のぶみが新たに手がけた絵本『はたらきママとほいくえんちゃん』(WAVE出版)が発売前から“炎上”中だ。今年2月に作詞した楽曲「あたしおかあさんだから」について、「母親に自己犠牲を強いている」として大炎上したのぶみだが、5月に1冊、7月に1冊、8月に2冊の絵本を出版しており、相変わらずのハイペースで絵本を量産している。3月には著書『かみさま試験の法則』(青春出版社)も出版、また「女性セブン」(小学館)では「ごりらかあさん」を連載中だ。
新作絵本『はたらきママとほいくえんちゃん』は、のぶみが公式Instagramで8月中旬頃から発売告知とともに絵本の内容を一部掲載。Twitterで拡散され、「全然リアルじゃない」「またパパ不在だよ」等、早くも批判が相次いでいる。「のぶみには、いい加減、育児界隈に関わってほしくない」といった辛辣な声まであるが、どのような部分が炎上要素なのか見てみると、これまでと何ら変わりない通常運転ののぶみだった。
『はたらきママとほいくえんちゃん』には、ファミリーレストランで働く“はたらきママ”と、保育園に通う娘の“ほいくえんちゃん”が登場する。ある日、仕事中の母親の元に、保育園から娘の発熱(38度)とお迎えを要請する連絡が入る。「こどもとしごとどっちとる? そりゃこどもにきまってんでしょ」「でもいまおきゃくさんいっぱいだからぬけられないし……」と母親は葛藤。お店が混んでいたため、連絡を受けてから2時間半後にようやく同僚に謝って早退、大急ぎで保育園に向かって娘に「ママわるかった。ホンッットごめん。おむかえおそくなっちゃったもんね、ママ。どうしよう、さいていだよね。もうおしごとなんかやめてほいくえんちゃんとずっとずーっといっしょにいようかな」と泣きながら謝る。
娘の“ほいくえんちゃん”は「ママ、おしごとやめちゃダメよ」「ママおしごとしてるとキラキラしてようせいさんみたいにみえる」と母親を励ます。また、娘は働く母親をかっこいいと思い、保育園でレストランのおままごとをやっているという。これをもって、母親は堂々と仕事も育児も頑張ろうと決意を新たにするのであった。
母親に子が赦しを与える定番パターン
一見、働く母親を励ます良い話……のように見えるかもしれないが、やっぱり「のぶみ」である。子ども向けの絵本を装いながら母親を励ます、というのがお決まりのパターンであることがひとつ。そして、働く母親のリアルな声(葛藤や罪悪感など)を反映している“つもり”になっていることがもうひとつ。さらに、母親の罪悪感に子どもが赦しを与えることも含めて、いつもの「のぶみ節」が存分に発揮された一作といえるだろう。
しかしこれをもって、「働く母親のリアルな声を代弁している」とされると、なんだかなあ……だ。子どもを保育園に預けて仕事をしている親の立場から言わせてもらうと、子どもの発熱によって保育園からお迎え要請連絡を受けたら、とりあえずすぐに勤務先の上司に報告するのが原則だ。連絡が取れた段階で保育園側は「すぐにこちらに向かってください」「どのくらいで着きますか?」と聞いてくるだろうし、雇用側もそこは承知で雇っているはずだろう。すぐに仕事を切り上げられない場合でも、園に連絡もせず放置するのはちょっと、ない。
のぶみの見据える“はたらくママ”像の偏り
のぶみは「あとがき」も公開しているが、「あたしおかあさんだから」の時と同様、当事者から<たくさん話をきいた>という。そこには<はたらくママは、昔に比べてずっとふえてるみたいだ><事務、ウェイトレス、レジうち、内職も多いみたい>とある。のぶみの“働く母親像”、事務職やパートオンリーである。それもひとつのリアルだが、偏りがすごい。
保育士も母親も子どももみんな頑張っており<お互い助けあって生きていくんだ>と締められる「あとがき」だが、相変わらずパパの存在が見えない。父親の影が非常に薄いのは、のぶみが手がける絵本の多くに見受けられる特徴のひとつだ。のぶみはパパの育児参加は“非リアル”だから描かないつもりなのだろうか。
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