テレビや雑誌などで見かけることが多いので、ご存知の方も多いことでしょう。
『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法』(河野玄斗著、KADOKAWA)の著者は、東京大学医学部医学科5年生に在学中(2018年現在)で、4年生のときには司法試験にも一発合格したという人物です。
その実績が華々しいだけに「天才」などと紹介されることも多く、「一瞬で記憶できる能力がある」「とにかくずっと勉強している」「頭のつくりが違う」などというイメージを持たれがちだといいますが、本人はこれを否定しています。
僕にはみなさんが想像するような、常人離れした記憶力や特殊能力はありません。ただひたすらに、勉強の仕方がうまいのです。(中略)僕の今までの「勉強法における成功」は、すべて自分が持つ「勉強の方法論」に従った結果にすぎません。
そういう意味で僕は天才ではなく、だからこそ、そんな僕の勉強法は、「誰にでもすぐに使えて超強力な勉強法」です。(「はじめに 効率を突き詰めた、誰でもすぐに使える勉強法」より)
同じように学んでいたとしても、実力には差が生まれてきてしまうものですが、その鍵は「勉強の要領のよさ」にあると著者は言います。
「勉強しているように見えないのに、どうしてあんなに成績がいいんだ?」というタイプの人はシンプルに要領がよく、勉強の仕方がうまいだけだというのです。いいかえれば、効率を突き詰めて勉強すれば、誰でもそのように思われる側に立てるということ。
つまり本書では、そのような考え方を軸として、勉強の仕方をさまざまな角度から考察しているのです。
きょうはCHAPTER 3「点数を底上げするための技を身につけようーー勉強を成功に導くための4つのテクニック」中の「01. 勉強効率を爆速で上げる方法」から、いくつかのポイントを抜き出してみることにしましょう。
勉強のみならず、仕事のパフォーマンスを上げることにも応用できそうなパートです。
快適な勉強のために、ストレスを減らそう
勉強を成功に導くためのテクニックのひとつとして、著者は「自分の勉強にとってストレスになるものをとにかく減らし、勉強効率を上げることを強く意識する」ことを挙げています。
「楽しく勉強する」「自分を責めない」といった大小さまざまなテクニックが、ストレスを減らすことにも役立つということ。
勉強中に別のことが頭に浮かんでしまうと、勉強の効率が落ちてしまうもの。特に、ストレスを原因としたイメージは強く長く頭に残ってしまうため、それだけ勉強への影響も大きいだろうといいます。
睡魔との戦い、スマホの誘惑、人間関係のしがらみなど、誰もがなんらかのストレスを抱えたことがあるはず。そして、それらを抱え込んだまま作業を続けた結果、ミスをしてしまって余計に落ち込んでしまうといったこともあるのではないでしょうか。
しかし、それではもったいない。せっかくかけた時間や労力を最大限に生かすためにも、なるべくストレスを感じないように勉強し、自分の勉強の効率を上げるように意識することが重要だというのです。(125ページより)
ストレスを感じるときは、さっさと寝てしまおう
眠気や不安は、勉強の効率を下げる最大の敵。眠くて頭がぼんやりしているとき10時間机に張りついて勉強したとしても、必ずしもそれが意味ある勉強であるとは言い切れないわけです。
上記にもあるように、勉強するうえで大切なのは、勉強によるストレスをなるべく減らすこと。「勉強するだけでストレスだ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は勉強そのものよりも、空腹や肩こり、眠気などの「体のつらさ」がストレスにつながることが少なくないのだそうです。
そして著者は、多くの人が感じているストレスの多くは「眠気」によるものだと考えているのだといいます。
眠くて頭がぼんやりしていると、脳が働きません。その状態で学習をしても、記憶に残らないことがほとんどです。 「10の効率」でダラダラ10時間勉強する(=10×10)くらいなら、3時間寝てしまって、頭がスッキリした状態で集中して「20の効率」で7時間勉強する(=20×7)方が圧倒的に効率的です。
それに、眠気というストレスを感じながら無理に長時間勉強をしてしまうと、勉強そのものが嫌になってしまうかもしれません。(127ページより)
そして、もうひとつ厄介なストレスが「不安」。たとえば夜中にひとりで勉強しているとき、「受験に失敗したらどうしよう」「勉強が本当につらい」というような不安に襲われることはあるものです。
不安自体は人間的なものですが、不安を感じながら勉強すると、眠気と同じように非効率的になってしまうということ。頭のなかが不安でいっぱいになり、勉強している内容がまったく頭に入ってこなくなるわけです。
そこで、そのような不安を感じそうになったときも、まずはすぐに寝ることが得策。1回寝て頭をリセットすることで、心配を忘れて勉強できるようになるわけです。
横になってもなかなか眠れないときは、まずは四肢の脱力を意識することから始めましょう。起きているときは、常に四肢に少なからず力が入っています。
そして、寝るときもその名残で、まったく力を入れていないつもりでも多少の力が入ってしまっていることが多いのです。 そのため、まずは睡眠を邪魔する余分な力を意識的に抜いて上げることが大事です。
気持ちを落ち着かせたうえで四肢を脱力させてあげましょう。その際、右手→左手→右足→左足と順に力を抜いてあげるとやりやすいでしょう。(128ページより)
四肢の脱力後に、もし目をつむってもいろいろ考えてしまって寝つけないときは、考えが浮かんだ瞬間にフワッと「その考えが消えて無になる」イメージを繰り返してみるといいとか。
少しでもなにかの考えが浮かんできそうになったら、その瞬間にふたたび無になるということ。
最初は難しいかもしれませんが、「無になる感覚」を徐々につかめるようになるといいます。(126ページより)
場所を変えて集中できる環境をつくろう
「楽しみの誘惑」もまた、つらいストレスのひとつ。楽しいことを思い切りやるのはいいことですが、「ゲームをしたいのにできない」「遊びたいのに勉強しなければならない」というような思いは、ストレスになってしまうわけです。
そのため、こうしたストレスを積極的になくしていくことも大切だということ。
そして、そんなときの対処法として有効なのが「場所を変えること」なのだそうです。自分自身を変えるのではなく、周囲の環境を変えてみるという発想。
たとえば、僕は司法試験の勉強をしていたとき、スマホが手元にあると気になってなかなか勉強に集中できませんでした。なので、スマホを家に置いて、自宅からちょっとだけ離れたカフェへ自転車で行って、そこにこもって勉強をしていました。
最初は、勉強の最中にスマホが気になる瞬間もありました。しかし、スマホが手元にないため「仕方ない」と割り切ることができたのです。スマホの誘惑に打ち勝つための労力はいつしかなくなりました。(129ページより)
スマホを置いて出ることには、最初は抵抗があるかもしれません。しかし著者の場合、「○時から○時はカフェで勉強する」と習慣化したあとは抵抗感もなく実戦できたそうです。(129ページより)
勉強時間は自分のペースで設定しよう
友だちと勉強することもあるでしょうが、その際に気をつけたいのが「相手のペースで勉強してしまう」という罠。せっかくスケジュールを組んだのに、友だちの苦手科目にばかり集中して取り組んでしまったら、自分の成績が上がりにくくなるわけです。
つまり効率を上げるためには、友だちと協力しつつも、勉強時間を自分のペースで管理することが重要だということ。
自分のペースで勉強するということは、かっちり決めたスケジュールに沿うことだけを意味しません。ときには「やる気が出ないからやめる」のも自分のペースなのです。
たとえば、僕は大学受験や司法試験時代、「1日○時間やるぞ!」と目標を決めて勉強したことは一切ありませんでした。 やる気が出たときに勉強する、疲れたら寝る、回復したらやる…と自分の状態で勉強をするかしないかを決めていました。(129ページより)
先ほどのストレスの話にもつながりますが、「やる気がないな」と思いながら勉強するのがいちばんダメなパターン。なぜなら、情報に対しても受動的になってしまうからです。
その一方、やる気に満ちた状態で勉強すると、「すべての情報を理解しよう、覚えよう」と能動的になるため、頭への入り方が格段に違ってくるといいます。
つまりは、「やりたくなったらやる、そして眠かったら寝る」のが、もっとも効率のよい最適な勉強のペースだということ。
ただし、このマインドセットには、勉強をやりたくなる気が一生怒らなくなってしまうというリスクも。そこで、モチベーションをしっかり高めていくことが必要になっていくのだともいいます。(133ページより)
独学の意識を持とう
勉強するにあたっては、「教わるのではなく、自分から勉強をする」という意識を持つことも大切。理由は、「最終的に右派、独学がもっとも効率のよい勉強手段になる」からなのだそうです。
たとえば著者は、塾の夏期講習を朝から晩まで毎日受けようとすることは、とても非効率的だとしています。なぜなら講義とは、あくまで独学を補助するためのツールとして使うものだから。
本来、勉強は独学でするものなので、まず独学をし、わからなかったところを先生に聞くというやり方が最も効率的なのだというのです。
夏期講習や講義を受けたとしても、結局のところ、自分で学習して理解する時間も取らなければなりません。下手すると、ただ授業を漫然と聞いているだけになってしまう場合もあり、自分で考え、理解する力が身につかない可能性もあります。
学習は、インプットだけではなくアウトプットができるようになって初めて完了するものです。先生の講義はサプリメントのようなもの。講義ばかり受けて自習しないのは、サプリメントばかり飲んで、肝心の食事を抜いているのと同じです。(137ページより)
そのため、講義に出るのは、いまの自分に必要だと思う最低限にとどめ、まずは自習の時間をとるべきだと著者は主張しています。(137ページより)
注目すべきは、勉強についての著者の考え方です。勉強は「努力の方向さえ間違わなければ」、かけた時間を裏切らない「コストパフォーマンス最強の遊び」だと断言しているのです。
勉強はリターンが大きい娯楽であり、勉強できる環境にあるというのは贅沢なことなのだとも。
つまり、難しく捉えられがちな勉強を前向きに捉えているところが著者の、そして本書の魅力であると言えるでしょう。
Photo: 印南敦史
印南敦史
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