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【大相撲】

稀勢、右足一本で踏ん張った ヒヤヒヤ連勝

2018年9月11日 紙面から

稀勢の里(奥)が突き落としで貴景勝を下す=両国国技館で(中村太一撮影)

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◇秋場所<2日目>

(10日・両国国技館)

 8場所連続休場から復帰して進退を懸ける横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=は小結貴景勝を逆転の突き落としで仕留め、優勝した昨年3月の春場所以来となる初日からの2連勝とした。史上初の横綱通算900回目の出場となった白鵬(33)=宮城野=は勢を上手出し投げで退け、大関とりの関脇御嶽海(25)=出羽海=は千代大龍を押し出し、白星を2つ並べた。

 攻め込まれて体勢を崩されても、稀勢の里が粘りを取り戻して踏ん張った。ピンチをしのいで貴景勝を突き落とし、昨年の九州場所6日目以来、297日ぶりの連勝を飾り、悲鳴を大歓声に変えてみせた。

 立ち合いで右から踏み込んだが、相手の低い突き起こしにズルズル後退。腰高になったところで、いなしが待っていた。前のめりで突っ込み、右足がとらえたのは徳俵。絶体絶命だったが、土壇場で右足一本、しかも半身で踏ん張って残し、形勢逆転の突き落としに持ち込んだのだ。「集中して」と3度、繰り返して振り返った一番で光ったのは、8場所連続休場で不安視されてきた下半身の粘りだった。

 直接対決で2連敗中だった貴景勝は、復調気配を示すのにこれ以上ない相手だった。昨年の九州場所では、突き出しに屈して金星を配給。今年初場所では土俵際まで追い込みながら、とったりで逆転を許していた。

 共通して目についたのは、横綱らしからぬ腰の軽さだった。夏巡業を皆勤し、場所前も精力的に出稽古。「しっかり準備はできている」と強調してきた言葉を、土俵上で体現してみせた。

 そんな逆転劇に、八角理事長(元横綱北勝海)の第一声は「よう残ったな。いい相撲だったよね」と実感たっぷり。場所前、2度の横綱の出稽古を見守った阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「組み止めれれば一番いいけど、辛抱して勝つのも横綱相撲」と安堵(あんど)感をにじませた。

 ちなみに連勝発進は昨年春場所、劇的な新横綱V以来。吉兆の予感は漂うが、1年半で立場はガラリと変わった。進退問題との対峙(たいじ)は、始まったばかり。だからこそ、初日と同じような言葉で取材を締めくくった。

 「また明日、しっかり集中してやります」。まだ笑顔はない。まずは、復活ロードを照らす白星を連ねていく。 (志村拓)

 

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