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最新調査で判明、インターネットはこうして社会を「分断」する

炎上商法の果て、穏健派は消えていく
インターネットを利用するほど排外意識が高まる--。昨年11月、大阪大学の辻大介准教授が、ある調査を実施した。インターネットの利用状況と「排外意識」の関係を調べた研究である。結果は、ネットを利用するほど排外意識が高まる傾向があること、それと同時に反排外意識も高まる傾向があるという「因果関係」を示すものだった。シンプルに言えば、ネットによって排外主義的な人、反排外主義的な人がともに増え、社会の「両極化」「分極化」が進むということだ。いったいどのようにして分極化は進むのか。その実態を、調査を行った辻氏が解説する。

「世論喚起の炎上商法」の危うさ

杉田水脈衆院議員の「LGBTは生産性がない」発言が見事に炎上したことは、みなさんの記憶に新しいところだろう。記憶に新しいどころか、今なお鎮火することなく、くすぶり続けていると言ったほうがいいかもしれない。

個人的にはおよそ首肯しかねる発言だが、その内容の是非を論じることが本稿の目的ではない。また、あまり積極的に取りあげたいわけでもない。おそらく、この炎上は世の中の関心を惹くために、より正確には、ネットでの注目を集めるために半ば意図されたものであって、そんな思惑にのせられてしまうのもバカバカしい気がするからだ。

 

ただ、杉田発言は、ネットを介して自らの主張を広く知らしめ、「世論を喚起」するやり口の、わかりやすい典型例を提供してくれてもいる。世論喚起の炎上商法とでも言えばいいだろうか。ネットではさほどめずらしくもない常套手段である。

元テレビアナウンサーの長谷川豊氏が、2016年に「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と題したブログエントリを投稿して、炎上したケースもそうだ。

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後に彼は、自分の意見を多くの人に知ってほしいために過激な表現をとってしまった、ネットではきつい言葉を使ったりバトルしたりするほどPVが伸びるので、と釈明している。明らかに確信犯だったわけだ。

こうした世論喚起の炎上商法は、互いに反対の意見を持つ人びとの対立感情を煽り、世論の分断を深めていくのではないか、と私は考えている。極端な言説が、インターネットという環境を通して人びとに敵/味方という認識枠組を植えつけ、社会を両極化させるということである。本稿ではこのことを、昨年実施したウェブ調査の分析結果の紹介もまじえながら、論じてみたい。

これも気乗りはしないのだが、「在特会」の排外主義運動にふれることから話を始めよう。

発足した2007年からしばらくの間、在特会の活動は、一部を除いて、とりたてて注目されていたわけではない。しかし、ネット右翼を母体とするだけあって、彼らのリーダー層は、ネットでどのようにすれば運動参加者を動員できるか、広く注目を集められるかを、よく心得ていた。