紛失時の補償サービスまで付属した、実売6千円台の完全ワイヤレスイヤホンの実力は?
~エム・エス・シー「MS-TW2」レビュー
事実、完全ワイヤレスイヤホンは、1万円を切る価格帯の製品も多数存在します。エム・エス・シーが「M-SOUNDS」ブランドで販売しているBluetooth 5.0対応の完全ワイヤレスイヤホン「MS-TW2」もそのひとつで、1万円を切る安価な価格設定ながらIPX4相当の防汗設計で、かつ片方のピースをうっかり紛失・水没・破損させた場合に、特別価格で各パーツを購入できるサービスが用意されていることが特徴です。
製品パッケージ。今回紹介しているブラックのほかにホワイト/ゴールド、レッドの3色展開
同梱品一覧。日本語のクイックスタートガイドなどが付属するのは他製品に比べての強みです
今回の「MS-TW2」は、こうした事態に備えて、片側のイヤホンおよび充電ケースだけを安価に購入できるサービスが用意されています。通常の完全ワイヤレスイヤホンは、イヤホンの一方を紛失すればまるごと買い換えるしかありませんが、本製品であればそうした心配もないというわけです。1万円クラスの価格帯の製品で、こうしたサービスを展開しているのは稀です。
製品は、国内メーカーが手がけていることもあり、日本語のスタートガイドとリファレンスが付属しており、最初のペアリングの段階でいきなりつまずくという、初心者にとっての最初のハードルがありません。音質については、以前紹介した「iQbuds」のような数万円クラスの製品には及びませんが、この価格帯の製品としては優秀な、堅実な音作りが特徴です。本製品の紹介文にある、低音から高音までバランスのよい音、という表現がぴったりで、長時間聴いていても疲れません。
イヤホンは左右で形状が異なる仕様。ピースは3サイズが付属
側面。小柄なため装着しているのが周囲からわからないほど
メタリック加工が施された側面ボタン。押し込みはやや硬め
イヤホンの電池の持ちは約2.5~3時間と標準的なレベルで、付属ケースで計5回の充電が可能なため、USBからの給電なしでトータル15~18時間持たせることができます。かつ15分の充電で1時間使えるクイック充電機能があるため、充電していなかったことが発覚しても最小限の時間で通勤時間の片道程度は持たせられます。
また特筆すべきは充電器を兼ねた付属ケースで、マグネット構造でイヤホンをしっかりと収納できます。完全ワイヤレスイヤホンの中には、充電ケースとの接触が悪く、いざ使おうと取り出すとまったく充電されていなかった、というアクシデントが起こりがちです。その点、本製品は、イヤホンを磁力で吸着させる構造になっており、接点がずれないばかりか、ケースのふたを開けた状態で上下逆さにしても、イヤホンががこぼれ落ちることがありません。
充電器を兼ねた付属ケース。持ち歩きにも便利な形状
マグネットで吸着するため接点がズレず確実に充電できます
充電はUSBで行います。トータル15~18時間の駆動に対応
しかしながら、それらのほとんどは、左右のイヤホンの通信がひんぱんに切れたり、ペアリングをほぼ毎日やり直さなくてはいけなかったり、音質がモノラルイヤホン並みだったりと、黎明期の完全ワイヤレスイヤホンにありがちだった問題をいまだに抱えています。なかには本来は販売自体がNGな、技適などの認証を取得していない製品もあるほどです。
もちろん筆者は販売されているすべての製品を試したわけではありませんが、実際にいくつかを買って試した限りでは、こうした「地雷率」は、他のジャンルに比べても異常に高いのが現状です。このジャンルの製品は、レビューにかなり作為的な点数がつけられているケースが多いのも、製品のほんとうの評価を見抜きにくくしています。
なので筆者に言わせると、いま完全ワイヤレスイヤホンを買うに当たっては「1万円」からいくら下げられるかを考えるのではなく、1万円という予算の中でどれだけ質のよい製品を選ぶかに注力したほうが、当たりの製品を引きやすいと言えます。千円や二千円をケチって、使い物にならない製品をひいてしまっては元も子もありません。
そうした観点で、国内メーカーが品質管理を行っており、パッケージはもちろんマニュアル類も日本語、また前述の補償サービスが付属した本製品は、よい選択肢だと言えます。唯一使っていて気になる点があるとすれば、側面ボタンの押し込みがやや硬いことですが、これは使っているうちに解消されてくるかもしれません。
と、ここまで書いておいて恐縮ですが、大手家電量販店でも定番として扱われているこの製品、実は現在、標準価格は9,980円ながら、実売6千円台まで値下がりするなど、リーズナブルにいっそう磨きがかかっています。新製品ながらこの値段というのは、少々驚くべきことです。完全ワイヤレスイヤホンの入門機を探している人、また期せずして前述の「地雷」を引いてしまい、買い替えの候補を探している人にもおすすめです。
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn