(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年9月8/9日付)
米ニューヨーク証券取引所で、連邦準備制度理事会の利上げを報じる画面を見つめるトレーダー(2015年12月16日撮影)。(c)AFP/Getty Images/Spencer Platt〔AFPBB News〕
私は一度、本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の読者に重要な情報を伝えるのを差し控えたことがある。そう認めるべき時が来た。
あれは10年前、金融危機が最悪のピークに達した時のことで、私は正しいことをしたと思っている。だが、2008年の危機から10年経った今、これについて話さなければならない。
その瞬間が訪れたのは2008年9月17日。米リーマン・ブラザーズが破産申請した2日後のことだ。
あの水曜日は、私にとっては、金融危機の一番怖い日で、世界の金融が全面崩壊に近づいた時だった。だが、私はFTにそんな記事は書かなかった。
水曜夜に2つの重要なニュースが流れた。
まず、保険大手のAIGが85億ドルの救済措置を受けた。救済が必要だったのは、AIGが保証していたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引で、約束のお金を払わなければならなかったからだ。
こうした保証がなければ、銀行各行がバランスシート上に抱え、リスクがゼロと考えられていた債券が、実は無価値だと見なされる恐れがあった。
もしそうなっていたら即座に、これらの債券を保有する銀行の多くが形式上、支払い能力不能に陥っていた。