“写真を撮る”というのは被写体の”光”をカメラで捉えること。その光をコントロールすることで自分の意図した写真を撮ることができるわけです。カメラはどんどん高性能化され、だれでも簡単に“きれいな写真”というのが撮れる時代になっていますが、それでも“自分が本当に撮りたい写真”というのはなかなか撮ることができません。
プロとアマの決定的な差はここにあって、光を自在に操って自分の、そしてクライアントが求める一枚を撮ることができる人が“プロカメラマン”と名乗ることができるのです。
ホビージャパン別冊「ホビージャパンエクストラ 2018 SUMMER」では、「月刊ホビージャパン」で長年メインで模型撮影を務めてきたプロカメラマン・本松昭茂氏が、模型撮影におけるライティングについて解説しています。本記事では、ライティングの基本セッティングを紹介します。
写真/大村祐里子
解説/本松昭茂(STUDIO R)
文/伊藤大介(ホビージャパンエクストラ編集部)
ライティングの基本セッティング
STUDIO Rが「月刊ホビージャパン」などの模型撮影で行っているライティングの基本セッティングはこちら。もちろんこのセッティングですべての模型を撮影しているわけではなく、ジャンルや形状、背景紙の色や求める雰囲気などで臨機応変に変えていきます。ただし、光源の基本的な役割は変わらないので、参考にしてみてはいかがでしょう?
タングステンランプとは?
撮影用の光源として使用しているのは写真撮影用のタングステンランプ。瞬間光のフラッシュやストロボとは異なり、常時明るい光を照らし続ける「定常光」による光源となります。定常光によるライティングは被写体のどこに光が当たっているのかがひと目でわかりやすく調整がしやすいという利点があり、じっくりとライティングを行うことができます。「定常光」による光源はタングステンランプのほかに、ハロゲンランプ、蛍光管、HMI、LEDなどがあります。それぞれ予算や手に入れやすさで選んでみてはいかがでしょう。基本的にそれぞれ色温度が異なるので、どれか選んだときはすべての光源を統一したほうが写真のホワイトバランスの調整も上手くいきやすいです。ちなみに家庭用の電球や蛍光灯、デスクライトなどでも定常光撮影は行えます。ただし光源が弱いため、シャッタースピードを長くとらなければいけなくなったり、色温度が複雑になりホワイトバランスの調整が困難になったりするので、できれば写真撮影用を選びましょう。タングステンランプはワット数の異なる3種を用意。
ディフューザー
ディフューザーとは、その名の通り光を拡散させるための機材です。主にトレーシングペーパーを使用していますが、半透明の乳白色であれば代用が効く場合もあります。このディフューザーを通すことで拡散してやわらかい光になります。上面にはアルミ枠にトレーシングペーパーを貼り付けた自作の機材、両側にはトレーシングペーパーそのままを使用しています。
黒い画用紙
上面のディフューザーを一部覆って背景紙に影をつけるために黒い画用紙を用意しています。背景が若干暗くなることによって被写体が強調されます。こうして影をつけること以外に背景紙からの照り返しを押さえたりとなにかと便利なので、用意しておくといいでしょう。ちなみに黒い画用紙をナナメに配置しているのは、ナナメに影が入ることで奥行を感じられるからとの理由からで、特に意図が無ければ真横でもOK。
背景紙
被写体には背景紙を敷きましょう。色は好きなものでOKですが、被写体と同系色の色を選ぶと背景紙に被写体が溶け込んだりする恐れがあります。また、背景紙の色が被写体に写り込むいわゆる「色被り」が起こる可能性もあるので、そのあたりも注意してチョイスしたいところです。一番被写体に影響を与えにくい背景紙の色はグレー。組み合わせによっては地味な印象になったりしますが、まずは汎用性の高いものとしてグレーの背景紙を持っておくことをオススメします。
カメラ・レンズと三脚
各々のカメラ・レンズ、三脚は必ず用意しましょう。今回使用しているカメラはニコンD3X、レンズはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED。三脚はジッツォのアルミ製5型5段。雲台はマンフロットのギア雲台
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