世界を震撼させたトランプ大統領の登場から、もうすぐ2年になる。
人びとがその登場よりもさらに不思議に思うのは、普通なら政権が吹き飛ぶほどの失策や暴言の数々にもかかわらず、彼の支持率がその後も高止まりして下がらない、という事実である。
支持率の内訳を見ると、トランプ支持者の圧倒的多数は共和党で、不支持者の圧倒的多数は民主党である。アメリカ社会は、それだけ支持政党による色分けが固定化し、分断が深刻化した、と言うことができる。
だが、それは必ずしも政党政治が従来通り機能していることを意味しない。トランプ氏と伝統的な共和党重鎮たちとの確執は、選挙前からよく話題になった。
いわゆるワシントンのエスタブリッシュメントに対する彼の反発は、国民もよく知っており、その向こう見ずな姿勢がまた人びとを引きつける魅力となっていた。
トランプ氏は、反知性主義の典型的な体現者である。
反知性主義は、こうした既存の権力への反発を主要成分としている。そのため、トランプ氏の就任前には、彼が実際に権力の頂点とも言うべき大統領職に就任してしまえば、その反発をもってゆく先がなくなり、少しは大人しくなるだろう、と予測する人もあった。
だが、その予測は当たらなかった。なぜなら、トランプ氏が反発すべき権力は、国の内外にまだまだ残っているからである。
その一つは、国際勢力である。トランプ氏は地球温暖化や自由貿易など、いくつもの多国間協定に背を向けて、各国世論を驚かせている。
これまで世界秩序の担い手であったはずのアメリカが、なぜそのような行動に出るのか。トランプ氏の考えでは、それらが自国の主権よりも上にあるからである。
こうした国際的な条約や協定を結ぶと、アメリカは大国として膨大な負担金を払わされる上に、自国の振る舞いに枷をはめられることになる。
国際協調は、他国や世界全体に益することがあるとしても、アメリカには何もよいことをもたらさない。「アメリカ・ファースト」のトランプ氏がこうした協定を好まないのは当然である。
もう一つ残っていたのは共和党内の権力組織だが、こちらはここに来て大きな潮目の変化を迎えつつある。
トランプ氏と大統領候補指名を争ったポール・ライアン氏は今期限りでの引退を表明し、トランプ氏に批判的であったジョン・マケイン上院議員は先日逝去した。
共和党内の批判勢力は次々と姿を消し、他のリーダーたちも次を見据えてじっと息を潜めている。今秋の中間選挙の候補者を見ると、共和党の指名を獲得したのはトランプ氏が推す人びとばかりである。
つまり、かつて「異端」だったトランプ氏が、今や反対勢力を一掃して共和党の大部分を制覇した、ということである。これまでの共和党は、新しく「トランプ党」へと大きく様変わりした。
では、彼こそ今日の「正統」と言うべき存在なのだろうか。アメリカの「正統」は、今後は彼のような考え方が代表することになるのだろうか。