最近はAI(人工知能)絡みのニュースが多いですね。今朝の読売にも「職人技 AIで継承 総務省計画」っていう記事が一面にありました。
ですから、昨年来、ネットの世界の課題になっているフェイクニュースへの対応問題でもAIの活用がしばしば話題になっているわけですが、この問題に「人力」、マンパワーで挑戦する試みが先月下旬にデビューしたので、実際に使ってみました。
名称はNewsGuard。ウェブブラウザーの拡張機能として追加すると、下の写真の左端にあるワッペンみたいなアイコンがアドレスバーの右側に表示されます。(Google Chromeならここから1クリックで)
一言で言うと、英語のニュースサイト、情報サイトを、まともなサイトか、そうでないかを格付けするサービスです。それも、何段階かでではなく、グリーン(まとも)とレッド(怪しい)の色分けだけです。
例えばニューヨークタイムズのサイトを開いてプラグインした「nutrition label」と称するアイコンをクリックするとこういうポップアップ画面が開きます。
上部のグリーンラベルに続く緑字の記述は、真っ当なニュースサイトだということを保証するもので、共通ですが、その下にある説明はAIでなく、ジャーナリスト経験者がレビューした内容を書いています。そして最下段にある<See the full Nutrition Label>をクリックすると、何十倍も詳しい評価内容が読めます。
その詳しい内容の画面は長大なので省略しますが、その新しい画面の右側に表示されるのがこれ。
サイトを評価するにあたっての9項目の評価基準に適合しているかどうかをチェックしているのです。
9項目にはウェイト付けがあって、一番上の「繰り返し偽情報を発信していない」は22点で、最下段の「コンテンツ製作者についての情報提供」は5点という具合で、トータル100点満点になっており、60点以下はレッドラベルになります。その詳細はこちら。
その「レッド」判定を受けた一例はこれ。トランプ大統領の主席戦略官を務めたあのスティーブン・バノン氏が率いる極右サイト、ブライトバートの評価です。偽情報を定期的には出してはいないが、責任感を持っていないとか、ニュースとオピニオンを分けていないなど4項目をクリアできませんでした。点数を計算してみたら57点になりました。ギリギリでアウト。
また、親トランプ報道で知られるFoxテレビのサイトは「エラーを常に修正し、明確にする」など3項目で減点されましたが75点を獲得、グリーン評価でした。
さて、その作業はどう行われるのか。まず、ジャーナリズム経験のあるアナリストがサイトの内容を隅から隅まで見て、コンテンツの内容や処理方法を調べ、必要があればサイトの担当者にコンタクトしたりして、上記の9項目を採点します。
その結果は少なくとも2人の上級編集者によってレビューされ、それが「レッド」判定だった場合は全ての上級編集者と共同CEOとによって再度、レビューされるとのことです。確かに「レッド」と決めつけられれば、そのサイトにとって死活問題でしょうから、慎重な手続きが取られるようです。
こういう面倒な作業を行なっているのはどういう人たちか。「透明性」をサイトに求める立場から、スタッフ全員の詳細な経歴をサイトに掲載しています。
それによると幹部クラス11人、専属スタッフ13人、外部協力アナリスト29人、さらにエンジニアなどが3人と50人を超える体制です。幹部クラスにはNYタイムズ、ウォール・ストリートジャーナル、AP、ロイターなどの出身者が顔を揃えています。
しかし、この大物を抱えた大所帯を支えるビジネスモデルはどうなっているのでしょう。他人事ながら気になります。
今年3月に、共同創業者のGordon Crovitz氏がWall Street Jounalに寄せた一文「A New Business Takes On Fake News」では、「デジタルプラットフォームに課金する。そこが(fake news拡散)問題を生む最初の場所だから」というだけでよくわかりません。この事業計画をスクープとして報じた昨年11月のAXIOSの記事では「プラットフォームとアグリゲーターにライセンスフィーを課金する」とあっただけでした。
確かに、グーグルでニュースを探すと、ずらりとグリーンラベルや稀にレッドラベルがついて表示されます。(これはNewsGuardをブラウザーにプラグインした場合に限られます)おそらくは、グーグルに課金しているのでしょう。
というわけで、どうこの事業を続けていくかは不明ですが、先のCrovitz氏と、もう一人の共同創業者Steven Brill氏は、2009年に、中小の新聞や雑誌が課金システムを導入する助けになるJournalism Onlineを二人で始め、2年後に4500万ドルで売却したという強力コンビ。おそらく、目算は立っているのでしょう。
オンラインで消費されるニュースの98%を占める7500に及ぶ米国のニュース・情報サイトのラベル貼り作業はまだ途中ですが、その後にはスペイン語サイトを予定しているとか。そのうち、日本語ニュースサイトもお願いしたいものです。
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