数日前から私のTLで大手スポーツブランドであるNikeの新しい広告についての物議が延々と流れてきています。正直なところなんのとこだか一切ピンと来ていなかった私ですが、少し調べてみると「え!?アレの延長戦まだやってたの!?」と驚きまして、今回はそれについて軽くまとめたいと思います。
▼問題の広告
早速ですが、人々を凶暴化させた問題の広告がこちら。
Nikeの有名コピーである『Just do it』の広告シリーズの最新版で、『Believe in something. Even if it means sacrificing everything. (信じろ。全てを犠牲にしてでも)』とあります。
背景になっているこの人物の名前はColin Kaepernick。元NFL(アメフト)選手です。なんとも普通に見える広告ですが、いったいどうして人々はこれに対して憤怒したのでしょうか?
▼時系列
時系列を見てみると、ことの顛末がわかりやすいです。
上の記事を参考に、簡単に時系列をまとめてみます。
2016年8月26日
49nersでクォーターバックをしていたKaepernickはこの日、試合前の国歌斉唱の際、他の選手が起立している中ベンチに座ったままだった。Kaepernickは、この国でまかり通っている不正や抑圧への抗議だと語った。
2016年9月1日
抗議行動を続けていたKaepernickは元米陸軍兵Nate Boyerと話をしたことから、国のために戦う兵士たちへの尊敬の念を示すために、ベンチに座るのではなく跪くことにした。これに49ersのチームメイトであったEric Reidも加わった。そして、Kaepernickは社会における不正に立ち向かう団体に日本円にしておよそ1億3000万円を寄付した。
2016年9月11日
他の選手たちも、国歌斉唱中に跪いたり、拳を突き上げるなどしてKaepernickに続いた。
2016年9月22日
KaepernickはTime誌の表紙を飾り、愛国心と彼の抗議について語った。同時にKaepernickはNFLの中で最も嫌いな選手に選ばれたが、彼のユニフォームの売上はトップとなった。
2017年1月1日
Kaepernickはこの日、Seattleに敗北したゲームで引退。
2017年3月3日
どのNFLチームもKaepernickと契約することはなかった。
2017年8月17日
Oakland RaidersのMarshawn Lynchを含む他の選手たちは未だに抗議行動を続けていた。
2017年9月22日
トランプ大統領はNFLチームのオーナーたちを呼び出し、抗議行動をしている選手たちをクビにしろ、と発言。「このオーナーたちが母国に背く選手たちをフィールドから引きずり出すのをみんなも見たいだろう」と語った。
2017年9月25日
トランプ大統領の発言に、NBA(バスケットボール)のトップチーム、Golden State Warriorsが反応を示した。国歌斉唱中、オーナーや選手たちは跪いたりお互いに腕を組んだりして団結している様を見せつけた。
2017年10月8日
Indianapolis Coltsの試合で国歌斉唱中に跪く選手たちを見た副大統領Mike Penceは観戦することなく退席。オーナーの中には抗議行動を続ければ試合に出さないと選手たちを脅す者もいた。
2017年10月15日
KaepernickはNFLに対し、共謀してKaepernickとの契約をせずに追放したとして正式に苦情を申し立てた。
2017年11月13日
KapernickはGQ Magazineより『Citizen of the Year(年間で最も素晴らしい国民を選ぶ賞)』に選ばれた。その後、Time誌の『Person of the Year(年間で最も素晴らしい人物を選ぶ賞)』にも名前が載った。
2017年12月3日
ACLU(アメリカ自由人権協会)はKaepernickに『Courageous Advocate Award(声を上げた勇気ある人物を選ぶ賞)』を授与した。Kaepernickは授与式で「たとえリスクを伴おうが見返りがなかろうが、人権は踏みにじられてはならないという理解のもと、抑圧され苦しむ同士の為に立ち上がる義務が私達にはある」とスピーチした。
2018年4月21日
Amnesty International(国際連合との協議資格を持つ人権擁護団体)はKaepernickに『Ambassador of Concsience Award(良心のもと活動し人々に良い影響を与える人物を選ぶ賞)』を授与した。
2018年8月30日
仲裁委員会はKaepernickの苦情を無効とするNFLからの依頼を却下。KaepernickのNFLに対する訴訟が始まった。
2018年9月3日
NikeがKaepernickを迎えた新しいJust Do It広告を発表
▼どうして燃やし始めたのか?
火種はこのツイートのようです。
『はじめに、NFLが私の好きなスポーツか母国かを選べと言ってきた。私は母国を選んだ。そしたらNikeが私の好きな靴か母国かを選べと言ってきた。私は母国を選んだ。いったいいつから星条旗と国歌は何かの攻撃だとされるようになったんだろう?』
個人的には全くの謎なのですが、どうしてか国歌斉唱中に跪いたPaepernickを愛国者の敵、非国民扱いして怒り狂う人たちが出てき始めて、Nikeの靴を燃やし始めた様子。
▼アメリカ市民の反応
Nike製品を燃やしてしまった人々の方に注目が集まっていますが、実際はこういった行動を批判する人々の方が多数派です。そんなまっとうなアメリカ人の反応がこちら。
『今まで自分が履いてる靴のことなんか気にしたこともなかったような人たちが突然Nikeの靴を履くことに難色を示してるですって?あなたが靴を燃やしてるとしましょう。ってことは持っているユニフォームも燃やすんでしょう?だって、誰がNFLのユニフォームを作ってると思います?Nikeですよ』
『Chick-fil-A(ファーストフード店)がアンチゲイだった時:チキンサンドは燃やさない
Papa John's(ファーストフード店)の創始者がNワード(黒人を侮辱する言葉)を言った時:ピザは燃やさない
H&Mが黒人の少年モデルに猿のシャツを着せた時:そのシャツは燃やさない
Nikeが黒人差別と戦う人を採用した時:マッチを取り出す』
『あのさ・・・もし本当にNikeが嫌いなら、馬鹿みたいに燃やしたり切り刻んだりするなよ・・・頼むからホームレスシェルターに寄付してよ・・・ホームレスはお前の政治的思想とか気にしちゃいないし裸足で歩き回りたくないだけなんだから!』
『NikeとKaepernickの広告にお怒りで自身のNike製品を燃やして捨てたい皆さん、ひとつだけ聞かせて。なんでその衣類をホームレスの退役軍人というあなたたちが大切にすべきであろう人たちに寄付しようって発想できないわけ? #JustDoit (今やれ)』
▼Nikeの反応
たったの5日間でここまで大きな話題となってしまった、ご本家Nike。余裕のレスポンスです。
『Nikeから、製品を安全に燃やす方法。
- 火は外で起こすこと
- 火からおおよそ150センチは離れること
- 自分が着ている衣類を火に近づけないこと
- 燃やし終わったら必ず水をかけて鎮火すること
JUST DO IT SAFELY(今やれ、安全にね)』
ということで、Nikeの一人勝ちというところでしょうか。
▼結局どういうこと?
(※ここからは個人的な考察です)
日本からだとあまり見えづらいかと思いますが、私に見えたものを簡単に書いていきたいと思います。
- 黒人差別
Kaepernickがこの抗議行動に出たのは、黒人の少年が白人の警官に正当な理由もなく射殺されるなど、明らかに黒人だから不当な扱いを受けた事案が相次いだため。なので、私はこの抗議行動を支持します。
- 国歌斉唱中に跪くという行為
Nike製品を燃やせ!と躍起になっている人々(気まずいことに彼らのほとんどが白人)は、この『国歌斉唱中に跪く』という行為が非愛国的で侮辱的だと主張しています。こういうことを言う人たちはほとんどの場合、命がけで戦っている軍人たちに失礼だ!という怒り方をします。
ですが、時系列でも書いたとおり、跪くというアクションはKaepernickが退役軍人のアドバイスを受けて、国や軍人へのリスペクトを示す為に選んだもの。これを非愛国的だ、軍人への侮辱だと主張することこそどうなの?という感じがします。
そもそも、どうして跪くことが侮辱になるのかということを『Nike燃やせ派』の人たちが一向に説明しないあたり、『黒人への差別なんてしてない、私達は差別主義者なんかじゃない』ということを意固地になって主張しようとしたが為にKaepernickを利用しているようにしか受け止められず、言葉を選ばずに言うと「少し頭が悪い人たちかな?」という感想です。
- トランプとの関係
対立の構図を簡単に書くとすれば、『NFL と トランプ と 白人至上主義者 VS KaepernickとNikeとその他全ての人種と軍人を尊重する人たち』という感じで、どう考えても前者の方が悪者の構図に・・・。実際、こうやってSocial mediaで大問題になっているのは、「燃やしてるおまえらアホだろ」という批判が強いからです。
- 結局どうしたらいいの?
あなたが人種差別主義者じゃないのならNikeは着用してください
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