北海道のブラックアウト、なぜ起きた?

電力需要の半分を賄っていた苫東厚真発電所が落ちた

2018年9月8日(土)

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 まさか日本で「ブラックアウト」が起きるとは――。

 9月6日午前3時8分頃、北海道胆振(いぶり)地方を震源とする地震が発生。北海道全域で全域停電、いわゆるブラックアウトが起きた。一時は、北海道内のほぼ全世帯に当たる295万戸で停電した。

北海道で震度7  地震で停電したままの札幌市中心部=6日午後6時38分(出所:共同通信イメージズ)

 ブラックアウトの発生は、9電力体制のスタート以来、初めてのことだ。東日本大震災によって東京電力・福島第1原子力発電所事故が発生し、津波で太平洋沿岸部の発電所が被災した時でさえ、ブラックアウトは起きなかった。

 では、なぜ今回、ブラックアウトが起きたのか。原因を端的に言えば、北海道電力・苫東厚真火力発電所(厚真町)の一極集中だ。

 苫東厚真は石炭火力発電所で、3機合計で定格出力が165万kW。道内最大規模を誇る。北海道電力によると、地震発生時、道内需要310万kWの約半分を苫東厚真が賄っていたという。

 電気は貯めることができない。常に需要(電力の使用量)と供給(発電量)を一致させておく必要がある。今回のように、需要は変わらないのに供給が減ると、過負荷の状態となり、周波数が低下する。

 周波数の低下は、停電発生を意味する。各変電所に設置してある周波数低下防止装置(UFR)が、周波数が一定値以下になったことを検知すると、停電が他の地域に広がらないように系統を遮断する。停電しているところに電気が流れると通電事故が発生したり、設備が損傷してしまうためだ。一方、発電所も周波数の低下を検知すると、自動で停止し、系統から自らを切り離す(解列する)。

 今回、震源地の近くに立地する苫東厚真火力発電所は、かなり揺れたはずだ。地震発生からほどなくして苫東厚真発電所は停止しただろう。その瞬間に、道内の供給は一気に半分に落ち込み、周波数が急激に低下した。

 北海道は人口も少なく、電力需要自体が小さい。北電が発表した9月7日の最大需要予測は380万kW。例えば、東電の最大需要は4700万kW弱。北電エリアの10倍以上だ。仮に東電エリアで苫東厚真と同規模の発電所が停止したとしても、供給の急激な落ち込みにはならない。

 地震発生が深夜で、電力需要が日中よりも小さく、他の発電機の稼働が少なかったことも、苫東厚真の脱落の影響度を大きくした。通常であれば、他の発電機が周波数の低下を検知して、出力を上げるなどの動きをする。だが、今回は苫東厚真の脱落分を回復させる手立てがなかった。

 こうして苫東厚真発電所の周辺部から、周波数の低下は徐々に道内に広がった。いくら系統を遮断しても、需給のバランスは取れず、ドミノ倒しのように停電エリアが広がっていった。同時に、発電所も連鎖的に停止した。こうして、北海道はブラックアウトしたのだ。

コメント41件コメント/レビュー

《泊原発が動いていれば、との意見があるが、そのような議論は無意味だと思う。日本の原発は、東日本大震災以降、原子力規制委員会が安全性を審査した上で稼動させるルールになっている。その審査が終わっていない以上、稼動させることはありえない。》

どうかな。これが厳冬期などで「電気が来ないとマジで大勢の人が凍死する」という状況になれば、そんなお花畑的なルールなど無視されて(あるいはあっという間に審査が終わって)原発稼動されるんじゃないの。
今回のブラックアウトは大量凍死が免れてるだけ季節的にはラッキーだったが、電気不足で搾乳機が動かずに乳牛がバタバタ死んでるというニュースも報道されている。そろそろ道民からは「原発を動かしてでも電気が欲しい」という声が上がってくるんじゃないか。
(ただし安倍政権も馬鹿ではないので、枝野さんや志位さんあたりが頭を下げて原発を動かしてくれと言ってこない限り泊の再稼動は認めないだろう、という読みはあるかもしれないが。)(2018/09/11 10:06)

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「北海道のブラックアウト、なぜ起きた?」の著者

山根 小雪

山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション、日経エコロジーを経て、2010年1月から日経ビジネス記者。エネルギーを中心に、自動車や素材など製造業を担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

《泊原発が動いていれば、との意見があるが、そのような議論は無意味だと思う。日本の原発は、東日本大震災以降、原子力規制委員会が安全性を審査した上で稼動させるルールになっている。その審査が終わっていない以上、稼動させることはありえない。》

どうかな。これが厳冬期などで「電気が来ないとマジで大勢の人が凍死する」という状況になれば、そんなお花畑的なルールなど無視されて(あるいはあっという間に審査が終わって)原発稼動されるんじゃないの。
今回のブラックアウトは大量凍死が免れてるだけ季節的にはラッキーだったが、電気不足で搾乳機が動かずに乳牛がバタバタ死んでるというニュースも報道されている。そろそろ道民からは「原発を動かしてでも電気が欲しい」という声が上がってくるんじゃないか。
(ただし安倍政権も馬鹿ではないので、枝野さんや志位さんあたりが頭を下げて原発を動かしてくれと言ってこない限り泊の再稼動は認めないだろう、という読みはあるかもしれないが。)(2018/09/11 10:06)

<震災時の状況>
泊原発:停止中/震度2発生
苫東厚真火力:稼働中/震度6強発生

<もし震度が逆だったら>
泊原発:停止中/震度6強発生   ⇒停止中なので問題なし(※)
苫東厚真火力:稼働中/震度2発生 ⇒震度2程度なら稼働問題なし

<もし稼働が逆だったら>
泊原発:稼働中/震度2発生     ⇒震度2程度なら稼働問題なし
苫東厚真火力:停止中/震度6強発生 ⇒停止中なので問題なし

<もし両発電所ともに稼働中だったら>
原発:稼働中/震度2発生      ⇒震度2程度なら稼働問題なし
苫東厚真火力:稼働中/震度6強発生 ⇒現実と同様に正しく緊急停止
⇒⇒ブラックアウトは発生しないと思われる

(もし両発電所共に震度6強が発生したら・・?
 そんな広域大規模地震発生は北海道が終わるレベル(原発関係なし)
 ⇒東日本にも津波などの大影響ありなので論ずる意味がない)

(※)泊原発のWebにあるように、何重もの安全対策があるので問題ないと思われる
   http://www.hepco.co.jp/energy/atomic/safety_improve/safety_point_outline.html(2018/09/11 09:45)

冬季のブラックアウトを避けるため、一刻も早く泊原発を再稼働すべき。
福島第一原発事故の教訓を生かした対策により、非常時の安全性は格段に高まっている。
冷静に科学的判断すれば、再稼働すべきという結論に至る。(2018/09/11 07:34)

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