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不動産投資といえば、スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス融資において、不正によりたくさんのオーナーが多額の借金を抱える問題が発生したばかりです。
このため、不動産投資には不透明感があり、少し距離を置く人も出てきていますが、そのような状況の中、将来の収益を自分自身で確認してリスク回避に利用できる簡単ツールが登場しました。
※ パソコン上で動作するツールのため、現在のところスマートフォンでは利用できません。
オリックス銀行「キャッシュフローシミュレータ」
マンションやアパートへの投資を考える個人向けに、オリックス銀行が業界初の試みとして開発した、将来の賃料収入の下落リスクなどを人工知能(AI)が予測するキャッシュフロー・シミュレータです。
投資用不動産を購入したあと、不動産の運営収支でローンの返済がまかなえるのかを考えるうえで重要な要素となる「賃料」「空室率」などの将来予測を、AI(人工知能)が試算します。これにお客さまの借入希望条件を組み合わせることで、シンプルな操作で、最長 50 年間のキャッシュフローを試算することができます。
5800万件もの賃貸物件情報を学習した AI が、家賃の下落や空室率の拡大などを予測する上、修繕費などの想定経費も加味してくれます。
シミュレーションの仕組み
投資を検討している不動産の立地や物件情報(築年数など)と、想定するローンの借り入れ条件を入力すれば、AI が毎年の家賃収入を推計してくれますので、不動産の収支だけでローンを返済できるのかどうかを把握することができます。とてもシンプルな設計です。
シミュレーションできるのは、「検討中の不動産」か「広告物件」です。
「検討中の不動産」をシミュレーションする場合
この場合の流れは、「1. 検討している不動産を登録 → 2. 借入条件を入力 → 3. シミュレーション」となります。
「広告物件」をシミュレーションする場合
この場合の流れは、「1. 広告物件を探す → 2. 借入条件を入力 → 3. シミュレーション」となります。
シミュレーションの注意事項
このサービスは、借入金を含むキャッシュフローに関する金融リスクを投資家自ら検討するために開発されたものであり、不動産の運営収支予測を目的としているわけではなく、シミュレーション結果が保証されるわけでもありません。
このサービスに登録できるのは、オリックス銀行の「不動産投資ローン」を利用できる年齢(20歳以上)や年収(500万円以上)に限られます。
キャッシュフローシミュレーションを利用できる不動産の所在地は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪市、名古屋市、福岡市、京都市のそれぞれ一部の地域に限られます。
また、このシミュレーションは、オリックス銀行の審査内容や方法等と一切関連しておらず、融資の申し込みに際しては、同行所定の審査が別途必要となります。
「キャッシュフローシミュレータ」の利用方法
サービス登録
まずは、サービスへの登録です。
上の登録画面で、氏名や職業、年収、金融資産などを入力すると、登録したメールアドレスに確認メールが届きますので、あとはメールの内容に従って本登録するだけです。
サービスにログインすると、このような画面が現れます。
この画面は、上に書いた「広告物件をシミュレーションする場合」の画面です。エリアや価格帯、物件種別、築年数などで絞り込むことができます。
「検討中の不動産」をシミュレーションする場合は、画面上部の「物件管理」をクリックして、検討している不動産を登録していくことになります。
広告物件のシミュレーション
ここでは、広告物件でシミュレーションしてみることにします。
適当な広告物件をクリックすると、このような画面が現れます。
「初期投資」「借入条件」「運営収入」「運営経費」「売却時想定」という5項目の数値を入力していくことになりますが、「初期投資」「運営収入」「運営経費」については、当該物件の条件としてすでに入力されていますし、「売却時想定」は任意入力ですので、結局「借入条件」の3つの数値を入力するだけです。
この「借入条件」についても、「借入条件の目安はこちら」という記述をクリックすれば、シミュレーションによって目安を得られますので、深く考える必要はありません。シミュレーションで機械的に目安をはじき出すだけで OK です。
シミュレーション結果
LTP(融資金額 ÷ 売買価格)が 50%程度になる借入条件でシミュレーションしてみた結果、運営純収益(NOI)、年間ローン返済額、借入金償還余裕率(DSCR)のグラフとともに、「投資期間中の収支はプラスが見込めます」との予測が出ました!
その他、投資期間のキャッシュフロー表や、当該物件の賃料の将来予測なんかも出力してくれます。今回試してみた物件では、50年後の査定賃料が、現時点から2万円ほど下がる予測となっています。
この将来予測が本サービスのキモであり、人工知能(AI)が 5800万件の物件情報から学習した結果です。これらのデータに基づいて、キャッシュフローのシミュレーションが実行されているわけですね。
まとめ
とてもシンプルな設計で、初心者でも利用しやすいインターフェースとなっています。
ただし、上にも書いたように、このシミュレーションは、不動産の運営収支予測を目的としたものではなく、結果が保証されるわけでもありません。
賃料の将来予測も、50年後の予測が思ったよりも高めに出ており、少子化や人口減少の影響、新興国の台頭によるマネーの動きなどは特に加味されていないように思われます。
人工知能(AI)は、過去のパターンを学習して統計的に予測をはじき出すだけですので、それ単独で将来予想されるさまざまな事象を織り込むことはできません。ですので、シミュレーション結果はあくまでも「参考」扱いです。
日本社会は今後、自国も他国も経験したことのない少子高齢化社会に突入して、今までの常識が通用しなくなりますので、そのような社会の未来を AI で予測するのはとても難しいことだと思います。
ただ、「参考」とはいえ、UI は非常に充実しており、キャッシュフローを簡単に見られますので、不動産投資のリスク回避の一助になることは間違いありません。