。同駅の駅ビルのひとつ『新宿ミロード』の7階に店舗を構え、客の来訪を待ち受ける。
同店のオープン日は、7月13日。店が入居する『新宿ミロード』は、女性客が客層の大宗を占めるファッションビル。同店への来訪客も女性が殆どだ。
手掛ける麺メニューは、「鶏白湯らぁめん」「トウモロコシの冷たいらぁめん」「A5黒毛和牛醤油らぁめん」など、女性客を意識した個性派ぞろい。中でも特にオススメなのが、「鶏白湯らぁめん」に大量の「チーズ」を添えた「チーズ鶏白湯らぁめん」。
クリーミーな食感を余すところなく演出しながらも清涼感のある飲み口が印象深いスープは、意外にも、チーズとの相性が抜群。スープに溶け込むにつれ、加速度的にスープのコクが増幅するサマは、大多数の食べ手の想像を超えたスケール感を伴う。名門『MENSHO』の名に恥じない出来映えだ。
店舗の場所は、各線巣鴨駅から徒歩5分程度。
はるか昔(1990年代)には『千石自慢らーめん本店』が一世を風靡し、数年前にはミシュランスターである『蔦』がオープン。近年も新店が続々と誕生している激戦区に、7月28日、特筆すべきニューフェイスが産声を上げた。それが、こちらの『らぁめん生姜は文化。』だ。
屋号が示すとおり、同店では「生姜」を用いたラーメンを提供。
池袋の人気店『塩そば専門店桑ばら』と神田の実力店『塩生姜らーめん専門店MANNISH』の系譜に連なる1軒(姉妹店)であり、クオリティの高さは折り紙付き。
「塩生姜らぁめん」、「塩生姜つけめん」など、塩と生姜をテーマに複数のメニューを手掛けるが、最初に召し上がっていただきたいのは、券売機筆頭メニューである「塩生姜らぁめん」だ。
鶏の存在が息づくフルボディの清湯出汁に、涼やかな辛みが印象深い生姜を大量に溶かし込んだスープは、鶏の滋養味と生姜の香りとが、鼻腔を交互に侵襲。『桑ばら』譲りの、味蕾を打ち付けるようにビビッドな味わいの塩ダレも力添えし、食べ手を忘我の境地へと誘い込む。
今年のラーメンシーンは、鶏ガラ・ゲンコツ・煮干し・節等の定番ではない「異素材」を活用したものが目立つ。馴染みのない素材から採った出汁の未知の味わいが、多くのラーメン好きの舌を魅了しているが、今般、錦糸町に登場した『米とサーカス』が手掛ける1杯は、そんな異素材ラーメンの最たるもの。
なんと、鶏でも豚でも牛でもない、「鹿(しか)」をスープの素材としたラーメンを提供しているのだ!
そもそも、こちらの『米とサーカス』は、ジビエ好きには広く知られた人気店。鹿のみならず、熊、カンガルーといった動物の骨肉も、丁寧な調理を施した上で積極的に提供している。
そんな同店が、都内の実力店『ムタヒロ』のレシピ監修によって世に送り出したのが「鹿ラーメン」。本年7月、提供が開始された同メニューは、素材の一部として鹿を用いるといった段階にとどまらず、100%鹿の骨から出汁を採った挑戦的な一品。
そんなキワモノのような1杯であるにもかかわらず内容が上々であることも、特筆に値する。麺から小鉢で提供される薬味類に至るまで、一切の間違いがない。五臓六腑に沁みわたる厳かな動物系の野趣味に、店を出る頃には心の中で再訪を約束してしまった。
埼玉県北部を代表する大都市・熊谷。同市は埼玉における経済上の一大拠点であると同時に、『きくちひろき』、『龍門瀑』、『福は内』など、数多くの優良ラーメン店を輩出してきた激戦区としても知られる。
そんな熊谷の地において本年3月にオープンした『ゴールデンタイガー』も、今後間違いなく、熊谷のラーメンシーンを牽引する存在となるだろう。開業から約半年しか経過していない現在においても、その萌芽は
既に見られ、時間を問わず常に、店内は大勢のお客さんで賑わっているところだ。
券売機の上段を飾るつけめん類の水準も極めて高いが、本稿で私が強く推したいのが、「TKM」の名を冠した「スープOFF」ヌードル。
「TKM」とは、「玉子かけまぜそば」の略称。日本人の心の味である「TKG(玉子かけご飯)」を、そのまま麺料理へと落とし込んだ、店主渾身の意欲作。
和風味をたっぷりと湛えたタレが味蕾をしっとりと潤し、その後、間髪を入れずに卵黄の豊潤なうま味が口の中で充満する。用いられる数は1個であるにもかかわらず、終盤まで衰えを見せない卵黄の存在感も特筆に値する。ありそうでなかった新感覚の1杯だ。
西武鉄道の歴史上、最初に作られた駅として知られる小川駅。駅前にこぢんまりとした飲食店街が佇み、乗降客を温かく見守る。そんな飲食店街の一角に、本年7月18日、1軒のラーメン専門店が産声を上げた。それが、今回ご紹介する『中華そば紅』だ。
同店の店主は、京都を代表する名店のひとつである『新福菜館』のご出身。
提供するメニューも、京の地で長年親しまれ続けている伝統的なラーメンに、独自のアレンジを施したもの。麺メニューの具体的なラインナップは、店主自らが看板メニューと謳う「紅」のほか、修業元の1杯へのオマージュを込めた「黒紅」など、合わせて3種類。
いずれの品も逸品ぞろいだが、やはり、初訪問時には、看板メニューである「紅」をチョイスするのが正解だろう。
唐辛子の粉が丼一面を覆い尽くす鮮やかな紅色のビジュアルに、辛みが得意でない方は尻込みしてしまうかも知れないが、勇気を奮ってひと口スープを啜っていただきたい。高級唐辛子を巧みに活用することで、辛みよりもうま味をクローズアップ。喉元に沁みわたる鶏の滋養味も相まって、レンゲを持つ手が止まらなくなってしまうだろう。
今回の特集のラストを飾るのは、神奈川・JR武蔵新城駅から徒歩3分という好立地に佇む『牛骨らーめん牛王』。
同店のオープン日は本年5月28日。開業してからまだ日は浅いが、オープン直後より、複数のラーメンマニアからの高評価を獲得し、既に同地になくてはならない存在となっている。
店主は、都内の複数の実力店でじっくりと腕を磨き、満を持して独立を果たした実力派。その力量の確かさは、繰り出される1杯を口にした瞬間、まざまざと思い知らされることになるだろう。
スープは、成牛・仔牛の骨などに数種類の香味野菜を加え、じっくりと丁寧に煮込んだ出汁に、「スパイスステーキソース」を加えて創り上げたもの。
牛の持ち味である骨太なうま味と香りが、ピリッと刺激的なスパイスによって引き締まり、喉元で鮮やかに収束する。ひと口すすった瞬間、思わず忘我のため息を漏らしてしまった。牛骨だけではない。牛スジや牛脂も総動員しながら、見事に1杯の丼にまとめ上げている。
間違いない。この1杯こそ、2018年における牛ラーメンの最高傑作だ!
※この記事は2018年8月29日時点での情報です。
通称「ラーメン官僚」。ラーメン食べ歩き歴20年以上、実食杯数は11,000杯以上に及ぶ。直近の数年間は、毎年700杯~800杯のラーメンをコンスタントに実食。2016年現在、日本でラーメンシーンの「今」を最もよく知る人物。