大規模停電を6年前に予言!?「北電の供給能力は足りてない」ツイートの真意を聞いた
- 6年前に北海道の大規模停電を予言していたツイートが話題
- ツイートをした北海道大学大学院の永田晴紀教授に聞いた
- 工学の常識では、現時点で供給能力は「足りてない」
大規模停電の原因は需給バランスの崩れ
北海道の胆振地方を震源とする最大震度7の地震で、一時、北海道全域で停電となった。
大手電力会社の管内、ほぼ全域で停電となるのは初めてのことで、この影響で、コンビニは営業を休止。
サッポロビールやカルビーなど、各企業の工場も一時、生産活動の停止を余儀なくされた。
このような大規模な停電が起きた原因とされるのが、電力の需給バランスの崩れ。
最大震度7の地震の発生に伴い、震源地に近い北海道最大の火力発電所、苫東厚真発電所が緊急停止。
道内の電力の約半分を賄っていたこの発電所が停止したことで、電力の需給バランスが大きく崩れ、需要に対して、供給が少なくなり、電力の周波数が低下。
一定の低下であれば、他の発電所が、全体の周波数を維持するために出力を増加するのだが、今回は、主力となる発電所が停止したことから、周波数の低下を抑えることができず、北海道内の全ての火力発電所が自動で停止。
これが、「ブラックアウト」と呼ばれる大規模停電につながったのだという。
6年前に大規模停電を予言していたツイートが話題
こうした中、6年前に、今回の大規模停電を予言していたと思われるツイートが話題になっている。
2012年7月6日に、このツイートをしたのは、北海道大学大学院の永田晴紀教授。
電力インフラのあるべき姿を常識的に考えれば、現時点ですでに北海道電力の電力供給能力は「足りてない」と指摘。
苫東厚真発電所4号機に不具合が起これば、すぐにどこかを停電させる必要が生じる、「1回のトラブルにも対応できない状況」としている。
実際に今回の地震でその通りの状況が起きてしまった。
6年前に、こういったツイートをしたのにはどのような真意があるのか。
北海道大学大学院の永田晴紀教授に聞いた。
工学の常識では供給能力は「足りてない」
――6年前のツイートはツイッター上で「停電を予言していた」などのコメントと共に拡散している。この反響についてはどう受け止めている?
非常時には関連する話題が一気に広がるのはよくあることですので、その一つかな、と思います。
僕のツイートがあのレベルで拡散されるのは珍しいことではありますが、無かったことでもありません。
――北海道電力の電力供給のおける問題点をあらためて教えて下さい?
発電能力が足りないことです。
泊原子力発電所が止まってからずっと足りませんでした。ピーク時において、最大能力の設備の発電能力を超える余剰能力を確保するのが最低限の目標です。
現在(北海道震災前、東日本震災後)稼働中の中では厚真の4号機70万キロワットが最大ですので、ピーク時に70 万キロワット以上の余剰能力を確保せよ、という意味です。
それができていない状況は1回のトラブルにも対応できないということですので、工学の常識では「足りてない」と言います。
――6年前に問題点をツイッター上で指摘した後、問題を改善するために何かしらの働きかけをした?
していません。
同僚の奈良林先生(北海道大学・奈良林直教授)が充分に働きかけを行っていたと思います。改善しませんでしたが。
電力を安定供給するためには…
――北海道電力が電力を安定供給するためにはどうすればいい?
泊原子力発電所を再稼働すればいいと思います。北海道電力の判断ではどうにもなりませんが。
北海道電力は泊原子力発電所が停止から、とても迅速に新規の火力発電所の建設に着手しましたが、土地の選定とアセスメント(ある事象を客観的に評価すること)だけで何年もかかりますので、すぐにはどうにもならないのです。
数万年前の地震の跡がどうのこうのと議論するよりも、毎年の冬の心配をすべきだと思います。
そもそも、未だかつて地震で壊れた原子炉は存在しません。水没などによる非常用電源喪失が一番怖いのですが、それは簡単に対策できるし、すでに対策済みです。
地震で原子炉が壊れたという誤解が未だに多く、辟易しています。
その責任の一端はマスコミの報じ方にもあると思います。福島第一原発で壊れたのは原子炉ではなく非常用電源系で、壊れた原因は地震ではなく津波による水没でした。
北海道電力は泊原子力発電所の稼働停止から3年後の2015年、小樽市でガス火力発電所の新設工事に着手。北海道と本州の間で電力をやりとりできる「北本連系線」の容量を1.5倍にする工事を進めてきたが、いずれも完成は今年度中で、対策は間に合わず、今回の大規模停電につながった。
今回のような「ブラックアウト」は本当に“想定外”だったのか。
今後、北海道電力がどう検証し、どのような対策を打ち出すのか注目していきたい。