主計官を集めて訓示する麻生財務相=27日午前、財務省 © KYODONEWS 主計官を集めて訓示する麻生財務相=27日午前、財務省

 麻生太郎財務相は27日、各省庁による2019年度予算の概算要求の締め切りを控え、経費の査定を担う主計官を集めて訓示した。19年10月の消費税率10%への引き上げに関し「今回は間違いなくやれる状況になってきている」と語った上で、景気の冷え込み防止に万全を期すよう指示した。

 麻生氏は、14年に8%へ増税した際の経済停滞を踏まえ「景気後退を招くようでは(10%への増税を)過去2回延期した意味がない」と訴えた。19年度は当初予算の段階から経済対策費を盛り込む予定となっている。

 事務方で済ませることの多い主計官会議に財務相が出席するのは13年ぶり。

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有機ELで日本完敗 リベンジの可能性

LG、サムスンの韓国勢が先行する有機LE事業。だが、そこに果敢に食い込もうとしている日本の有望企業がある。いずれも高い技術を誇るが、ビジネスで成功を勝ち取るためにはまだ壁もある。日本企業が有機ELの世界をリードすることはできるのか。技術経営の専門家である中田行彦氏が、キーマンへのインタビューを踏まえ分析した。(JBpress) 日本企業がリベンジする可能性は 前回の記事(「有機ELで独走、韓国LGはテレビ市場の覇権を握るか」)でも書いたが、有機ELで、日本は韓国に完敗状態にある。 テレビ用の有機ELパネルの生産を一手に請け負っているLGディスプレイは、2018年8月29日、8Kの有機ELテレビを開発したと発表した。もちろん世界初の快挙だ。日本のソニーやパナソニックも有機ELテレビを発売しているが、コア部材の有機ELパネルの供給は全量、LGに頼っている状態だ。スマホ用の有機ELパネルは、サムスン電子に独占されている。 韓国勢に大きく水をあけられた日本メーカーにリベンジのチャンスはあるのだろうか? 筆者は「可能性はまだある」と確信している。 実は、有機ELパネルの生産には3つの方式がある。その中で、もっともコスト面で強みがある「3色印刷方式」はまだ量産体制が築けていない。だが、この3色印刷方式で先陣を切っている会社が、日本の「JOLED」(ジェイオーレッド)なのである。 2007年に世界で初めて有機ELテレビを市場に投入したソニー。2006年から「3色印刷方式」を研究するパナソニック。両社の有機EL事業を統合して、2015年に設立されたのがJOLEDなのだ。 また、新しい有機EL材料として期待されているのが、九州大学の安達千波矢教授が発明した「熱活性化遅延蛍光(TADF)」である。安達教授は、大学での基礎研究に取り組みながら、九州大学発ベンチャー「Kyulux」(キューラックス)で実用化に挑んでいる。Kyuluxは、LG、サムスン、JOLED等も出資する注目企業だ。 日本発の有機EL事業の成否は、この2社にかかっていると言っても過言ではない。そこで今回は、日の丸連合のJOLED、九大発ベンチャーKyuluxの奮闘を紹介する。 技術流出のリスクを冒しながらの「技術外販」戦略 2018年8月23日、JOLEDは今後の事業展開に大きく関わる2つの事業戦略を発表した。 1つは、大型テレビ向けの印刷方式による有機ELディスプレイの「技術外販」を推進する業務提携。もう1つが、有機EL量産に向けた第三者割当増資による総額470億円の調達だ。この2つの戦略は、現在の「蒸着方式」からのゲームチェンジを目指した、モノとサービスの「両面戦略」だ。つまり、中小型「量産」のモノと、大型「技術外販」のサービスだ。同社が生き残りのために練り上げた、渾身の戦略と言える。 JOLEDは、「3色印刷方式」の有機ELパネルを、2017年12月に世界で初めて出荷している。 「3色印刷方式」とは、赤・緑・青を、インクジェットプリンターの様に、印刷で塗分ける方式だ。この方式は、LGが採用している「白色蒸着方式」やサムスンの「3色蒸着方式」と違って、蒸着に必須な真空状態を作る過程が省けるので、工程がシンプルになる。そのためコストが抑えられ、有機EL生産の最終ゴールになりえるのである。 JOLEDの起死回生の事業戦略と、将来戦略を【図1】に示す。 JOLEDは、生産設備の開発設計を行う「パナソニックプロダクションエンジニアリング」、ディスプレイ製造装置の生産と保守等のサービスを行う「SCREENファインテックソリューションズ」の3社の業務提携を発表した。 これは単なる業務提携でなく、「3色印刷方式」による大型有機ELディスプレイの「技術外販」を意味する。 JOLEDが「技術外販」を発表した翌日の日本経済新聞は、海外への技術流出を懸念する経済産業省幹部のコメントとして、「1~2世代古い技術を提供して稼ぐモデルで最先端技術は日本国内に残る」と報じている。 筆者は、経産省幹部は事実誤認をしていると思う。「3色印刷方式」は、研究開発途上の最先端技術であり、もっと正確に言えば「破壊的技術」だ。この技術を外販するということは、技術流出の可能性は否定できない。そのリスクの代わりに、JOLEDは、提携企業や海外企業等との共創により、大型有機ELパネルの生産技術を発展・普及させられるとともに、自社で大型を「量産」できるようになる。 この「技術外販」は、特許等の単なる「技術ライセンス」ではない。「技術ライセンス」とは、特許の使用を許可するだけだ。製造ノウハウ等を含んでいない。そのノウハウがなければ、「技術ライセンス」は「猫に小判」なのだ。 私は、シャープ・アメリカ研究所に勤務していた時代、シリコンバレー等で新しい技術の芽を探し「目利き」し、日本に技術移転する仕事をしていた。その時の経験をもとに技術ライセンスについて述べてみたい。 まず有望なベンチャーを訪問し、「秘密保持契約」を結んだ上で、技術を開示してもらう。可能性があれば「共同研究契約」を交わし、詳しい情報や試料を提供してもらう。さらに、自分たちの研究所で試料を用いて技術評価し、結果が良ければベンチャーと「技術ライセンス供与」の契約を結び、日本に「技術移転」するのである。 それで終わりではない。さらにシャープの研究所で研究し、製造装置メーカーと共同で装置開発することが必要になる。 この様に、「技術移転」には、「技術ライセンス」だけでなく、多くの複雑な工程が必要になるのだ。 JOLEDが、パナソニックプロダクションエンジニアリング、SCREENファインテックソリューションズとともに提案する大型「技術外販」は、製造技術や製造装置までセットにした、「技術ライセンス」を大幅に超えた内容で、「破壊的技術ワンストップサービス」と言える。 このサービスは、液晶パネル製造でよく見られるような、すでに開発された装置を顧客のニーズに合わせてマイナーチェンジするような事例とは異なる。顧客と3社が「すり合わせ」て、顧客のニーズに全面的に合わせたパネル製造が可能になる「ワンストップサービス」として売り込むわけだ。 このビジネスが広がれば、LGやサムスンが採用している蒸着方式から、JOLEDの印刷方式に、有機ELパネルの主流が一気に変わる、つまりゲームチェンジャーとなる可能性がある。それだけの爆発力を秘めた事業戦略であることは確かだ。 中小型では1000億円を投じて量産へ JOLEDのもう1つの戦略である450億円の調達は、中小型有機ELディスプレイの量産に向けた戦略である。 JOLEDは、2018年7月に、石川県に能美事業所を開設している。中小型液晶大手のジャパンディスプレイの旧能美工場を、産業革新機構を通じて取得したもので、世界初の「3色印刷方式」の有機ELディスプレイの量産工場として、2020年の稼働を目指している。 5.5世代と呼ばれるパネルを、1.3x1.5mで、月産2万枚生産する計画だ。車載向けやハイエンドモニター向けの10~32インチの中型有機ELディスプレイをターゲットとしている。 全体の調達目標額は1000億円。うち470億円の調達が完了したことが発表されたわけだ。 大型ディスプレイについては技術を外販し、技術料収入を得る。その資金と外部から調達した資金を能美工場につぎ込み、中小型ディスプレイの生産で突っ走る。これが、今回発表された2つの事業戦略の意味だろう。技術流出のリスクも承知の上での挑戦的な戦略だ。 JOLEDは、リベンジを狙って捨て身の2つの事業戦略を取った。背水の陣の構えに入ったと言えるだろう。その成果を見守りたい。 国の研究支援プログラムに選ばれた発光材料研究 一方、新しい有機EL材料として期待されているのが、Kyuluxが事業化に取り組んでいるTADFである。九州大学の安達千波矢教授が発明した新発光材料だ。 安達千波矢教授へのインタビューのため、九州大学伊都キャンパスにある最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)を、2018年2月16日に訪ねた。壮大なキャンパスの一角にOPERAはある。 OPERAの安達教授室で話を伺った。 「私は1988年に九大で有機ELの研究を開始しました。当初、発光は2~3分しか持たなかったのですが、基板の洗浄等の成膜プロセスや材料を改良することで、寿命は数100時間に大幅に改善しました。 1991年にリコーに入社し、引き続き有機ELを研究していました。しかし、会社が有機ELの研究を中止することになったため、1996年に信州大学に助手として転じ、有機ELの研究を続けていました。 それまでの研究が認められ、1999年に、プリンストン大学のステファン・フォレスト教授に声をかけられ、プリンストン大の研究員となりました。 プリンストン大学には3年弱いましたが、その間は第2世代の燐光材料の研究をしていました。フォレスト先生は、その研究を事業化するため、研究室の1期生をCTOとして呼び寄せ、ベンチャー企業を立ち上げました。これが現在、有機ELの発光材料市場で独占的地位を築いているユニバーサル・ディスプレイ(UDC)です。この間、有機ELの課題である素子寿命は、世界中の研究者が開発に取り組むことで、劇的に延びました。そして金と、トップクラスの人を集めたのです」 米国の名門プリンストン大学での研究生活と、大学の技術を実用化するベンチャー企業の立ち上がりを目の当たりにした経験が、その後の九大での研究とベンチャー起業に大きな影響を与えたと言える。 「2001年に日本に帰り、千歳科学技術大学で助教授として勤務しました。日本に戻ったら、第2世代を超える開発を行おうと決めていたので、第3世代の発光材料の研究に取り掛かりました。その後、2005年に九州大学に教授としてやってきました。 第3世代のアイデアは、光化学の基礎の基礎から出てきました。三重項状態を熱活性によって一重項状態に移すものです。原理は教科書にも書かれていて、私も授業で教えていたのですが、あくまで理論上の話でした。ただ、『数式で書かれていることは実現できるはず』という物理的思考を信じました。 2009年にTADFを用いた世界初のOLEDを発表しましたが、現実の発光効率は0.1%しかありませんでした。しかし、理解できる人には分かってもらえる内容だったと自負しています。指導原理が分かると、それに基づき多くの実験を行いました」 難しければ飛ばしていただいて結構だが、安達教授のアイデアを【図2】を用いて説明しておく。 電子は自転と公転を行っており、その回転方向から、2つの電子が取りえる量子状態の組み合わせが、4通りあり、一重項状態(1個)と三重項状態(3個)である。 第1世代は、一重項励起状態からエネルギーの低い基底状態に移り「蛍光」を発光する材料で、この効率は、上記の理由から最大で25%しかない。 第2世代は、三重項状態から「燐光」を発光させる材料で、効率は75%から最大100%になる。しかし、「燐光」には、イリジウムやプラチナといった高価な材料が必要となるのが大きなネックになっている。 第3世代の安達教授のアイデアは、三重項状態と一重項状態のエネルギー差が小さくなるように分子設計するものだ。熱エネルギーを得て、三重項状態から一重項状態に移り「蛍光」を発光する。理論的には効率100%に近づく。 「2010年、日本学術振興会(JSPS)の最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)の公募がありました。アイデア段階で効率0.1%でしたが、思い切って応募しました。600人程度の応募があり、それを40名ほどの審査員が審査します。 専門外の人にも分かりやすく提案することを心掛けたのがよかったのか、対象者30人の1人として採択されました。その結果、人件費と装置費で、5年間で32億円の研究費をいただいくことが出来ました。 これで研究に一気に弾みがつき、2012年12月、内部EL発光効率100%を達成したのです」 FIRSTプログラムは、世界のトップを目指す先端的な研究開発支援プログラムだ。応募のあった研究者の中からトップの30人を選び出し、1人に約15億円から60億円のプロジェクトを任せるという非常にユニークな制度だ。同プログラムの支援を受けた研究者には、京都大学の山中伸弥教授や、島津製作所の田中耕一氏など、ノーベル賞受賞者もいる。また、ディスプレイ分野では、ディスプレイ用の新しい薄膜トランジスタ(IGZO-TFT)を発明した東京工業大学の細野秀雄教授もいる。 こうした先進的なFIRSTプログラムだからこそ、アイデア段階で効率0.1%であった提案が採択されたのだ。 「2013年には、科学技術振興機構(JST)がおこなう創造科学技術推進事業(ERATO)にも選ばれました。こちらでは、新しい光エレクトロニクスデバイスの創製を目指しています。 挑戦し続けるモチベーションの元は『有機物で世の中を変えたい』という思いです」 安達教授が発明したTADFを実用化するのが九州大学発のベンチャー企業「Kyulux」だ。安達教授自身は、共同創業者であり、技術アドバイザー等の役割を担う。 ベンチャーキャピタル経営者からベンチャー経営者に 私はKyuluxを訪れ、すぐ近くにある、同社の有機EL素子を試作している有機光エレクトロニクス実用化開発センター(i3-OPERA)【写真2】を見学させてもらった。 i3-OPERAは、福岡県産業・科学技術振興財団が、経済産業省の補助金を受け、九州大学、福岡県、福岡市の協力のもと、有機ELの実用化を行う目的で、平成 25年4月19日に開所した施設だ。 まず目に入ったのは、多くの反応室を持つ成膜装置である。成膜室内に移動できるマスクが設けられており、3色蒸着方式が可能である。i3-OPERAは、オペレーターも雇用しており、Kyuluxが依頼するレシピに沿って1枚いくらで成膜してくれる。 Kyuluxのオフィスは、九大から約1kmの福岡市産学連携交流センター内にある。 筆者は、Kyuluxにて、同社の共同創業者の1人、CFOの水口啓氏にインタビューした。 水口氏は、ベンチャーキャピタル「九州ベンチャーパートナーズ」の社長として活躍していたが、安達教授の新技術を紹介され、2015年3月のKyuluxの創業に参画した。 「資金を出す投資家から資金を獲得する起業家へ、つまりピッチャーからキャッチャーへ転身したわけですが、違和感はありませんでした。 ただ、投資家からの出資を得るまでの道のりは容易ではありませんでした。日米両国で売り込みをしましたが、有機ELの寿命がなく、事業計画はただの紙芝居であり、可能性の話しかできませんでした。投資家との面談は400回程度実施しましたが、全部ダメでした。 ですが、サムスンとLGとの交渉でポジィティブな反応があった。『興味深い。協力できるならしたい』と。 2015年11月にアップルがiPhoneに有機ELを採用すると発表したことで、風向きが大きく変わりました。途端に日本のベンチャーキャピタルから電話が殺到しはじめたのです。サムスン、LGに加え、JOLEDなどからも出資の打診が相次いできました」 サムスンとLGには出資額を抑えてもらった Kyuluxは、最初の出資額として15億円を計画していた。 「サムスンやLGは『全額、うちが出してもいい』とまで言ってきました。 しかし、FIRSTプログラム等で国から約50億円を得ていること、TADFが有機EL材料の起爆剤になる可能性がたかいことなどから、複数社からの出資にこだわりました」 そこでサムスンとLGの出資額を抑えてもらい、JOLEDや多くのベンチャーキャピタルからの出資を得て、ついに15億円の調達に成功したのだった。 「現在は、従来の蛍光材料にTADFを添加する『ハイパーフルオレッセンス』の開発に取り組んでいます。狙った色が高い輝度で得られる特長を持ち、出資者からも『画像をくっきりさせる』と高い評価を得ています。この状況の基に、まもなく25億円~30億円の資金調達を実施するつもりです」 TADFをそのまま発光材料として使うよりも、従来の蛍光材料に添加剤として使うと、蛍光剤の性能を飛躍的に高めるのだという。 有機ELパネルの製造法で強みを持ちながらも、韓国メーカーに後れを取っているJOLEDは、背水の陣で、渾身の2つの事業戦略を取った。 安達千波矢教授は「有機物で世の中を変えたい」という高いビジョンを掲げ、次世代の発光材料を開発し、Kyuluxは懸命に実用化を目指している。 JOLED、Kyuluxともに技術的可能性は高い。今後は企業のマネジメント力が問われる、つまり「技術経営」必須の段階になるはずだ。日本有機ELのリベンジに期待しながら、両社の活躍を見守りたい。

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新iPhone廉価版「想像以上に高い」

アップルは9月12日、3機種の新型iPhoneを発表しようとしている。ニュースサイト「9to5Mac」によると、3モデルのなかで最も安価なモデルとして期待の端末の名称は「iPhone XC」になるという。9to5Macはこの情報を、中国の通信キャリアのプレゼンテーション資料で確認したという。 これはかつての「iPhone 5C」を連想させる名前であり、アップルがiPhone 5の廉価版としてリリースした5Cと同様なネーミング戦略をとるのは、非常に興味深い動きだ。しかし、この端末に関しては残念なニュースも報じられている。 確度の高い情報筋の話によると、iPhone XCはこれまで伝えられてきた価格よりも、ずっと高価な端末になりそうだ。「CNBC」はゴールドマン・サックスから得た情報として、iPhone XCの価格が849ドルになると報じている。 これは、以前報じられていた699ドルという価格を大きく上回ることになる。ゴールドマン・サックスのアナリスト、Rod Hallは彼らが以前予想していた価格が間違いだったことを認めており、849ドルという価格に関して強い自信を抱いているという 液晶ディスプレイを搭載した、「廉価版の6.1インチ端末」と報じられてきたこの端末は、600〜699ドル程度になると伝えられてきた。その価格を150ドル以上も上回ることは、多くのアップルファンをがっかりさせることになるだろう。 また、OLEDディスプレイを搭載した5.8インチ端末と、6.5インチ端末も、以前の予想を上回る価格になるという。これらの端末の名称は9月1日時点では、2機種とも「iPhone X Plus」になると報じられていたが、その後のリーク情報により、5.8インチが「iPhone XS」に、そして6.5インチが「iPhone XS Max」になることが、ほぼ確実視されている。 そして、iPhone XC はこれらの2つの上位機種と比べると、機能面で大幅に妥協したものになりそうだ。また、iPhone XCの発売が遅れることも既に報道されている。 これらのネガティブな要因にも関わらず、筆者としてはアップルが今回の新端末で大きく売上を伸ばすことを期待している。アップルがiPhoneの最新モデルに大幅な変更を加えるのは、数年ぶりのことになるからだ。 しかし、アップルは今年発売の3端末に「指紋認証」の搭載を見送ることも報じられており、これは顔認証と指紋認証を同時に備えるアンドロイド端末に比べると、大きな欠点と捉えられるかもしれない。

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旅館業界「民泊で空き家対策まずい」

2018年6月15日に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)。空き物件を民泊で活用したい不動産賃貸業者と、民泊による業界への圧迫を避けたい旅館業界。民泊新法は、2つの業界の意図が反映される形でできていったものだ。 日本旅館協会の鶴田浩一郎副会長らが2018年9月7日、「SHARE SUMMIT 2018」に登壇し、業界の立場から、新法施行の内幕と課題を語った。 日本の「民泊」はなぜ世界基準にならなかったか 民泊新法の施行後、多くの民泊ホスト(民泊の運営者)が事実上の撤退をしていった。 日本旅館協会の鶴田浩一郎副会長は、民泊新法について、「東京五輪で客室が足りないところから、民泊が議論され始めたので、(客室を増やせばいいという視点から)シェアエコとのボタンの掛け違えが最初から起きていた部分がある」と本来のシェアリングエコノミーの概念が、民泊新法には反映しきれていない現状を明かした。 民泊は家主がいて、地域での宿泊体験を通じて交流ができる。そういったメリットを、「日本では(客室を増やせばいいという視点から)民泊が入り、うまく差別化できなかった。法律においても、うまく表現できなかったのでは」(鶴田氏)と分析する。 会場で話したある旅館業界関係者は、民泊新法の策定は、不動産賃貸業とホテル・旅館業界という、利害関係が必ずしも一致しない2つの業界とのバランスどりをした部分があり、「本来のシェアエコの視点が十分に反映されていたとは言い切れない」とも語った。 旅館業界の懸念は、不動産の空き家対策 不動産賃貸業、旅館業界の双方ともに、法律やガイドラインの策定にあたっては観光庁と密なコミュニケーションを続けてきた。 こうした要望を受ける立場だった観光庁の鈴木貴典観光産業課長は、「いろんな立場の議論があり、法律に書き込めないこともたくさんあり、ガイドラインや政省令で決めているものも少なからずあった。(ガイドラインの案を各関係者に示すと)『これじゃあ厳しい』『緩い』と、どの案を書いても怒られる形でつらかった思い出がある」と吐露した。 その中でも、旅館業界の懸念は「不動産賃貸業としての民泊のあり方がどこまで盛り込まれるか」だった。 「民泊は、一般の住宅に宿泊するイメージだと思うが、(一方で)マンションやアパートの空室に泊まってもらうビジネス、いわゆる、不動産賃貸業としての民泊もある」と鶴田氏。このような民泊は、客室の供給力はあるものの、「(CtoCで宿泊体験を共有する)シェアエコとは随分と違うもの。民泊が不動産賃貸業の空き家対策(に終始するよう)ではまずい」という独自の意見を持ってきた。 「家主不在型」は本来の民泊か否か問題 2つの業界団体の意図を汲んだかのように、民泊新法は主に、家主が同居する物件を貸し出す「家主居住型」と、家主が離れていても物件を貸し出せる「家主不在型」の2つの条文に分かれている。 家主不在型は、コンビニなどでのチェックインができる。 ゲストハウスの開業支援などを行うNPOのアースキューブジャパンの中村功芳代表は、「家主がいない形で、コンビニでチェックインするというのは、地方としては街が壊れる。民が民をおもてなししないと、民泊ではないのでは」と、地方の観光地に与える影響も指摘する。 民泊新法が施行された6月15日から、まもなく3カ月。徐々に民泊の届出件数は伸びてきたが、多くのホストが撤退をしていった現実もある。 旅館業界の指摘には確かに納得できる部分はある。ウーバーが本業のライドシェアを諦めてタクシー配車システムの形でようやく、ハイヤー以外での正式サービスを名古屋で開始したのは先週のこと。「上陸」から実に5年がかかった。 こうした既存産業への影響が大きいサービスは、多かれ少なかれ各国の文化になじませるという意味でのローカライズが必要だ。Airbnbも「日本仕様」になっていくことには、仕方のない部分もある。 一方で、いまの民泊新法では手が回っていない課題も見え隠れする。今後日本が突入していく少子高齢化社会で増加するだろう、不動産マーケットに出回らない「空室」「空き家」の問題だ。 これは、不動産賃貸業でも、旅館業でもない、これまで日本になかった第三のマーケット。まさにCtoCの本丸だ。これらをいかに社会として効率よく使っていくか、という課題への解は、今のところ見えないままだ。 「相当の意見を聞く中で、このルールにたどり着いた。一定期間は、このルールの中でやる。民泊がどう健全にいい形になっていくか、現場の反応を見ながら考えないといけない」 (観光庁の鈴木氏)。 民泊新法は日本に合った形に変化し、根付いていくのだろうか? (文、撮影・木許はるみ)

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絶対してはいけない「ダメ借金」とは

日本経済はこれからどうなるのか。そして、その先行きは私たちの家計にどんな影響を与えるのか。2人の有識者が4つのテーマについて徹底解説する。第4回は「教育」について――。▼オール公立でも600万円超。奨学金は親子で返す一部奨学金もあり、大学卒業までの教育費は628万~1127万円学費の値上がりや非正規雇用の広がりを背景に、奨学金の返済に苦しむ若者が増えている。なかには返済できず、自己破産するケースもあるという。「経済格差が拡大していく中でやはり、重要なのは子どもの教育です。とくに幼児期の教育は重要で、ある研究によれば幼児期の教育費は、将来7倍になって返ってくると言われています」(大和総研の熊谷亮丸氏)だが、一方で教育費をかけすぎると、親の老後資金が枯渇しかねないという問題もある。「一般的なサラリーマン世帯で2人以上の子どもに多額の教育費をつぎ込んだら、親の老後資金は足りなくなります。中学・高校・大学と私立に行かせると直接的な学費だけで約1000万円。そもそも、大学に進学するメリットを享受するのは親ではなく子ども。そう考えると、教育費を親がすべて負担するのではなく、奨学金を借りて親子で協力して返済していくのは合理的な選択肢のひとつです」(熊谷氏)“ダメな借金”の最たるものがリボ払い奨学金には返済不要のものもあれば、利子がつくものもある。経済評論家の山崎元氏曰く「有利子であっても金利が低く、確実に返せる見込みがあれば、“してもいい借金”になりうる」というのだ。「会社員の時給がおよそ2500円だとすると、学生が時給1000円のアルバイトで学費をまかなおうとするよりも、大学4年間は奨学金でつなぎ、就職してから返済するほうが効率がいいわけです」(山崎氏)すべての借金がダメなわけではない。だが、「絶対にしてはいけない借金もある」と山崎氏は警告する。「“ダメな借金”の最たるものがリボルビング払い(リボ払い)です。よくあるのが会費無料や商品券プレゼントといった特典につられてリボ払いを設定し、そのまま忘れているケース。この場合、いくら店頭で『一括払い』と伝えてもカードの設定で自動的にリボ払いになる」(山崎氏)その結果、自覚しないまま、延々と高い利子を支払うというから恐ろしい。「今や金融機関はかつてないほどの不遇の時代に直面しています。かつてのように預金を集め、企業に融資しているだけではビジネスが成り立たない。だからこそ、金持ちには手数料の高い運用商品を売りつけ、貧乏人からはカードローンやリボ払いの金利をむしりとる。そのカモにならないことが、この時代を生き抜く最初の一歩です」(山崎氏)山崎 元(やまざき・はじめ) 経済評論家 1981年、東京大学経済学部卒。楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。共著に『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』など。 熊谷亮丸(くまがい・みつまる) 大和総研常務執行役員チーフエコノミスト 1989年、東京大学法学部卒。日本興業銀行調査部などを経て2007年大和総研に入社。共著に『この1冊でわかる 世界経済の新常識2018』など。 (撮影=岡田晃奈 写真=iStock.com)

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経団連会長、前任の路線を次々否定

影響力の低下が囁かれて久しい経団連が、久々に注目を集めている。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は9月3日の記者会見で、就職活動の時期を定めた指針について、 「個人的な意見だが、終身雇用や一括採用が時代の変化で見直される中、指針は廃止してもいいとの考えだ」 とぶち上げたのだ。就活日程について「3月に会社説明会解禁」「6月に採用面接など選考解禁」などと定めた現行ルールを撤廃し、「自由競争」を導入しようという目論見だ。 「経団連の定めた自主規制ルールは近年、経団連の非会員である外資系やベンチャーが学生の青田買いを進めたことで有名無実化していた。優秀な学生を外資などに奪われる危機感から、中西会長は指針廃止を訴えたのでしょう」(経済評論家の山崎元氏) 実は中西会長の“英断”はこれだけではない。経団連は発信力の強化を謳い文句に2015年にYouTubeの公式チャンネルを開設し、会長の定例会見を公開してきたが、これを就任直後に廃止したのだ。 「閲覧者が異常なほど少なく、1回平均で数十人、ほとんどが身内でしょう。中西会長はこんな再生数じゃ意味がないと打ち切りを決めたそうです」(全国紙経済部記者) 日立社長時代に「選択と集中」で建て直しに成功した中西会長らしいやり方だが、こんな事情もある。 「重厚長大型産業の日立を率いる中西さんとしては、前任の会長だった榊原定征さんが東レ出身のこともあり、“軽団連”と言われるほど軽く見られるようになったと不満を持っていたよう。そこで、榊原さんがコロコロ変えていた就活解禁時期を撤廃し、彼が肝煎りで始めたYouTubeも止めた。榊原路線の否定こそ経団連復活の近道と考えているようだ」(日立関係者) 経団連広報本部は、「動画配信の取りやめは組織としての判断。より効果のある広報のあり方を検討している」とコメントする。 YouTubeの再生より経団連の再生を目指すということか。 ※週刊ポスト2018年9月21・28日号

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会社で表彰導入、やる気失う社員

報酬を多くもらえれば、「やる気」が高まるのが常だろう。しかし、報酬だけがやる気の源泉とは言えない。 エドワード・デシ教授の著書「人を伸ばす力」では、やる気に関する実験が紹介されている。大学生をAとBの2つのグループにわけて難しいパズルに取り組む実験で、はじめは両グループとも自由に解かせた。 翌日、Aグループには正解するごとに報酬を出す仕組みを導入し、3日目に再度報酬なしのやり方に戻した。一方、Bグループは3日間とも報酬なしで自由に解かせた。 すると初日はどちらのグループも終日熱心にパズルを解いていたのに、3日目は違いが出た。Bグループは変わらず面白がって取り組んだが、Aグループは義務のようにパズルに向き合い、休憩時間は違うことをするようになったのだ。 やる気の根源は人それぞれ 報酬や賞罰などでつくられる「外発的動機づけ」と、自ら工夫し、興味関心をもって取り組めるようにする「内発的動機づけ」と、動機づけには大きく2つのアプローチがある。外発的動機づけも、人の力を引き出す大きな要因だが、それだけで成長を支え続けるのは難しい。内発的動機づけをいかに行えるかが、人の成長、組織の成長を大きく左右する。 注意すべきは、一人ひとり、何がやる気に影響するかは同じでないということだ。 -自分は昇進することが何より大事だから、部下もきっとそうだろう -褒めて伸びるなんて考え方は甘い。叱って伸ばすのがオレ流だ -あの子にはまだまだ期待しているから、この成績でまだ認めるのは早い といった自己判断だけで動くと逆効果になる場合もある。成果を承認してくれないことに不安を覚える人、細かく管理されない方が成果を発揮できる人など、個々人の思考行動は様々だ。それを理解した働きかけが必要になる。 人事施策や部門運営ルールを導入する際にも、「内発的動機づけ」や「個々の多様な思考行動」を踏まえておく必要がある。 前述のデシ教授の実験では、元々自主的に面白がってパズルを解いていた人が、報酬という外的要因が入ったことで、その後自主的行動が減退してしまった。アンダーマイニング効果と言われる現象であるが、何らかの施策が同様の現象を引き起こしてしまうこともあり得る。 有能性・自律性・関係性 たとえば月間MVP表彰を新たに導入したとする。称賛する文化をつくり、切磋琢磨して頑張ろうという意図で設計したものだ。しかしMVPの選び方を曖昧にしたため、上司からの評判が人だけが表彰され続けた。すると、地道に頑張って成果を出していた人が「頑張っても評価されないんだ」とやる気を減退させてしまった……。 外発的動機づけと内発的動機づけは補完関係にある。両方活用することが基本的には有効であるが、動機づけの違いを理解しておかないと誤った方向に進んでしまう。表彰の例も、的確な運用をすれば良い効果をもたらせたはずだ。 前述のデシ教授は、モチベーションをあげる元には内発的動機に働きかける「有能性・自律性・関係性」への欲求があると述べている。 部下に向き合う時、あるいは人事施策を考える時に、「その発言は部下の有能性を否定していないか」「その施策は自律性を低下させる方向に動かないか」と意識することが、職場のやる気を高める一歩になるのではないだろうか。 連載 : 人事2.0 ──HRが作る会社のデザイン 過去記事はこちら>>

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ムダな仕事、しがみついてしまう人々

こんにちは、人事戦略コンサルタントの松本利明です。PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社などで24年以上、人事と働き方の改革を行ってくる中で「おやっ!?」と思ってしまうことが実に多く発生してきました。 実は、世間で言われる「セオリー」の9割が間違っているのです。思ったような効果が出ないのは、計算ミスより計算式そのものが間違っているのです。うすうす、あなたも気づいているのではないでしょうか? そこで前回に引き続き、「働き方改革」のセオリーにありがちな落とし穴と、それに代わる速くラクに成功するコツについて解説していきます。 ムダな仕事にしがみつくスタッフが出てくる理由 働き方改革を進めていく時、ムダな仕事は徹底的にゼロにしていきたいものです。 ムダな仕事の典型例の1つが、単に習慣化しているだけの資料作成です。その中には、「長年作成し続けてきたけど、そう言えば、この資料、何に使っているのか見たことがないな」なんていうものが意外と埋もれているものです。 何年も前の経営会議で、先代社長がふいに「こういう資料が見たい」と口にした結果、次回の経営会議から必ず用意する定型資料になったけれども、よくよく調べてみると当の先代社長すらその資料に目を通すことはなくなっていた――なんていうのは会社組織の中ではよくあることです。ですが、「もう作成しなくていい」という指示が下りてこないと、現場は無用の資料を作り続ける羽目になってしまいます。 賞味期限が切れ、会議やマネジメントで使われなくなった資料やフォーマットというものは、どんな組織でも少なからずあるもの。そのムダな書類作成の手間が見逃されてきたのは、これまで資料の活用度をチェックする習慣がなかったからです。「働き方改革は資料の活用度を見直すいい機会」と捉え、この際、使わない資料を作るムダは真っ先に削減していきましょう。思い切って資料の追跡調査を行い、必要性の有無の判断をつけることは働き方改革の第一歩です。 ただ注意してほしいのは、この時に陥りやすい「罠」があることです。 「よし、ムダな仕事が見つかったぞ。じゃあそれをすぐ止めてしまおう」と意気込んでしまったばかりに、その仕事を担当していたスタッフには、「その仕事はムダな仕事なので止めなさい」などとついストレートに指示してしまいたくなるもの。しかし、これは厳禁です。 指示する側は軽い気持ちで口にした言葉であっても、言われた方はそう簡単に受け入れることができない指示だからです。 というのも、経営サイドからは「ムダ」に映るようになった仕事であっても、その仕事に携わってきた人にとっては、それなりのプライドを持ってやってきた仕事なのです。もしかしたら、その人の「仕事人生の価値そのもの」と考えている可能性さえあります。そうであれば、「その仕事は要らない=あなたの仕事人生そのものがムダで要らない」と宣告されたも同然。長年の仕事人生だけでなく人格まで否定されるくらいの衝撃です。 あなたが指示を出したスタッフが、もしもそんなふうに受け止めてしまったらもう大変なことになってしまいます。 自分の仕事人生を否定すれば、自分の存在価値が揺らぎます。だから、指示を出された側は、例えそれが屁理屈であっても、その仕事を「ムダ」とは認めず、無理やりにでもムダな仕事に意味を見つけだそうとします。 無理やりその仕事を取り上げても効果はないでしょう。黙ってやり続けるか、全体の生産性につながるとは限らない、似たような仕事を自分で作り出してしまうのがオチです。 「そのムダな仕事は止めなさい」はNGワード せっかく見つけ出したムダな仕事をストップしてもらうには、心理的なプロセスを踏む必要があります。直球はデットボールになると相手に致命傷を与えてしまいます。ここは緩やかな変化球で様子を見ましょう。 「今まで担当していた仕事がムダだったから」ではなく、「その仕事は重要だったけど、優秀なあなたには、こちらの重要な仕事を担当してほしい」と伝えるのです。 こんなふうに持っていけば、指示を受けたスタッフの心理的な抵抗はかなり減らせます。ただ、当の本人は現在担っている「ムダな仕事」に誇りを持っているので、スムーズに仕事を切り替えてもらうためには、もうひと工夫が必要です。 それは、本人にとっても、チーム全体にとっても、「それをやったら生産性が上がりそう」と思える仕事を担当してもらう、ということです。その時点で、そんな仕事はチームの中に存在しないかもしれません。だったらそれを作り出していくのです。 具体的に説明しましょう。 仕事のミッション(使命・存在意義)を再定義する 今の仕事を止め、違う仕事を担当してもらうには、大義名分が必要です。ただし「納得感」と「それならやりたい」と思えるワクワク感がないと、大義名分がウソだと見透かされ失敗します。 そこで最初にやらなければならないことは、現在担当している仕事の「ミッション(使命・存在意義)」を見直すことです。 ここで1点確認しておいてほしいことがあります。「会社や部署が掲げるミッションなんてただのスローガンみたいなもので、どの会社にでも当てはまる抽象的な言葉じゃないか」と感じている人がいるとすれば、その認識は今すぐ改めなくてはなりません。 ミッションを日本語にすれば「使命」や「存在意義」ですが、それは自分たちから宣言すればおしまい、というものではありません。仕事やサービスの提供先が「その宣言通りだ」と認めてくれてはじめて「ミッション」として成立するのです。 私は以前の記事(「『ありふれたキャリア』から価値を見出す唯一のコツ」)の中で、「周りからもらえる『ありがとう』の声の中身こそが、それぞれの個人の持ち味であり、パーソナルブランドである」という説明をしました。これは、部署やチームにとっても同じ事が当てはまります。 なので、仕事のミッションを見直すという作業は、現在担当している仕事を提供した時、相手がどう喜んでくれるのかを考えることから始めればいいのです。「どう喜んでくれるか」について、「どんな『ありがとう』の声をかけてもらうことが自分たちの存在意義なのか」と考えてみれば、分かりやすくシンプルな言葉で出てくるはずです。 仮にあなたが経理部の一員だったとします。経理部門のミッションが「確実でミスがない経理」だったらどうなるでしょうか? そのミッションであれば、他部署のスタッフに対して、期日通りに正確な伝票書類の提出を求めることになるでしょう。その代わり周りからは「経理は難しい。手順通り書けと言われても分かりづらいし、質問しても専門用語を並びたてられて訳が分からない。その上、経費の処理では『NO』ばっかりだ」と思われてしまうかもしれません。これでは「ありがとう」の声は集まってきません。 では、経理の仕事に社内の人たちが喜んでくれていたら、あなたたちはどんな「ありがとう」の声がもらえるか想像してみてください。 それが「誰でも分かるように作業手順を簡単にしてくれてありがとう」という声だとしたら、例えば「サルでもわかる簡単な経理」という表現が経理部のミッションになります。 現状からではなく、ゴールから打ち手を逆算する ミッションが定まったら、「そのミッションを達成するには?」という視点から逆算して具体的な「打ち手」を考えていきます。この時、現状はいったん無視します。現状からの改善策を考えてしまうと、どうしても今の延長線上の打ち手しか出てこなくなるからです。 アポロ計画で人類が月に行けたのは、飛行機を改善し続けたからではありません。月に到着するために必要なロケットの仕様を具体化し、その仕様を実現する視点から打ち手を洗い出していったからです。ミッションを実現するためには、周りから期待通りの「ありがとう」の声を引き出せるよう、ゴールから逆算して打ち手を出すのが早道なのです。 逆算して考えた打ち手以外の仕事は「ただのムダ」 逆算して打ち手を考えたら、計画の実現に向けて、重要な打ち手からチーム内のメンバーに割り振っていきます。 「打ち手」をアサインする作業が終わったら、打ち手以外の仕事は全部廃止しましょう。「ミッションや目指す姿につながらない仕事はただのムダ」と整理してしまうのです。 ここが肝なのです。ムダな仕事をしていた人も、新しいミッションから逆算した計画のアサインの計画に乗っていますから、「今までの仕事より、もっと重要な仕事をやって欲しい」という大義名分に納得感が伴います。そうなればすんなりとムダな仕事を止め、フレッシュな気持ちで、ミッション実現に結び付く仕事に取り組んでくれるようになるのです。 働き方改革は、組織内のメンバー全員が「効率的な仕事」と「充実した私生活」「やりがいと成長」を手に入れるためのものです。「ありがとう」の声からミッションを再定義すれば、意外とスンナリ進みますし、実はこの手法は働き方改革を成功させている組織は必ず実施している打ち手なのです。逆に言えば、「現状改善」という従来の延長線上の発想から抜け出せないと、チームメンバーはなかなかムダな仕事から解放されず疲れ果て、働き方改革も失敗してしまうのです。

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